指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

林真理子は、日本映画を見ていない

2008年12月30日 | 映画
林真理子の『RURIKO』は、よく調べてある良い本だが、彼女は古い日本映画をあまり見ていないと思う。
それは、小林旭の再婚(実は美空ひばりとは入籍していなかったので、初めての結婚なのだが)に触れたくだりで、相手の女優、青山京子について、「デビュー前の若い女優に一目ぼれして求婚した」と書いてある。
だが、言うまでもなく、青山京子は、小林旭より早く1953年に映画『思春期』のオーディションで映画界入りしてており、三島由紀夫の『潮騒』で主演した東宝の青春スターだった。
ただ、1960年代に入っては、青春スターには相応しくなくなっていいて、「鳴かず飛ばず」の状態だった。

また、浅丘ルリ子と恋人だった蔵原惟繕との共同作品の最高作を『執炎』としているが、私の見るところ三島由紀夫原作の『愛の渇き』が最高だと思う。
三島由紀夫も、生前彼の原作で評価できる映画は、市川崑の『炎上』と蔵原の『愛の渇き』だと認めていたそうである。

「女、使わなかった?」

2008年12月30日 | 映画
BSフジで、澤井信一郎監督、薬師丸ひろ子主演の『Wの悲劇』を見る。
3回目だが、やはり面白い。
筋は分かったいるが、その画面の展開が上手くて、どうなるか分からない。
妙な例えだが、鈴木清順の名作『野獣の青春』のようなミステリアスでサスペンスな展開なのだ。

そして、この映画で最大の見ものは、薬師丸ひろ子が劇団の総会で、その身の不始末を責められたのとき、三田佳子が、薬師丸を擁護して(本当は自分のことを守ったのだが)言う台詞である。

「あなた、女、使わなかった? 私は使ったわ。そうやって芝居をやってきたんじゃないの。静香ちゃんを責めるなら、ここにいる人は全員退団だわ!」

この映画は、重要な場面のみを表現していて、その後を経緯を省略している。
それが、筋に前進力を与え、「あれっ、どうなったの」というミステリアスな展開にしている。
1984年、まだバブル以前の時代か。