指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

30年後には

2008年12月03日 | 映画
夜、BSの『タワーリング・インフェルノ』を見ていてたら、面白くて結局最後まで見る。
この作品は、1975年8月に横浜伊勢佐木町にあったピカデリーで見ている。
この頃は、日活ロマン・ポルノの全盛期で、それらも熱心に見ていたが、こうしたデザスター・、ムービーも見ていたのだ。
『大空港』と『ポセイドン・アドベンチャー』の大ヒットで始まったアメリカのパニック映画ブームは、日本にまで波及し東宝でも、『日本沈没』から果てには『東京湾炎上』などのチャチなものもまであった。

ワーナー映画『タワーリング・インフェルノ』は、さすがにポール・ニューマン、スティーヴ・マックイーンの二大スターの共演で、その他ウィリアム・ホールデン、ロバート・ワグナー、ロバート・ボーン、フェイ・ダナウェイ、O・J・シンプソン、さらにフレッド・アステアなど大スターが続々と出てくる。
このような顔見世映画は、所謂「グランド・ホテル」形式で、様々な人が出てきて絡むもので構成は甘いが、主役は火災なので、それも仕方ないだろう。

この映画での火災の原因は、施工責任者のオーナーの娘の婿リチャード・チェンバレンの手抜き工事である。
電気配線を手抜きしてリベートをキックバックしていたことが諸悪の基になり、地獄のグラス・タワーになる。
こんなことは映画だけのことで、絵空事と思っていた。
だが、バベルの塔の悲劇は、30年後にニューヨーク世界貿易センタービルの「9・11」として実現してしまう。
勿論、原因は、テロだが、ハイ・ライズの崩壊をテレビ映像で見ることになる。

最後、マックイーンは言う。
「いずれ1万人が死ぬだろう」
これは、半ば当たったわけだ。
映画の予見性は恐ろしい。