猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

黒川祐次の『物語 ウクライナの歴史』

2022-07-26 23:38:29 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

図書館に予約していた黒川祐次の『物語 ウクライナの歴史』を、約4カ月かかって、おととい手にした。今、後半から本書を読んでいるが、入念に資料を読み込んで書かれているので驚く。歴史家より外務省官僚のほうが、もしかしたら、調査能力が高いのかもしれない。

出版されたのが、2002年なので、ソビエト連邦から1991年のウクライナ独立数年後までしか扱われていないのが残念だ。2014年のクリミア半島のロシア併合、ドンバス地域のロシア傀儡政権擁立は含まれていない。彼は、私より3歳上でしかないから、ロシア軍のウクライナ侵攻と合わせて、これから、改訂版を出すことを期待する。

黒川は学生時代『ウクライナの夕べ』という絵画をみてウクライナに強く印象づけられたという。

私のきっかけは、子どものとき読んだニコライ・ゴーゴリの『隊長ブーリバ』(カバヤ文庫)である。定年後、You Tubeで民族音楽を聴くようになったが、そのとき、たまたま、『タラス・ブーリバ』(ロシア映画)をみて、コサックの歴史に興味を覚え、ウクライナにヘトマンの時代があったことを知った。

ただ、東ヨーロッパからウクライナ、ベラルーシ、ロシア、バルカン半島は民族のモザイク、あるいは、るつぼであるので、民族主義より、人類普遍的な価値にたって、解決策を探る必要がある。

ロシアは100以上の言語が話される国である。その国が、ロシアの脅威だとしてウクライナに侵攻したことに、悲劇を感じる。ロシアの権力者は社会主義を放棄して、国を愛国主義でまとめようとしている。しかし、ロシアも民族のモザイク、るつぼであるから、ロシア大統領のプーチンの愛国主義は大国主義なのだ。強い国であることを誇りとし、そのために戦うことである。

プーチンはエカテリーナ二世を敬愛しているということをどこかで読んだ気がする。エカテリーナ二世はロシア人ではない。ドイツ人である。確か、ドイツ騎士団の国からツアー(ピョートル3世)の嫁に来た女である。伝記を読んでも醜女(しこめ)としか書かれていない。クーデターを起こし、夫を幽閉した女である。権勢を深め、愛人を多数もった大柄な女だ。プーチンがその女を敬愛するのは、オスマン帝国に勝利しクリミアを併合し、ポーランド・リトニアにも勝利し、ポーランドから領土を奪い取ったからだろう。

黒川の本書には、第2次世界大戦末期のヤルタ会談での秘密取引が書かれている。ヤルタはクリミア半島の1つの都市である。読んで私が驚いたのは、アメリカ大統領であったルーズヴェルトがソビエト連邦の最高指導者スターリンに、日本への参戦を迫ったということである。スターリンは日本との中立条約をたてに正当性がないとしぶったが、ロシアの南樺太と千島列島の併合をルーズヴェルトが認めることで、参戦を承知したという。

広島・長崎の原爆投下はルーズヴェルトの死後のことだが、彼が生きていてもなされたのではと思った。ルーズヴェルトの真珠湾奇襲攻撃への恨みは大きいのだろう。戦争は怨念を生む。

本来、土地の所有者とは、何の根拠もない。土地は人びとが行きかうだけで、神が誰かに所有権を与えたわけでない。昔と同じく、所有権は単に暴力の結果かもしれない。


ウクライナできょうも人が死ぬ、この過酷な戦いをどうしたら止められるのか

2022-07-25 23:40:01 | ロシアのウクライナ軍事侵攻

ロシア軍のウクライナ侵攻が2月24日に始まって、5カ月がたった。5日前(7月22日)の朝日新聞のインタビューに、米国元駐ロシア大使のマイケル・マクフォールが、ロシアのプーチン大統領は言葉で行動を変える人物ではなく、「交渉に持ち込みたいなら、軍事的な前進を止めることが重要」と言っていた。私もそう思う。暴力だけが人の行動を変えると考える人たちが現在も多い。そして、暴力でも変わらないとなるのと、皆殺しを始める。むごい。

昔の戦争と違って、いまの戦争は総力戦になる。市民も戦闘員も区別なく殺される。

マクフォールが言うように、「軍事的な前進を止める」しかないとすると、私はアメリカが参戦すべきだと思う。口先だけで「民主主義を守る」というアメリカの責任は重い。

同じ紙面で、ジョージタウン大学教授のチャールズ・カプチャンが「米国はウクライナへの兵器提供をしながらも、停戦や戦争終結、領土問題の解決に向けたプロセスについて話し合いを始めるべき時だ」と言っている。この「始める」の主語はアメリカ政府であると、私は思う。これまでウクライナ政府はアメリカ政府に代わって戦争をしているのだ。現状では、死ぬのはウクライナ人で、アメリカ人でない。公平でない。

この戦争の難しい点は、ウクライナ人というものが不確かな存在であることだ。1991年にできた国家である。ウクライナ民族主義を政府がいくら煽っても、アジア人やユダヤ人の血が混ざっている。おまけにロシア語を聞いてわかるし、話すこともできる。ネットでは、ウクライナの歌、ウクライナ民族衣装があふれているが、日常生活レベルでは、ロシアと区別がつかない。民族主義は幻想である。

したがって、戦いの大義は、「民主主義」「自由」しかない。しかし、「民主主義」「自由」のために死ぬことも苦しい。いまは、そのような段階にきている。ウクライナのために、すべてのウクライナ国民が殺される段階に来ている。

ウクライナ大統領のゼレンスキーは、ウクライナ議会に、保安局局長と検事総長の解任案を提出し、可決された。政府の要人がウクライナ国を裏切るという段階までに来ている。

けさ、テレビを見ていたら、日本に戦地のウクライナから逃げてきた家族が、ウクライナに戻ることになったというニュースを流していた。ウクライナ政府から、戻らないと公務員の職を解雇すると言われたからだ。

この戦争は公平ではない。戦いの現場はウクライナで、ロシアでない。ウクライナ国民は戦闘員も民間人も死ぬ。ロシア国民は戦闘員だけが死ぬ。

領土問題は解決の見込みがない。ドンバス地域はロシア出身の人が多数派である。そして、ドンバスは重工業地帯でその製品はロシアにしか売れない。また、クリミア半島はもともとロシア海軍の基地だ。ここでもロシア出身の人が多数派である。

面倒なことに、ウクライナ人がいないように、ロシア人というものもいない。民族というものは幻想というより政府が創った虚構である。個人の心が傷つくが、ウクライナ国民がロシア国民になるということが実際に起きるうる。どっちの政府につくかということだ。

アメリカが参戦しなければ、ウクライナの地で人が死に続ける。人が死ぬ、人が死ぬ、・・・。

同じ、きょう、テレビでは、反アサド派のシリア人がウクライナ政府の傭兵になっているというニュースを流していた。彼はこれまで家族への送金のために闘ってきたが、仲間も死んだことだし、これから、家族の避難先のトルコ政府の傭兵になるのだという。アサダ派のシリア人はロシアの傭兵になっているという。

戦争はただただ過酷でろくでもない。戦争を始めてはいけない。

日本も、敵国を決めて、敵基地攻撃能力を持とうなどというバカげたことはすべきでない。アメリカが中国と戦争したいなら、巻き込まれないよう、日本は知恵を尽くすべきである。


安倍晋三の「国葬」に反対する、安倍を刑務所にいれたかった

2022-07-23 23:34:25 | 安倍晋三批判

きのう、政府は安倍晋三の「国葬」を閣議決定した。政府にどうしてこんな権限があるのだろう。極悪の安倍を「国葬」だとは!死んだからと言って、悪人が善人になることはない。国葬に反対である。岸田文雄は閣議決定を撤回せよ。

昔、安倍晋三の『新しい国へ 美しい国へ完全版』(文春新書)を読んで驚いた。その第1章「私の原点」で、祖父の岸信介の悪口を言う「革新勢力」を倒すことを原点としている。そのために、安倍はなんでも利用してきた。安倍は生きている限り、まわりを汚しまくる。

安倍は、統一教会を利用してきた。統一教会も安倍を広告塔として利用してきた。安倍政権のもとで、世界基督教統一神霊協会(略称:統一教会)を世界平和統一家庭連合と名称変更した。そして、首相をやめたあと、2021年に世界平和統一家庭連合の大規模集会に礼賛のビデオメッセージを送っている。

統一教会は日本で異常に高額な献金を信者に要請した。信者がお金がなくなれば、借金させて献金させた。日本が朝鮮を侵略したから、その罪滅ぼしであると言って、献金を韓国の本部に送った。いっぽう、安倍は、戦後70年の談話で、日本は韓国に対して十分謝っているので、これ以上謝る必要がないと、つぎのようにのべた。

「日本では、戦後生まれの世代が、今や、人口の八割を超えています。あの戦争には何ら関わりのない、私たちの子や孫、そしてその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません。」

今、日本で統一教会が課した過酷な献金で苦しんでいるのは、戦後生まれの世代である。その名前を変えた統一教会に安倍がビデオメッセージを送って讃えているのである。

安倍は、アベノミクスという語をつくり、3本の矢、「大胆な金融政策(異次元の金利政策)」「機動的な政出動」「民間投資を喚起する成長戦略」で景気をよくすると言いながら、国民総生産(GDP)を成長させることができなかった。年金基金を使い、日銀を使い、株価を操作してきたが、いまや、超円安を招き、株価操作も ままならない状態になっている。そして、国の借金は、GDPを2倍を超えている。

安倍は、広告業界とつるんだ言葉遊びで国民を騙し、選挙に勝ってきた男に過ぎない。

安倍は、経済政策に失敗しただけでなく、日本を戦争をする普通の国にすべく、法を変えてきた。9年前の機密保護法、7年前の集団軍事行動を可能とする安保法制、5年前の共謀罪法と、民主主義を抑え込む法案を成立させ、いま、緊急事態条項を憲法に加えようとしていた。

安倍は自分を礼賛するものを優遇し、森友学園、加計学園、桜を見る会と事件を起こしてきた。

安倍晋三を国葬とすることは、これらの失敗、腐敗、犯罪を隠蔽することになる。国民を騙して選挙に勝ってきた男は、その片棒を担いだ自民党葬で十分である。

私は、安倍を殺すより、刑務所にぶち込みたかった。


トーマス・レーマーの『100語でわかる旧約聖書』を読む

2022-07-22 23:17:04 | 聖書物語

図書館から借りだしたトーマス・レーマーの『100語でわかる旧約聖書』(白水社)をきのうから読んでいる。原題は“Les 100 mots de la Bible”である。このmotsはイタリア語のモットーに近く、ヘブライ語聖書についてよく語られる100の言葉の1つ1つを1ページ程度で説明している。語の選択はキリスト教徒の関心に合わせたものと思う。

1つ1つの内容はかなり深く、理解するに予備は知識を必要とする。日本語のタイトルは詐欺でである。

レーマーは、ヘブライ語聖書の『申命記』『ヨシュア記』などは、アッシリア帝国の条約文、軍事宣伝文書の構成、語彙の影響を強く受けていると言う。聖書のヤハウェは戦いの神としても書かれているが、アッシリアの守護神、アッシュール神をモデルとしている。

彼は『申命記』のもっとも古い形は、ヨシヤ王の政治・宗教改革を擁護するために作られたとする。この改革は王が礼拝の儀式を独占的に管轄すること、王権の強化である。『申命記』の構成・語彙は、アッシリア王、エサルハドンが臣下に求めた息子アッシュルバニパルへの忠誠の誓約をまねていると言う。

レーマーは、「十戒」についても、ユダヤ教では10の戒というものはないという。聖書には「神が民衆に伝えたという戒律の数がまったく記されていない」という。

彼は指摘しないが、じつは、新約聖書にも、「十戒」がでてこない。私はキリスト教カルヴィン派の教会に通っていた時期があるが、毎日曜日の礼拝で「十戒」をみんなで唱える。私はオカシイと感じた。

このオカシナ行為は、人間に原罪があるという教条と通じる。レーマーは、聖書の『創世記』がエデンの園でアダムとエバが神に背いたことを罪としていないと主張する。これはユダヤ人に古くから知られていることで、私自身はエーリッヒ・フロムの指摘で知った。レーマーはさらに、聖書の『雅歌』と合わせて読むと、『雅歌』は、性愛の肯定と、性愛における男女平等を唱えているのだと言う。

私は、不登校、引きこもり、家庭内暴力の子どもたちと接するとき、彼らに罪はないということを全面的に打ち出す。「原罪」という考え方をしていたら、救える子どもたちを救えなくなる。「原罪」はパウロの書簡の読み間違いから発生したのではないかと思っている。

レーマーは、出エジプトを歴史的出来事ではなく、1つの「神学的産物」とする。イスラエル王国やユダ王国の滅亡のとき、一部の人びとはエジプトに逃げている。エジプトは「単なる抑圧の地であるばかりか、安住の地や受け入れの地として描かれている」と主張する。

レーマーは、聖書に、捕囚から解放されたあと、ディアスポラを選択する人と100年前の地に帰ろうとする人の思想の違いと対立が反映されているとする。多くのユダヤの人はディアスポラを選んだという。

レーマーは、モーセ、ダビデ、ソロモンも実在した人物とは考えられないと指摘する。モーセ―を、ジークムント・フロイトの指摘を想定してか、エジプト人かイスラエル人かわからないと言う。長谷川修一は、イスラエル王国とユダヤ王国が統一された時期があったとする『列王記』の記述を否定するが、この問題に対しては、レーマーは言及していない。

とにかく、本書は内容が盛りだくさんで深い。


子どもを「洗脳ビジネス者」の手に渡してはならない、福岡の虐待事件

2022-07-21 23:01:46 | 教育を考える

きょうの朝日新聞に、『中学生に袋かぶせて殴り監禁か NPO法人理事長・小学校教員を逮捕』という記事が載っていた。毎日新聞には、同じ事件に『障害児ら拘束の福岡のNPO法人 3日間の療育報酬は100万円』という見出しがついていた。

事件は子どもに対する虐待事件であり、また、詐欺事件である。福岡県警が、虐待と詐欺を行ったNPO法人「さるく」の理事長の坂上慎一と共犯者の小学校教諭の松原宏を逮捕したという記事である。

福岡県警が逮捕に踏み切ったことを評価するとともに、いまだに、このような虐待と詐欺が日本で行われているのか、と唖然とする。

いまから約40年前、戸塚ヨットスクール事件というのが起きた。ひきこもりや家庭内暴力を振るう子どもを有料で引き受け、「教育的体罰」と言う名目で預かった子どもたちを日常的に暴力を振るい、2名が死亡することで、組織的虐待の実態が明るみに出た。

今回の虐待の対象になった子どもたちは、朝日新聞によれば「発達障害児」であり、毎日新聞によれば「知的障害児」「自閉症」である。私の経験からすると、これらの子どもたちが、矯正施設に監禁され、「教育的体罰」という名の虐待を受けるというのが、私には不可解である。新聞は本当のことを語っていないと感ずる。

対象になっていたのは、不登校、ひきこもり、親に暴言暴力を振るう子どもたちであったと思われる。というのは、「発達障害児」「知的障害児」「自閉症スペクトラム症児」はみんな優しい子で、そんな子に暴力を振るう理由なんて、考えられないことだからである。

親は自分の思い通りにならない子どもたちを、お金を払って外部の暴力の導入によって、子どもを支配しようとしたのだと思われる。親はとても愚かしいことをしたのだ。暴力を使って、子どもの考え方を変えるなんてことは、絶対にしてはならないことである。

暴力をふるって考え方を変えさす行為を「洗脳」という。暴力の恐怖感から条件反射的に行動を変えるまで、洗脳対象の人間を徹底的に虐待するのである。当然、抵抗する人間は死に至ることもある。また、虐待する側は、虐待することに快感を覚えるようになり、過度の虐待をするようになる。

不登校、ひきこもり、親に暴言暴力は理由があるはずである。不登校や引きこもりには学校に問題があるからである。教師や他の児童に問題があるのかもしれない。隠れたいじめが結構ある。学校ぐるみでオカシイ場合がある。親に暴言暴力を振るうのは、それを理解してくれない親に対する抗議である。

子どもの訴えを暴力で抑え込み、親の思うように行動させるというのは、根本的な誤りである。不可能である。

私がいるNPOでの経験からすると、通常、小学校の不登校は、学校に行かさず、愛に満ちた環境に置けば、半年で自然に解決する。学校ぐるみでおかしいときは、まともな学校に転校すればよい。

家庭内暴力が生じた場合、私は、親子の和解に重点を置く。親子が対話できるようになることを目指す。

今回の福岡の事件が、社会に広く知れ渡り、子を持つ親が「洗脳ビジネス」に騙されないことを願う。

人は記憶にもとづいて動く「からくり人形」のようなものである。記憶は神経細胞のつながりによって実装される。この記憶に自ら逆らうのが知性であり、自由意志だと、私は思っている。団体や国家の暴力によって、この記憶が書き換えられるなんて、あってはならない。