いまちょうど、スティーヴン・スピルバーグの映画『ペンタゴン・ペーパーズ最高機密文書(The Post)』を見終わったところである。映画は、夫が死んでワシントン・ポストの社主になったキャサリン・グラハムが、記者が入手した国防総省の最高機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」を、投獄の危険を冒して、報道するという物語である。
ペンダゴン・ペーパーズには、ベトナム戦争に歴代の大統領や国防総省(ペンタゴン)が勝つと思っていないこと、それでも戦争を続けるのは、ベトナムに負けた大統領と歴史に残りたくないからなどが書かれた4000ページ以上の機密文書である。たんに政治家のメンツのために、若者がベトナム戦争に駆り出されて死んだのである。
現在も、ワシントン・ポストが健在で、この件で地方紙(local papers)から中央紙になったのだから、キャサリンの決断はみんなに支持されたわけである。ただの「普通の女」と思われていたキャサリンが、勇敢にも決断して、報道の自由を守ったという、スピルバーグ特有のハッピーエンドの映画である。
製作費が5千万ドルで、アメリカ・カナダだけで興行収入が8千万ドル以上だったから、ビジネス的には成功だが、見て、何かが足りない。
国家権力に対する報道の自由の戦いに若者が参加できていないからだ。年老いた上流社交界の女たち、老練な新聞記者や編集主幹が主な登場人物になっている。これでは、ベトナム戦争反対の若者が老人になっての同窓会のようだ。
少なくても、年老いたメリル・ストリーブやトム・ハンクスを主役、準主役に用いたのは失敗である。史実はそうであろうとも、若手の俳優を使えば、現在の若者にも見てもらえただろう。国家権力に戦う昔の若者の熱気を現在の若者に共有して欲しかった。
それに、日本語の映画名もダサい。原題の“The Post”を生かして、『ワシントン・ポスト社の勇気』でもすればよかったのではないか。
とても残念な2017年のアメリカ映画である。
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