猫じじいのブログ

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菅義偉はどこで誤ったか、何を後世の教訓とするか

2021-09-05 23:53:50 | 叩き上げの菅義偉

これは、菅義偉の墓碑である。「坊ちゃん・嬢ちゃん」の安倍晋三、麻生太郎に裏切られ、肉体的には生きているのに、政治的には死に追いやられた「叩き上げ」の男の無念さを思い、彼に代わって書く墓碑である。

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昨年の8月28日に安倍晋三が健康上の理由で突然辞意を表明し、菅義偉は急に自民党総裁候補に浮上した。彼は、つづく9月14日の自民党総裁選に勝ち、9月16日に衆議院で内閣総理大臣の指名を勝ち取った。

政権発足時の世論調査では、70%を上まわる支持を菅政権が得た。マスコミを通した「叩き上げの総理」の宣伝が効を奏したようである。

その直前、昨年の9月5日のTBSテレビの『ひるおび』では、田崎史郎、伊藤惇夫、龍崎孝の3名が、菅義偉の総理としての資質について懐疑的な意見述べた。

私も、「叩き上げ」だから理由もなく良いとは思わなかった。ほとんどの人は、「坊っちゃん・嬢ちゃん」ではなく、自分で道を切り開き、自分の手の届いた範囲で満足するしかない。「叩き上げ」を自慢するのはヤクザぐらいである。

昨年の9月8日のTBSテレビ『ひるおび』では、政治ジャーナリストの田崎史郎は、安倍晋三が一昨年の9月に二階俊博を幹事長から外そうとし、二階と安倍の亀裂ができ、その間を取り持ったのが菅であると言った。昨年の8月には安倍の辞任の意思が政権内で明らかになったが、みんなで安倍を慰留していた。このとき、すでに菅は安倍後に向けて、幹事長の職に固執する二階を利用して、総裁の座を目指していたという。

この話を聞いたとき、私は、菅は、安倍と麻生の弱み(犯罪行為)を抑えているのだと思った。じっさい、岸田派、石破派以外は雪崩をうって菅支持にまわった。

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残念ながら、国民の多くは、自民党内の権力闘争を時代錯誤的なものとみなさず、「叩き上げ」の菅に期待したのである。

しかし、一部の国民は、菅義偉の自民党総裁選の出馬会見のつぎの発言に驚いた。

《まず自分でできることはまず自分でやる。自分でできなくなったらまずは家族とか地域で支えてもらう。そしてそれでもダメであればそれは必ず国が責任を持って守ってくれる。そうした信頼のある国づくりというものを行なっていきたいと思います》

「叩き上げ」の菅は、「坊っちゃん・嬢ちゃん」でもなくても自分のように成功した人の財産などを守りたいのだ。「叩き上げ」の菅には弱者が目にはいらない。困っている弱者を助けないで何のために国があるのか。

菅は、「自助・共助・公助」の発言を撤回しなかった。

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菅は、総理の初仕事として9月29日に、日本学術会議の新規会員推薦リストのうち、6名の任命を拒否した。日本学術会議の会員の任期は6年で、3年ごとに半数の会員210名が入れ替わる。日本学術会議法第7条に「会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」とあり、この法案が審議されたとき、「推薦に基づいて」を「推薦のまま」と解釈することで了解されていた。当然、日本学術会議側は、拒否の理由を求めた。菅は、これに対し、任命拒否の理由を明らかにせず、また、拒否撤回もしなかった。ただ不思議なことを言った。拒否された6名のうち、「加藤陽子」をのぞいて、自分はどんな人か知らない、と菅は言った。

今年の7月になって、加藤陽子は、任命拒否の裏側をつぎのように推測した。前回の(3年前)の推薦のとき、学術会議の会長が、安倍晋三に6名多い推薦リスト非公式に見せたのにもかかわらず、自分が総理ときには定員枠通りの推薦リストしか見せないと怒ったのだ、という。だから、理由もいえない。拒否の6名の選択は官房副長官に任した。だから、たまたま知っていた加藤陽子以外は、名前さえ知らなかったのだ。

菅は自分の権威に固執するという、致命的な欠点をもっている。自分に自信がないのだ。

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きのう、9月4日の朝日新聞『〈交論〉突然の首相退陣』に、御厨貴は「説明しない」政治家、江川紹子は「コミュニケーションが一方的な」政治家と菅義偉を批判していた。ただし、両名ともこれは安倍政権からと言っている。

御厨の言っていることは、記者のまとめが悪いせいもあり、怒っている割には意味不明である。

プレゼンテーションが下手であることが問題なのではない。話下手でも誠意ある態度で説明すれば、必ず誠意が通じる。問題は、菅が、総理は日本で一番偉い権力者と思っており、自分の権威ばかりに気にとられ、相手と対等になって話そうとしないことだ。

日本は代議制民主主義をとっている。政権内の自民党や公明党だけでなく、野党とも対等になって話さないといけない。そのためには、定例の国会期間だけでなく、それ以外にも、臨時国会を開いて国会議員と議論を交わすべきだった。が、しなかった。

政治家は上手に説明すればよいというものではない。説明だけが上手なら詐欺師である。御厨は古いタイプの政治学者で、統治が安定していればよい、としか考えないクソである。

江川の視点も良く分からないが、1つは国会内の対話、1つは記者との対話、1つは政府内の、特に官僚との対話、1つは国民との対話を指すものと思う。ただ、代議制民主主義では、誰がやっても、国民との直接対話は難しいので、これからの課題であろう。

御厨のもう1つの指摘は、「大量の情報集中が菅さん個人の処理を越えてしまう」時がくることを菅が理解していないということである。これで何が言いたいのかだが、私が察するに、自分の情報の処理を助ける信頼できる部下やアドバイザーをもてなかったことを言うのだと思う。

国を支配する者は良いスタッフを抱えるという昔からの政治の王道を知らないと御厨は言いたいのだろう。

結果として、菅義偉は新型コロナ対策を誤り、自分を助けると思っていた安倍晋三や麻生太郎に裏切られた。総裁選不出馬の決断2日前、自分の後ろ盾の二俊博階を切ろうとしたことからみれば、菅は騙されたと言った方が適切だろう。安倍や麻生は「坊ちゃん・嬢ちゃん」だが、陰謀だけには たけている。ただの「ぼんぼん」ではない。

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政治は、自分の野望のために行なうものではない。国民のため、人のために行なうのである。菅義偉の墓碑を書くことで、同じ誤りを繰り返さないよう願う。自民党内には、「叩き上げ」の菅より、もっと悪るい人たちが うごめいている。政権交代こそが日本で必要である。

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