猫じじいのブログ

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「因習破壊者」安倍晋三は世界を戦略的に見る尊敬される政治家?

2022-09-04 23:14:48 | 安倍晋三批判

朝日新聞のインタビュー記事『安倍元首相は戦後日本の因習を破壊した』について、きのうに続き、検討する。というのは、安倍晋三の伝記“The Iconoclast”を書いたトバイアス・ハリスは筋金入りの右翼に見えるからである。

彼は3つの謎の主張(statements)を行っている。

1つめは「(安倍は)、時を経て、世界を戦略的に見ることができ、尊敬される政治家になった」である。

2つめは「安倍政権を経て、・・・・・・。日本政治も、多数派がより力をもつようになっている」である。

3つめは「自民党には岸田氏のようなリベラル派の居場所がなくなりつつあるのに、(岸田は)そこにとらわれているのか」である。

ハリスをインタビューした記者はどのような気持ちでこれを聞いて記事にしたのかと 私は いぶかしく思う。

「戦略的に見る」とは、一般に、目的を確実にとげるために、取り巻く状況を分析し、達成する手段や手順を考えるということである。「尊敬される政治家になった」というから、ハリスは安倍の戦略的思考を評価している。

安倍の目的は「日本や日本人を守るための強い国家を作る」ことである。分析する状況は「世界の潮流と、中国の台頭」である。その結果、戦略は「米国を(日本の)安全保障に関与させる」である。

これは、吉田茂以来の日本の保守政治の伝統的思考で、とりたてて、「尊敬される政治家になった」というほどのものか、私は、はなはだ疑問に思う。たぶん、「(安倍の)若い頃の発言を見ると、……。米国によって日本が抑え込まれているという思いと、反発があった」が、ようやく、大人になって、米国支配層の考えがわかるようになったと、ハリスは上から目線で日本人を見ているのではないか。

ジョン・ダワーの『敗北を抱きしめて』を読むと、戦前のアメリカの日本通の専門家は日本人を猿のように低能な生き物と見ていたとある。ハリスも日本の参議院議員のスタッフとして働いて嫌な思いをいっぱいして、心の底から日本人を軽蔑しているのではないか。

2つめの主張は非常にわかりにくい。記事の中のヒントは「憲法9条は改正されていないが、日本は明らかに変わった」しかない。日本の政治において、自民党が多数派であるのに、リベラルや左翼知識人に遠慮して、本来なすべきことをなしていない、とハリスが思っていたからではないか。

3つめの主張は、岸田文雄はリベラル派ではないから、「岸田氏のようなリベラル派」という部分は明らかに誤りである。この3つめの主張、自民党がリベラルな政策にとらわれるな、と、なぜハリスが言うのかは私にはわからない。ハリスにとって、米中対立において、日本がアメリカ側に立つことだけが重要なのに、なぜ、リベラルをないがしろにするのかが謎である。

「個人の権利を重視し、国家が踏み込むべきでないとという、米国の保守的な思想」と対立する安倍の戦略的思考を、アメリカにとってのリスクとハリスが考えていないのか、大きな謎である。