ドナルド・トランプは、予測不可能な大統領である。人類の歴史は人を約束の守れる人間にすることだ、とニーチェはどこかで言っていたが、トランプはまさに真逆である。いわゆる「良い子ちゃん」でない。「悪ガキ」なのだ。
トランプ大統領は、自分にとって損か得かで、激しく揺れ動く。彼は、常識にとらわれないから、ものごとの本質をつくこともある。
彼の言う通り、米日安全保障条約は、過去の遺物で、不要のものなのであろう。
トランプ大統領は、昨年、北朝鮮との軍事的対峙、戦争ゲームは、無駄にお金がかかる、と言った。北朝鮮の労働党委員長キム・ジョンウン(金正恩)と何か共同署名を行ったが、わかったことは、北朝鮮の脅威は大したことがないと、じつは、みんなが思っていたということだ。
トランプ大統領は、就任したとき、軍人出身者は勤勉で自分に忠誠を尽くすと思って、大量に閣僚メンバーにしたが、昨年から、次々と首にしている。じつは、軍人出身者が「やくたたずの木偶の坊」であることが、もはや、公然の事実となった。
トランプ大統領は、2年前に、突然、シリア政府の軍事基地にミサイル攻撃した。ところが、昨年の12月、IS掃討に成功したと宣言し、米軍をシリアから撤退させると言った。彼は、軍人が自分たちの組織をまもるために危機をあおるだけで、つき合っていられないと思ったのだろう。
トランプ大統領は、昨年6月、イランと欧米との核合意から、離脱を一方的に宣言した。イスラエルのためと言われている。昨年5月、アメリカ大使館をテレアビブからエルサレムに移した。アメリカの福音派の票を得るためと言われている。
今年の6月13日、ホルムズ海峡で日本のタンカーがイランの革命防衛隊の攻撃を受けた、と、トランプ政権は発表してイランを非難した。が、いっぽうで、トランプ大統領は、自国のタンカーは自分で守れ、アメリカの知ったことかと言った。
また、6月20日、米軍の無人偵察機がイランに撃沈されたから、その仕返しにイランの軍事基地に攻撃しようとしたが、(イラン人が)150人死ぬという軍幹部の予測を聞いて、無人偵察機のために150人を殺すわけにいかないから、直前に中止した、とトランプ大統領は言う。
たしかに、死人ゼロの仕返しのために150人を殺すわけにいかない。
しかし、思う通りに動かないトランプ大統領を動かすために、米軍幹部のなかに、わざわざ危機を作っているものがいるのではないか。ホルムズ海峡のタンカー攻撃事件も陰謀臭い。
トランプ大統領とアメリカ政府は混乱し、予測不可能である。
この際、日本も、対米従属で貿易不均衡を許してもらおうなどとのスケベ根性をサラッと捨てて、日米安全保障条約を破棄しよう。予測不可能な時代に、接待外交は通じない。軍事同盟はかえって危険を拡大する。