日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 党中央(中国共産党中央委員会)の執行機関である党中央政治局が会議を開催した、という新華社電に接したとき、

「會議還討論了其他事項」(会議ではその他の事項についても討論された)

 という一文が記事の文末にはしばしば登場します。目にするたびに気になっていたのですが、きょう(11月30日)の香港紙『明報』によると、これは往々にして人事異動が決められたことを暗示するものなのだそうです。なるほど。……てな訳で、ちょっと賢くなった気分です。

 その真偽はともかく、27日の党中央政治局会議を報じた新華社電にも
「會議還討論了其他事項」が登場。『明報』によると、打てば響くとばかりにほどなく北京筋から異動情報が流れてきたとのこと。

 いや、別に『明報』に頼らなくても昨日から動きはありました。香港の親中紙『大公報』(2007/11/29)に、

 ●薄熙来(商務部長)が重慶市党委書記になる。
 ●商務部長の後任は陳徳銘(国家発展改革委員会常務副主任)。

 という記事が出たのです。消息筋情報として、

「薄熙来は李源潮・党中央組織部長(党中央政治局委員)とともに29日に重慶入りし、30日に市党委書記就任を発表する」

 なんて妙にリアルな話までついていました。薄熙来も李源潮と同じ党中央政治局委員です。……一応解説しておきますと、一党独裁政権の中国においては政府の上に党組織が実質的に君臨しています。ですから市長より市党委書記、省長より省党委書記の方が格上でその地区の「トップ」なのです。

 薄熙来が重慶市党委書記になるというのは以前から確実視されていたもので、それによって現職の汪洋が広東省党委書記に転出、そして張徳江・広東省党委書記は来春に副首相になる、というのも以前からの観測です。薄熙来が動くのであれば、玉突き人事で汪洋と張徳江も異動することになるでしょう。

 ●『大公報』(2007/11/29)
 http://www.takungpao.com/news/07/11/29/ZM-829784.htm
 http://www.takungpao.com/news/07/11/29/ZM-829783.htm

 10月半ばに開催された「十七大」(中国共産党第17回党大会)を節目とする大型人事、その第三波がいよいよ行われる、ということでしょう。香港メディアによる人事予想は11月初旬に出ていましたから、私としては「何だい3週間も待たせやがって」という感じです。

 ――――

 「十七大」で第17期中央委員が選出され、その中から党中央政治局委員や実質的な最高意思決定機関である党中央政治局常務委員の顔ぶれが定まりました。

 ポスト胡錦涛として、習近平(前上海市党委書記・太子党)と李克強(前遼寧省党委書記・団派)が飛び級で常務委員に昇格したのを御記憶の方も多いでしょう。薄熙来や李源潮や汪洋もそのときに党中央政治局委員の列に加わっています。言わずもがなではありますが、「団派」とは胡錦涛直系の今をときめく共青団人脈であり、「太子党」は故人を含めた党元老格の二世組。

 こうした一連の指導部人事が「第一波大型人事」です。では第二波は?というと、第一波大型人事で空いたポストの穴埋めで、例えば習近平が勤めていた上海市のトップに兪正声(前湖北省党委書記)が就任しています。

 ●アドミラルティさん、お元気そうで何よりです。(2007/10/27)
 ●家に帰るまでが遠足@十七大12(2007/10/30)

 で、今度は「第二波大型人事」で空いたポストや、世代交代的意味合いを含めたその他の異動がほぼ一斉に行われます。これが「第三波大型人事」。

 他にも続々と人事情報が飛び出してきました。『明報』ともども党中央政治局常務委員の新メンバーをピタリと的中させた米国のニュースサイト「多維新聞網」(chinesenewsnet.com)が今日未明、本日付『大公報』(2007/11/30)の報道を素早く転載して、

「郭金龍(安徽省党委書記)が北京市長代理になる。郭金龍の後釜は安徽省長の王金山」

「李鴻忠(深セン市党委書記)が湖北省長代理・湖北省党委副書記になる」

 とのニュースを報じました。すると北京市長の王岐山は?となるのですが、張徳江同様、来春の全人代(なんちゃって国会)で副首相になるというのが以前からのお約束。ちなみに郭金龍は胡錦涛の腹心格です。

 他にも今日の『明報』が独自情報を報じていますし、『大公報』には「多維新聞網」に転載されたニュース。そして何よりも、香港親中紙の筆頭格である『香港文匯報』(2007/11/30)が「11名異動」という正に第三波と呼ぶにふさわしい「ごっそり人事情報」を写真などを多用して特集記事に仕立てています。消息筋情報ですが他でもない『香港文匯報』ですから確度は高いといえるでしょう。

 という訳で、まとめてみました今回の香港情報。左が現職、右が新ポストです。



 ●『香港文匯報』『大公報』

  張徳江
 広東省党委書記            → 来春に副首相就任

  薄熙來
 商務部長               → 重慶市党委書記(汪洋の後釜。太子党)

  汪洋
  重慶市党委書記            → 広東省党委書記(張徳江の後釜。団派)

  陳徳銘
 国家発展改革委員会副主任       → 商務部長(薄熙来の後釜)

  郭金龍
 安徽省党委書記            → 北京市長代理 or 北京市党委副書記(王岐山の後釜。胡錦涛の腹心)

  王金山
 安徽省長               → 安徽省党委書記(郭金龍の後釜)

  王三運
 福建省党委副書記           → 安徽省長(王金山の後釜)

  郭声�
 広西チワン族自治区党委副書記     → 広西チワン族自治区党委書記(劉奇葆の後釜)

  劉奇葆
 広西チワン族自治区党委書記      → 他省へ転出か

  蘇栄
  中央党校常務副校長          → 江西省党委書記(孟建柱・現公安部長の後釜)

  李鴻忠
 深セン市党委書記           → 湖北省長代理(羅清泉・現同省党委書記の後釜)


 ●『明報』

  王岐山
 北京市長・北京五輪組織委員会執行主席 → 来春に副首相就任

  羅志軍
 南京市党委書記            → 江蘇省長(張保華・現同省党委書記の後釜。団派)



 他に『星島日報』(2007/11/30)も似たような観測をしており、

「李鴻忠(深セン市党委書記)の後釜は林雄(広東省党委宣伝部長)か胡沢君(広東省党委組織部長)のどちらか。林雄は温家宝の秘書あがり」

 との独自情報があります。これについて『明報』は、

「李鴻忠は次期広東省長との前評判が高かったから、湖北省長代理というポストは不本意なのでは?」

 としています。また現在空席の遼寧省長の後任は内部から昇格する形になる見込みで、

「候補者は駱琳(省党委副書記)か陳政高(瀋陽市党委書記)」

 とのこと。駱琳は「団派」で李克強の子分、一方の陳政高は「太子党」である薄熙来の腹心だそうです。何やら派閥争いの様相で面白そうですね。

 面白いといえば『香港文匯報』も、

 ●重慶市党大会は薄熙来と李源潮が今日到着するのを受けて、明日幹部大会を開き新人事を発表する。
 ●中央党校は今日、江西省党委書記に就任する蘇栄(常務副校長)の送別会を開く。(第二波大型人事で)公安部長になった孟建柱・前江西省党委書記も顔を出す予定。
 ●湖北省長代理になる李鴻忠は明日、武漢入りして部下たちとの面通しに臨む。

 などと細々とした動静を伝えています。まあ、

「当たるも八卦の香港情報」

 でして実際に前回紹介した予想人事の顔ぶれとは異なる部分もあるのですけど、それもこれも5年に1度のお楽しみということで、この貴重な機会を純粋に面白がったりヲチ経験値を高めたりする。……ってことでいいじゃないかと私は思うのです。


 ――――


 ●『星島日報』(2007/11/30)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1130eo01.html

 ●『香港文匯報』(2007/11/30)
 http://paper.wenweipo.com/2007/11/30/CH0711300001.htm
 http://paper.wenweipo.com/2007/11/30/CH0711300012.htm
 http://paper.wenweipo.com/2007/11/30/CH0711300013.htm
 http://paper.wenweipo.com/2007/11/30/CH0711300014.htm

 ●『明報』(2007/11/30)
 http://www.mingpaonews.com/20071130/cag1.htm

 ●『大公報』(2007/11/30)
 http://www.takungpao.com/news/07/11/30/ZM-830306.htm
 http://www.takungpao.com/news/07/11/30/ZM-830305.htm
 http://www.takungpao.com/news/07/11/30/ZM-830304.htm




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張徳江が副首相だなんて (非典型日本人)
2007-11-30 13:17:55
1)SARSをひた隠し、結果的に香港人300人、大陸でも数百人を死なせた。SARS収束後の広州のタク運転手いわく「北京市長がクビなのに、どうしてやつはおとがめなしなんだ」。
2)農民デモに武警が発砲、虐殺。
3)警察が職質で捕まえた青年を撲殺
4)電力不足、労働力不足で外資系工場は気息奄々
5)中国では数少ないまともなメディア、南方集団いぢめ
6)北朝鮮金日成総合大学に留学して「経済」を学んだ

そんな張徳江が副首相だなんて、中国まじ終わってます。
 
 
 
むしろ中国共産党の本性暴露 (エミル)
2007-12-01 10:57:46
非典型日本人さんのコメントへのコメントです。

私はむしろ中国共産党の本性が現れた人事と考えます。中国共産党はもともと中国の国民のことを大切と考えない、都合が悪ければ国民をいくらでも殺してもかまわないと考えている党なのです。
 
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