ひょっとするといまの中国人民にとってのトレンドなんでしょうか?
いや、暴動・デモ・スト・座り込みの類です。最近本当に多い。重慶・万州区の暴動とか、河南省の民族衝突とか、何だか随分前のことのように思えませんか?
その多くは政府による土地の強制収用にまつわるトラブルが原因ですね。
土地を取り上げておいて、ロクに補償金を出さない。役人がその一部を懐に入れてしまったり、開発業者と結託して評価額を不当に抑えたりして、農民に渡すカネが雀の涙になってしまう。それで文句でも言ってきたものなら、これまた役人と結託している公安さん武警さんの出番。殴る蹴るを繰り返して農民の陳情しようとする意思を無理矢理潰してしまう。
あと移転先がひどい場所で耕作に不適で、農民は仕方なく民工(肉体作業者)になるしかない。重慶・万州区は三峡ダム建設に伴い泣く泣く農業から転じた移住者が、たくさん住んでいる街だそうです。
で、そういう事例が沿海部・内陸部を問わず頻発していることは、これまで紹介してきた通りです。
――――
あとは民工への給料未払いとか遅延による事件。
最近新華網に出ていた記事なんですが、天津が何やら自慢してるんですよ。
http://news.xinhuanet.com/fortune/2004-11/14/content_2216659.htm
大意だけ訳しておきますと、2003年末までの民工に対する給与未払い分合計12.09億元を、天津市は全国に先駆けて8月31日にまでに解消した、ということです。
いや先駆けてって言われても……それって自慢することなんでしょうか?
12.09億元が民工たちが手にすべき給与の何%になるかは知りませんが、天津市が胸張って高らかに宣言しているところをみると、半年以上遅延するケースが一般的なんでしょうね。
――――
で、こうした民工問題、これも農民絡みですね。民工といっても色々な職種がありますが、最も典型的なのは建築業でしょう。それについて中国海員建設工会全国委員会というのが調査を行っています。
http://news.xinhuanet.com/fortune/2004-11/10/content_2201328.htm
それによりますと、建築業に従事する農民は約4000万人、これは民工になっている農民の3割以上で、建築業の最前線においては9割以上が農民だそうです。
その特徴たるや何かといえば、
●年齢はふつう18~50歳、このうち30歳前後が6割以上。
●初級中学(中学)以下の学歴保有者が6割以上。
――とのことで、学がないため、まとまって何かやろう(組織活動とか)とする意識が低く、自分の権益を守るという意識に乏しい(守る術を知らない)。このため損をする目に遭うことが多いそうです。ロクに契約を結んでいないケースも相当あるとか。
――――
各地の農民が自発的に政治的活動に出る――暴動、デモ、陳情などですが、これは驚くべきことです。規模と発生地の広範さからみて、中国建国以来初めての事象といっていいのではないでしょうか。
中共の基盤が揺らいでいる訳です。
このうえ都市部に出ている民工が団結して組織的に動き出したら、一体どうなってしまうのでしょうか。楽しみですねえ(笑)。
まあ農村の問題にせよ民工の問題にせよ、現状の経済モデルで改革・開放を続けていけば必ずぶつかる性質のもので、胡錦涛政権は成立早々、その難題に直面する破目になっている訳です。まあ誰がやっても解決不可能だと思いますけどね。
簡単にいえば、今までの経済成長は農村と農民を犠牲にすることで成立してきたものです。農村と農民を大事にしてしまうと、従来の成長システムが一挙に崩れてしまう。外資も逃げる。
「世界の工場」といっても、内実は「世界の組み立て工場」にすぎませんからね。プレステ2とかが好例です。チップとか大事なところはみんな日本で生産して、それを中国に持っていって組み立てる。中国は組み立てるだけですから、現状のままだとチップを作れるような域にはいつまで経っても到達しようがない。
ちょっと筆が滑りましたが、胡錦涛政権はそういう際どさの上に成立しているものなのです。海外の中国知識人が集まる論壇で、「末代総書記」(ラストエンペラーみたいな意味です)と揶揄されるのも無理のないところです。
| Trackback ( 0 )
|