奈良県は近畿大学農学部と連携し、同大が持つ技術を活用し担い手の就農を支援する「農の入口」事業に乗り出す。古着などの繊維で作ったポリエステル培地や情報通信技術(ICT)などを使った農法で、高齢者や障害者、若年性認知症患者らの農業参入を容易にし、不足する担い手確保につなげたい考え。27日には、両者が包括連携の覚書を交わした。
事業は、県主催の政策提案コンペで最優秀賞に輝いた同大の提案を原案に具現化。県は今年度、3000万円を充てた。
具体的には、ポリエステル培地で、欧米で普及する食用タンポポなどを栽培。培地は軽量であるため作業負担が軽減できる他、半永久的に使えるのでコスト低減につながるという。コーヒーや菓子の加工も模索する。
また、ICTを活用した養液土耕栽培で、トマトやメロンを栽培する。自動で生育データを分析し、液肥量などを調節できるため、個人の経験や勘に頼ることの多い農業から脱却を図りたい考え。収穫物を生かしたジェラートなどの6次産業化も視野に入れる。
今年度は試験的に栽培・販売・加工を進めるとともにマニュアル化にも着手。
来年度は構築したマニュアルを「なら近大農法」として、県の農業担当者らが県内各地で普及する。栽培にかかる初期費用は、新規就農者向けの県の補助などで軽減させ、担い手確保につなげていく計画だ。
早ければ2018年には、農業のベンチャー法人「なら近大ファーム(仮称)」を設立し、県内の農業経営体と連携する。
同大の重岡成農学部長は「多くの担い手を育成したい」と強調。県の福谷健夫農林部長は「園芸作物の生産を盛んにして農家所得の向上につなげたい」と期待する。
2017年09月28日 日本農業新聞