illustration (C)今井久恵
『子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方』の著者の立石美津子の連載「もしかしてウチの子、障害児?」第28回目。
今回は“障害児に対する差別や偏見と家族”についてです。
わが子のことを知らず知らずに「差別」する親
誰でも好んで「障害のある子を産みたい」なんて思ってはいませんよね。ですから、わが子が例えば“自閉症”と診断されてしまうと、「良かったな」なんて思うママは皆無だと思うのです。多く人が将来を悲観し、これから起こる子育てに不安を覚えます。
それに、ママ自身が健常者だったら、自閉症児が持つ世界なんてわかりようがありません。「可哀想な子を産んでしまった」と子どもを不憫に思い、自分のことも同時に責めるのです。これが人間の自然の感情です。
でも、「障害があることは不幸だ」という気持ち自体が、実はわが子のことをもしかしたら差別していることなのかもしれません。
「子どものために良かれと思って」と考え、障害のある子がわが家にいることを隠す行為そのものが、子ども側からしてみれば「親が自分のことを隠したい存在だと思っている」ことを意味し、子どもに対してとても失礼なことだと思うのです。
本人は「不幸」だとは思っていない
source:https://www.shutterstock.com/
「僕は自閉症児に生まれて不幸せです」と障害のある子として生まれてきたことを、本人は最初は「不幸だ」とはこれぽっちも考えていないのです。
もし、そう感じてしまっている子がいたら、それは親がそう思わせたのだと思います。
子どもの気持ちを理解してやらなくてはいけない親が「このままではダメだ。子どものために」と言いながら、実は自分の理想像とする子どもに近づけようと追い込んでしまいます。
例えば「皆と同じ行動がとれるように頑張ってね」のビーム(光線)をドンドン送り続けたり……。こんな環境で育つと子どもは親の期待に応えようと頑張ります。
そして、いつの間にか親の期待が「皆と同じようにならないと僕はダメなんだ」と子ども自身の考えとして染みつき、自己否定し、やがては「自分は可哀想な子なんだ」という気持ちになっていくこともあります。
自閉症は大変なこともあるけれども、不幸をもたらす子ではないのです。
現実は「家族の協力」を得られないことも多い
“障害児は家族を照らす天使、障害児が生まれると家族の絆が深まる”などと言われることがあります。またテレビなどでも障害を持つ子を支えている家族の番組が放送されることもあります。
「障害児がいて家族に諍いが絶えません」なんていう番組はあまり見たことがありません。
でも、現実で起こっていることの中には、お姑さんからお嫁さんであるママが「発達障害児だなんて!あんたの血筋が悪いんだ!」と責められたり、夫から「お前がちゃんとしつけていないから、こんな風になってしまったんだ」と理解が得られなかったりして、孤立無援状態で苦しんでいる人もたくさんいます。
家族がバラバラになり離婚に至る人も結構います。
差別や偏見は赤の他人よりも、実は家族から起っているのかもしれませんね。
“障害のある子を受け入れる”って実は“障害のある子を認めたくない自分を親が受け入れる”ことなのかもしれませんね。
家族は子ども側によりそう応援団になって「そのままのあなたでいい」という言葉を日頃から意識して言葉や態度で示してください。
「出来ないあなたは決して認めない」という姿勢をみせてはいけません。
「どんな子であってもママはあなたのことが大好きよ」というメッセージを幼い頃から与え続けることで子どもも親も本当に幸せになると思います。
2017年1月30日 エキサイトニュース