相模原市の障害者施設「津久井やまゆり園」で19人が刺殺され27人が負傷した事件で、神奈川県は13日までに、施設の建て替え問題など今後の在り方に関する住民説明会を園内の体育館で開いた。地元住民ら約30人が参加し、全面的な建て替えの要望が相次いだ。県は昨年9月に決定した施設の建て替えについて、障害者団体などから異論があり、見直しを進めていると説明した。
やまゆり園の建て替えを巡っては、グループホームなど小規模施設への移行を求める障害者団体から異論が出ている。
12日の説明会の参加者からは「園のおかげで利用者と地域が交流してきた歴史がある」「町おこしにつながる形で再生してほしい」などと、園の建て替えを求める声が上がった。利用者の意思確認が前提だという意見もあった。
また、建て替えの根拠となる事件現場の状況が明らかでなく説得力がないとして、施設内部を報道陣に公開すべきだといった提案もあった。
県はやまゆり園の在り方を検討する部会を設置している。部会は5月にも建て替えの是非をめぐる見解を県に示す。県は入所者本人の意向も踏まえ、やまゆり園の在り方を示す「再生基本構想」を夏ごろまでに公表する方針だ。
一方、障害福祉に関わる市民や行政関係者らが大津市内で意見交換した「アメニティーフォーラム」の実行委員会は13日までに、相模原市の障害者施設殺傷事件に関し、神奈川県が検討しているやまゆり園の現地再建案を撤回するよう求める意見書をまとめた。
意見書は、事件の起きた園の再生に向け「生涯にわたり保護・支援する施設から、地域移行を進める施設に方向転換しなければならない」と指摘。現在地は市の中心部から遠く、地域交流に適さないとした。また、重い障害がある人は考えを伝えるのが苦手で言葉を発しない人もいるとして、どこに住みたいかの意向確認を慎重に行うよう要請した。
▼相模原殺傷事件 2016年7月26日、相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者が次々と刃物で刺され19人が死亡、職員3人を含む27人が負傷した。神奈川県警は同日、殺人未遂容疑などで元施設職員植松聖容疑者(27)を逮捕。翌27日に容疑を殺人に切り替えて送検した。8月に女性入所者9人への殺人容疑で再逮捕、9月に男性入所者9人を殺害した容疑で再逮捕した。横浜地検は事件当時の精神状態を調べるため鑑定留置を実施している。
2017/2/13 日本経済新聞
〔共同〕
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます