「セブン銀行のATMは他行と大きく異なる」とほかのIT企業が言うほどのATMは、どうやって生まれたのか。そこにはデザイン・シンキングの考え方の中核となる、人間中心の開発体制があった。
障害者や外国人で使い勝手を検証
デザイン・シンキングでは一般に、利用者の操作状況を調査・観察し、そこから開発の目標を絞り込んで設計した後、実際に使い勝手を検証して再度、設計に反映させるといった流れを取る。
今回もまずは高齢者へのインタビューや利用現場の観察などを実施。「コンビニ内のATM なので買った商品を持っている利用者もいる。荷物をどこに置くのか、操作する場合の姿勢はどうかなども分析した」(NECデザイン事業部ソリューションデザイン部の太田知見・クリエイティブマネージャー)。
左:実物大モックアップを作って操作を検証しているところ。妊娠中の社員にも協力してもらい、圧迫感がないかどうかを確認した
右:身体障害者の社員にも使い勝手を試してもらった

デザイナーが車椅子に乗り、身体障害者の立場で高さなどを検証した
その結果、画面の文字の大きさや色はもちろん、軽快な操作性を開発目標として改めて重視。処理速度向上や消費電力削減と並行し、ユーザーインターフェースの改良を重ねた。実物大モックアップや簡易画面を作成し、身体障害者や妊婦の社員のほか、外国人にも依頼して使い勝手を検証。手の届きやすさや圧迫感などを実感できるようにした。今回、初めてアニメーションや効果音を操作に取り入れたが、利用者からは「アニメーションが気持ちいい」「効果音が優しい」と非常に好評だったので、採用に自信を持ったと言う。
今や社会インフラとも呼べるコンビニATM。安心や安全、国際化が問われる中で利用者の身になり、さらなる進化を狙う。
2015年1月7日 日経デザイン編集部
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