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ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

三陸物語:東日本大震災 母の遺言/1 「生ぎろ!」言葉かみしめ

2012年01月04日 02時34分16秒 | 障害者の自立
 津波が迫る中、車で待つ家族に「オラはいいがら、行げ!」と叫び、波にのまれた女性がいる。岩手県大船渡市の勝部満代さん、享年74。家族に「生ぎろ!」と声を掛け、夫(77)が車を急発進させるのを見届けたかのように「万歳」を繰り返した……。

         ◇

 穏やかな日和となった元日。市内の仮設住宅に住む志田由紀さん(49)、名津紀さん(27)母娘は高台にある神社に初詣に出掛けた。満代さんの長女と孫である。母とダウン症で全盲の娘が手をつないで上る参道から、がれきが撤去されて閑散とした市街地が見える。去年の正月、母娘はその一角にあった自宅で満代さんのおせちを食べて、この神社に参拝した。

 名津紀さんは地元の養護学校を卒業後、内陸にある知的障害者施設の寮で暮らしたが、いじめにあって6年前に退寮。以来、家に引きこもり、日中は保育士の仕事に出掛ける母親に代わって満代さんが世話を続けた。満代さんは孫娘を「なっちゃん」と呼び、なっちゃんは祖母を「ぼぼ」と呼んで慕った。

 この朝、由紀さんは夢を見た。亡き満代さんや祖父母らと掘りごたつを囲み、「光より早い物質が見付かったんだって。将来、タイムマシンができて、いつでもこうしてみんなで会えるようになるかもしれないね」と話しかけたそうだ。そして、なっちゃんは初詣を終えて思いを文字に記した。「おかあさんありがとう」。これは、由紀さんへの感謝の気持ち。「おそらのうえにいきたい あうから」。これは天国にいる「ぼぼ」に会いたいという思い。震災後、「ぼぼ」という名や悲しみの言葉を封印してきた彼女の思いだった。


毎日新聞 2012年1月3日 東京朝刊


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