障害者団体が運営するリサイクル店で働きながら、リングに上がる女子プロレスラーたちがいる。2人は15日、店で開かれたイベントに出場。男子レスラーを相手に激闘を演じ、応援に訪れた障害者たちを勇気づけた。
さいたま市桜区のリサイクル店「にじ屋」で働く新田猫子(ねこ)さん(36)=本名・新田和美=と、内藤メアリさん(40)=同・内藤亜希子。ともに埼玉大教育学部を卒業後、障害者団体「虹の会」の介助スタッフとして勤務。同会が運営する「にじ屋」で、知的障害者と一緒に働いている。
地域の住民らから提供された衣類や雑貨などをリサイクル販売し、障害を持つ職員たちの給料に充てる。地元の人たちの手助けや地域の理解がなければ前に進まない事業だ。
2人は障害者と働くかたわら、「足が遅くても、力がなくても色々な見せ方がある」というプロレスに興味を持った。2010年1月、学生や主婦も所属する女子プロレス団体「アイスリボン」(蕨市)のプロレス教室に入門。
中学、高校時代はバスケットボール部に所属し、「元々、体を動かすのが好きだった」という新田さん。一方の内藤さんは学生時代に運動経験がなかったが、マラソンに出場するなどして体力作りに励んだ。約1年後の11年春、2人はアイスリボンの誘いを受け、そろって「遅咲き」のプロデビューを果たした。
ともに週5日、店で働く「兼業レスラー」。仕事の合間に試合に出て、地方遠征にも加わるため苦労も多い。体格も身長164センチの内藤さん、同155センチの新田さんと決して恵まれていないが「観客から励まされると、痛くてもまた頑張ろうと思う」(新田さん)。
15日は、介助者募集の活動を通じて縁ができた「大日本プロレス」(横浜市)のスペシャルマッチが「にじ屋」の駐車場で行われた。特別に出場した2人は、初めて「店頭」でリングコスチュームに身を包み、男子と組む3対3のタッグで戦った。新田さんは、コーナーポストから宙返りを繰り出すなどリングを所狭しと跳びはねた。一方、内藤さんは、男子レスラーとのマイクパフォーマンスの掛け合いでも会場を沸かせた。
「プロレスとの出会いで人生観が大きく変わった」と語り、体を張ってリサイクル品の提供などを広く呼びかけた彼女たち。リングサイドで見守った地元の人々や障害者らから惜しみない拍手が送られた。
リサイクル店の駐車場に設けられたリングで戦う2人
2014年11月16日03時00分 朝日新聞デジタル
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