中山間地の遊休農地を転用してワイン用のブドウなどを栽培し、障害のある人たちが働く醸造所(ワイナリー)をつくる計画が岩手県花巻市で進められている。内閣府が認定した同市の構造改革特区「花巻クラフトワイン・シードル特区」を活用した初のワイナリーで、障害者と地域が支え合い、ワイン産地を振興するモデル事業をめざす。
計画を進めているのは同市幸田で障害者就労支援施設などを運営する社会福祉法人悠和会(宮澤健理事長)。遊休農地を活用した事業の一環でリンゴ栽培やリンゴ果実酒のシードルをノンアルコールタイプで製造・販売する事業を手がけており、新設ワイナリーでそのノウハウを生かす。
法人に隣接する棚田の休耕田を借りて1ヘクタールのブドウ畑を造成して赤、白ワインのブドウ苗木400本を既に植栽している。
就労する障害者は約40人。ブドウの苗の栽培のほか、畑の隣に設ける醸造所で今年度からシードル2キロリットルの醸造を始める。ブドウ園にはメルローなどのブドウ苗木をさらに2千本植栽し、2023年度のワイン販売開始をめざす。
事業費は1億1千万円。日本財団の障害者就労支援プロジェクト「はたらくNIPPON!計画」のモデル事業として6956万円の助成を受ける。
法人がある幸田地区は、中山間地で、農業者の高齢化による後継者難や遊休農地の拡大が進んでおり、事業では農業の技術継承や障害者の工賃アップによる経済的な自立をめざす。
16年度に認定された「花巻クラフトワイン・シードル特区」では、花巻産のブドウやリンゴなどを利用した果実酒の事業用醸造が、年間2キロリットル(従来は6キロリットル)の小規模施設から可能となった。市内には三つのワイナリーがあるが、特区での新設は初めて。市も産業振興や障害者の就労支援に期待、整備を補助する予定だ。
宮澤理事長は「後継者難で遊休農地が増えている地域で、障害者が誇りを持って地域づくりに貢献していけるモデルに育てていきたい」と話している。
起伏に富んだ棚田跡はブドウ栽培に向いた砂混じり。既に苗木が育てられている
2018年6月5日 朝日新聞
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