障害者に必要な配慮を公立学校などに義務づけた障害者差別解消法の施行から4カ月がたった。京都府内の学校でも児童・生徒の障害の特性に応じて設備を改修したり、授業内容や指導方法を工夫するなどの取り組みが広がっている。一方で同法が求める配慮には明確な基準がなく、学校側からは「どこまで対応したらいいのか」との戸惑いも聞かれる。
■「どこまで対応すれば」戸惑いや模索も
7月上旬に洛水高(京都市伏見区)であった体育の授業。1年生の男子生徒が剣道に取り組む体育館の一角で、小林飛翔さん(15)は床に並んだコーンの間を電動車いすで走り抜ける練習に励んでいた。見守る中村徹講師が「手前で速度を出した方がいい」と助言した。
小林さんは筋ジストロフィー患者で重い身体障害がある。同高は入学が決まった直後から保護者や通学していた中学校と話し合い、対応策を検討した。
体育は他の生徒と同じ内容はできず、車いすを操作する特別メニューで評価する。小林さんを介助する講師2人を配置。階段の上り下りのため昇降機を導入し、トイレも車いす仕様に改修した。小林さんは「先生たちのおかげで高校生活を楽しめている」と笑顔を見せる。
同高が小林さんのために整えた環境は障害者差別解消法が規定する「合理的な配慮」に当たる。障害のある子どもも平等に教育を受けられるようにするため、学校が過度の負担にならない範囲で必要な変更や調整を行うことを指す。ただ、障害の特性や程度はそれぞれ異なることから各校は対応を模索している。
醍醐西小(伏見区)では発達障害の可能性がある児童のために教材や教え方に工夫を加えた。文字の読み書きが苦手な場合は教科書の文章にルビを振ったテキストを用意したり、教科書を音読するソフトを保護者に紹介している。筆算の手順を分かりやすく示す計算用紙も作った。授業についていけない児童には予習を実施し、理解度を高めている。通級指導担当の畑中崇伸教諭は「一人一人の児童に合った支援をすることで学習意欲を引き出せる」と取り組みの意義を語る。
発達障害への対応は市全体でも進む。市教育委員会は今年4月、小学校教員に対し、すべての児童にとって分かりやすい授業をするための点検表を配布した。中学、高校にも学習障害のある生徒を支援するためのガイドを提供した。
体育の授業でコーンの間を電動車いすで走り抜けるメニューに取り組む小林さん。そばで中村講師が見守る
京都新聞 平成28年8月29日
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