2020年東京パラリンピックに向けて、東京都が障害者アスリートの発掘・育成に初めて乗り出す。今月中に事業への参加者を募り、来年1月に障害者スポーツの体験会、2月に競技ごとの練習試合などを行い、参加者の適性を見極めて選手としての強化に取り組んでいく。20年大会の出場選手を生み出すことが目標だ。
「一人でも多く地元の選手が出場し、活躍して、応援する観客を熱狂させることが非常に大事」。20年大会の成功に向け、舛添要一知事は発掘事業の意義をこうアピールする。
発掘事業の対象者は、都内に在住・在学・在勤の小学5年生以上で、20年大会の実施競技に該当する障害がある人。まずは障害者スポーツを体験して楽しさを感じてもらい、その後の練習試合などで経験を重ねてもらう。一方で、これらを通じて参加者の競技への適性も見ていく。
都内には全国レベルの障害者競技団体がある。こうした利点を生かして、都は各団体と連携しながら、20年大会に出場できるような障害者選手の発掘・育成を目指す。
日本パラリンピック委員会(JPC)は14、15年度にそれぞれ東京と関西の2会場で障害者アスリートの発掘イベントを実施し、各年度に計約100人ずつが参加した。ただ、いずれも1日のみの開催で終わり、体験会の色彩が強かった。その後も継続して活動している障害者はほとんどおらず、強化指定クラスの選手発掘や育成には至っていない。
都は今後、二つの都立の障害者スポーツセンターを活用したり、特別支援学校を練習拠点としたりすることを念頭に、発掘した選手の練習環境整備に向けて具体的な検討を進めていく。JPCも来年度以降、都とすみ分けて首都圏以外で競技人口拡大に向けた事業の開催を検討している。
◇ジュニアの強化環境が課題
障害者スポーツは、どの競技団体も組織が脆弱(ぜいじゃく)で、ジュニア層が練習を積んでも成果を披露する舞台が皆無という実態がある。東京都障害者スポーツ協会の尾崎真幸事務局長は「選手の発掘・育成にはジュニア向けの大会が必要」と指摘する。
ハード面でも、各地のスポーツ施設の多くでバリアフリー環境が整っておらず、障害者が利用できないという課題がある。
視覚障害者でパラリンピックの競泳で数々のメダルを獲得した河合純一・日本パラリンピアンズ協会会長は、都の発掘事業を「障害者がスポーツに親しめる機会が増えることは意義がある」と評価する。その上で「やはり利用しやすいのは家や職場の近くの施設。現在の環境や仕組みを変えていくことが大切だ」と話している。
【ことば】2020年東京パラリンピック
2020年東京五輪閉幕後の8月25日〜9月6日に開かれ、初採用のテコンドーとバドミントンを加えた計22競技が実施される。出場者は視覚を含む身体障害者が中心で、12年ロンドン大会に続き、水泳など知的障害者が出られる競技もある。第1回大会は1960年にローマで行われ、東京では64年大会以来の開催。同一都市で2度パラリンピックが開かれるのは東京が初めて。聴覚障害者は別の大会がある。
今夏に東京都障害者総合スポーツセンターで行われた日本パラリンピック委員会のアスリート発掘イベント
2015年11月13日 毎日新聞