人材確保期待も通年雇用課題 23日、意見交換会
北陸3県で、障害者や発達障害のある人の雇用や就業訓練に農業を活用する取り組みが広がりつつある。農業を支える人材の確保や地域活性化が期待されるが、課題も浮かび上がってきた。
金沢市街から湯涌温泉に向かう道沿いに、ブルーベリーと野菜の畑一・五ヘクタールがある。発達障害者に就労機会を設けようと、二〇一二年四月にオープンした「金沢ちはらファーム」の農場で、二十代と三十代の男性二人が働く。
この時期はナスやハクサイの収穫のほか、千二百本ある果樹の枝切りで午前九時から午後三時まで働き、時給で賃金を得ている。雪で覆われる冬場は、果物チップや切り干し大根の加工に携わる。
農場を運営する前田泰一代表は「時間と手間がかかる作業の繰り返しは、障害がある人に向いている」と考えるが、「土汚れや虫が苦手な人には向かず、コミュニケーション面で地元に溶け込むのは容易ではない」と指摘する。
厚生労働省などによると、障害者の農林漁業への就職は、一三年度に全国で二千七百二十八件。この五年で五倍ほど増えた。北陸三県では、富山が前年度比十四件増の二十七件、石川が五件増の十四件、福井は二十六件増の四十件で増加傾向にある。
就労形態は主に、福祉事業所が農作業や農産物加工に乗り出すか、それらの業務を受託するケースのほか、農業法人が職場実習や社会適応訓練で受け入れるケースに分かれる。
北陸農政局のアンケートでは、福祉事業所の四割が農業活動を取り入れていて「心身への効用が大きい」「作業内容が適している」と評価する。
一方で、農業関係者は「障害者に適した作業の確保」「指導者不足」といった課題を挙げる。稲作が主体の北陸地域では機械作業が多く、通年での雇用が難しい面もある。経営の厳しさから農業法人の受け入れは全体の一割に満たず、地域からの要請で雇用しているのが現状という。
農政局は「雇用件数が伸びている一方で、福祉事業所と農業関係者の認識に相違があることが明らかになってきた」と分析。雇用補助金など制度面で支援するほか、昨年十一月に設立した関連十七団体のネットワークが意見交換するセミナーを今月二十三日に金沢市内で開く。
ブルーベリー園で作業する男性と話をする前田代表(左)=金沢市茅原町の「金沢ちはらファーム」の農場で
2014年7月19日 中日新聞
北陸3県で、障害者や発達障害のある人の雇用や就業訓練に農業を活用する取り組みが広がりつつある。農業を支える人材の確保や地域活性化が期待されるが、課題も浮かび上がってきた。
金沢市街から湯涌温泉に向かう道沿いに、ブルーベリーと野菜の畑一・五ヘクタールがある。発達障害者に就労機会を設けようと、二〇一二年四月にオープンした「金沢ちはらファーム」の農場で、二十代と三十代の男性二人が働く。
この時期はナスやハクサイの収穫のほか、千二百本ある果樹の枝切りで午前九時から午後三時まで働き、時給で賃金を得ている。雪で覆われる冬場は、果物チップや切り干し大根の加工に携わる。
農場を運営する前田泰一代表は「時間と手間がかかる作業の繰り返しは、障害がある人に向いている」と考えるが、「土汚れや虫が苦手な人には向かず、コミュニケーション面で地元に溶け込むのは容易ではない」と指摘する。
厚生労働省などによると、障害者の農林漁業への就職は、一三年度に全国で二千七百二十八件。この五年で五倍ほど増えた。北陸三県では、富山が前年度比十四件増の二十七件、石川が五件増の十四件、福井は二十六件増の四十件で増加傾向にある。
就労形態は主に、福祉事業所が農作業や農産物加工に乗り出すか、それらの業務を受託するケースのほか、農業法人が職場実習や社会適応訓練で受け入れるケースに分かれる。
北陸農政局のアンケートでは、福祉事業所の四割が農業活動を取り入れていて「心身への効用が大きい」「作業内容が適している」と評価する。
一方で、農業関係者は「障害者に適した作業の確保」「指導者不足」といった課題を挙げる。稲作が主体の北陸地域では機械作業が多く、通年での雇用が難しい面もある。経営の厳しさから農業法人の受け入れは全体の一割に満たず、地域からの要請で雇用しているのが現状という。
農政局は「雇用件数が伸びている一方で、福祉事業所と農業関係者の認識に相違があることが明らかになってきた」と分析。雇用補助金など制度面で支援するほか、昨年十一月に設立した関連十七団体のネットワークが意見交換するセミナーを今月二十三日に金沢市内で開く。
ブルーベリー園で作業する男性と話をする前田代表(左)=金沢市茅原町の「金沢ちはらファーム」の農場で
2014年7月19日 中日新聞