北九州市で起きた「生活保護打ち切り」での餓死事件に対しての申し入れ書です。
2007年7月
北九州市餓死事件の真相解明と改善に向けた周知徹底を求める
7月10日、北九州市小倉区で男性(52)が自宅で孤独死していたことが新聞各紙で報道された。
<新聞報道等で明らかになっている経緯>
男性は肝臓の病気で通院、「病気で働けない」と生活保護を申請。12月26日から生活保護を受けることになったが、今春、事務所が病気の調査をしたうえで男性と面談し、「そろそろ働いてはどうか」と勧め、男性は「では、働きます」と応じ、生活保護の辞退届を提出。この結果、受給は4月10日付で打ち切られた。この対応について男性は日記に「働けないのに働けと言われた」などと記していた。1カ月ほど前に男性に会った周辺の住民によると、男性はやせ細って、「肝硬変になり、内臓にも潰瘍(かいよう)が見つかってつらい」と話していた。小倉北区役所の常藤秀輝・保護1課長は「辞退届は本人が自発的に出したもの。男性は生活保護制度を活用して再出発したモデルケースで、対応に問題はなかったが、亡くなったことは非常に残念」と話している。
同じ内部障害、慢性疾患をもつ当事者として、自分を死まで追い詰めていった心情、また追い込んでいった対応のあり方は、悔やんでも悔やみきれず、憤りを感じざるをえない。失われたのは尊い命である。北九州市では2005年(平成17年)と2006年(平成18年)にも保護が認められず、孤独死した事件が報じられている。生存権すら保障されない事件が起き続けている。「あってはならない」感覚が失われ、放置されることに慣れてきていないか危惧する。2度とこのような事件が、北九州市、又全国でも起きないように、このような結果を生じさせている原因の徹底した究明を求める。
<明らかにすべき点>
① 何故、実際の収入が保護基準を上回る以前に、生活保護を廃止にしたのか。例え、就労していたとしても、実際の所得が、憲法25条で保障されている、必要最低限の生活保護基準を下回る場合は、生活保護は継続される。又、保護基準以上の収入があっても、疾病等の理由で就労が安定しない場合等は、生活保護を廃止するのではなく、停止しその経過を見守ることは運用上明記されている。そのことの周知徹底、ケースワークはどのようにされていたのか。なぜ実際の収入もない状態で、辞退届けの手続きが行われたのか。
② どのような調査を行ったうえで、就労可能としたのか。事前に北九州市であった餓死事件では、健康状態において、保健師との意見の齟齬も生じている。就労可能と判断した根拠を明らかにすること。
③ たとえ働けたとしても、無理をした働き方をすれば、障害が悪化することは明らかである。肝機能障害等による稼得能力の減退といった、症状に合わせた働き方の指導はされていたのか。又、就職活動をしなさいとの指示だけでなく、厳しい雇用情勢の中、実際に職につくまでの支援はどのようになされていたのか。就職活動中も生活保護は継続されることの周知徹底はされていたのかどうか。
④ 現行の日本の福祉施策は、臓器別や疾病別に規定された対象要件がある。肝機能障害等の継続的な体力の制限、疲れやすさは同じ内部障害でも臓器や疾病が違うために勘案されることなく、様々な雇用施策の対象要件となっている障害認定も取れず、障害年金制度の対象にもなりにくい現状にあり、「福祉制度の狭間」にさらされている。生存権を保障する生活保護が唯一生活を成り立たせる最後のセイフティーネットとなっている現状である。このような制度上の不備を放置したまま、すべてを本人の努力不足、自己責任として、限度以上の労働を課すこと、又は実雇用にすら結びついていない、名ばかりの就労支援を口実として生活保護を打ちきることがどのような結果をもたらすかは、人の生活、命を扱う生活保護のケースワークを行うものとして最低限把握しておくべきことである。どのように認識していたのか明らかにすること。
⑤ 北九州市が説明するモデルケースとは何をさしているのか。このような事件がモデルケースとして全国に紹介され、同じような立場にある方々に繰り返されれば、人命におよぶ事件が多発しかねない。何をもってモデルケースと説明しているのか明らかにすること。
以上、保護記録の開示等をふくめた、徹底した原因の究明や問題のある生活保護行政のあり方の改善を求める。「失われてはならない命」が失われるようなことが、全国においても2度とあってはならない。そのためにも、北九州市だけでなく、生活保護行政をおこなう厚生労働省も、このような事態がおこっている原因究明を徹底して行い、改善すべき点の検証、同じようなことが繰り返されることがないように、指導の徹底と、福祉制度上の不備を早急に改正すること。
<申し入れ団体>
難病をもつ人の地域自立生活を確立する会
2007年7月
北九州市餓死事件の真相解明と改善に向けた周知徹底を求める
7月10日、北九州市小倉区で男性(52)が自宅で孤独死していたことが新聞各紙で報道された。
<新聞報道等で明らかになっている経緯>
男性は肝臓の病気で通院、「病気で働けない」と生活保護を申請。12月26日から生活保護を受けることになったが、今春、事務所が病気の調査をしたうえで男性と面談し、「そろそろ働いてはどうか」と勧め、男性は「では、働きます」と応じ、生活保護の辞退届を提出。この結果、受給は4月10日付で打ち切られた。この対応について男性は日記に「働けないのに働けと言われた」などと記していた。1カ月ほど前に男性に会った周辺の住民によると、男性はやせ細って、「肝硬変になり、内臓にも潰瘍(かいよう)が見つかってつらい」と話していた。小倉北区役所の常藤秀輝・保護1課長は「辞退届は本人が自発的に出したもの。男性は生活保護制度を活用して再出発したモデルケースで、対応に問題はなかったが、亡くなったことは非常に残念」と話している。
同じ内部障害、慢性疾患をもつ当事者として、自分を死まで追い詰めていった心情、また追い込んでいった対応のあり方は、悔やんでも悔やみきれず、憤りを感じざるをえない。失われたのは尊い命である。北九州市では2005年(平成17年)と2006年(平成18年)にも保護が認められず、孤独死した事件が報じられている。生存権すら保障されない事件が起き続けている。「あってはならない」感覚が失われ、放置されることに慣れてきていないか危惧する。2度とこのような事件が、北九州市、又全国でも起きないように、このような結果を生じさせている原因の徹底した究明を求める。
<明らかにすべき点>
① 何故、実際の収入が保護基準を上回る以前に、生活保護を廃止にしたのか。例え、就労していたとしても、実際の所得が、憲法25条で保障されている、必要最低限の生活保護基準を下回る場合は、生活保護は継続される。又、保護基準以上の収入があっても、疾病等の理由で就労が安定しない場合等は、生活保護を廃止するのではなく、停止しその経過を見守ることは運用上明記されている。そのことの周知徹底、ケースワークはどのようにされていたのか。なぜ実際の収入もない状態で、辞退届けの手続きが行われたのか。
② どのような調査を行ったうえで、就労可能としたのか。事前に北九州市であった餓死事件では、健康状態において、保健師との意見の齟齬も生じている。就労可能と判断した根拠を明らかにすること。
③ たとえ働けたとしても、無理をした働き方をすれば、障害が悪化することは明らかである。肝機能障害等による稼得能力の減退といった、症状に合わせた働き方の指導はされていたのか。又、就職活動をしなさいとの指示だけでなく、厳しい雇用情勢の中、実際に職につくまでの支援はどのようになされていたのか。就職活動中も生活保護は継続されることの周知徹底はされていたのかどうか。
④ 現行の日本の福祉施策は、臓器別や疾病別に規定された対象要件がある。肝機能障害等の継続的な体力の制限、疲れやすさは同じ内部障害でも臓器や疾病が違うために勘案されることなく、様々な雇用施策の対象要件となっている障害認定も取れず、障害年金制度の対象にもなりにくい現状にあり、「福祉制度の狭間」にさらされている。生存権を保障する生活保護が唯一生活を成り立たせる最後のセイフティーネットとなっている現状である。このような制度上の不備を放置したまま、すべてを本人の努力不足、自己責任として、限度以上の労働を課すこと、又は実雇用にすら結びついていない、名ばかりの就労支援を口実として生活保護を打ちきることがどのような結果をもたらすかは、人の生活、命を扱う生活保護のケースワークを行うものとして最低限把握しておくべきことである。どのように認識していたのか明らかにすること。
⑤ 北九州市が説明するモデルケースとは何をさしているのか。このような事件がモデルケースとして全国に紹介され、同じような立場にある方々に繰り返されれば、人命におよぶ事件が多発しかねない。何をもってモデルケースと説明しているのか明らかにすること。
以上、保護記録の開示等をふくめた、徹底した原因の究明や問題のある生活保護行政のあり方の改善を求める。「失われてはならない命」が失われるようなことが、全国においても2度とあってはならない。そのためにも、北九州市だけでなく、生活保護行政をおこなう厚生労働省も、このような事態がおこっている原因究明を徹底して行い、改善すべき点の検証、同じようなことが繰り返されることがないように、指導の徹底と、福祉制度上の不備を早急に改正すること。
<申し入れ団体>
難病をもつ人の地域自立生活を確立する会