風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

男ぎらい

2010-06-19 09:03:33 | 猫および動物
 風子ばあさんは男が嫌いである。
 男は黙って……、という古いコマーシャルがあったが、あれは、高倉健がやっているから、さまになるのである。

 うちのじいさんが、仏頂面で黙っていれば、さてはまた頑固な便秘かな、としか思わない。
 ペラペラ喋るのはなお悪い。

 ばあさんは、やっぱり女どうしで喋るのが好きである。
新しい服に気がついてくれるのも、美味しい店を探してくれるのも女どうしなのである。
 
 ばあさんには息子はいるが、娘はいない。
姉妹も遠い。猫でもいいから女がほしい。

 だから、猫を飼うなら、メス、と決めていた。

 野良猫が生んだ数匹の中から、一匹だけ引き受けるとき、メス、メスと言ってタマを貰った。
タマなんて名前でなくて、もっと女っぽい名前、たとえば朱里ちゃんとか、すみれちゃんとかつけたかったのだが、うちの不粋なじいさんが、猫なら、タマだと言い張った。

 それで、ばあさんは、仕方ないから、タマ子姫と呼ぶことにした。
動物病院のカルテにも、そう書いた。

 何度か、診察を受けたが、十数年生きた最後の最後になって、獣医さんが、あれっと言った。
この猫、オスでしたかね?
 いえ、メスですけど。
 いやあ、去勢はしてあるけど、これってオスですよ。
獣医さんは、ほらあ、と毛をかきわけて痕跡を示した。 

 十数年、女の子のつもりで可愛がったタマ子姫は、最後にオスになって昇天した。
風子ばあさんはよくよく女の子に縁がないのである。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿