風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

動物の涙

2010-05-28 12:20:44 | 猫および動物
 野良あがりの犬を飼ったひとの話である。

 ひどく行儀が悪く、さんざん手こずらせたあげく、飼い主夫人を押し倒して怪我をさせたという。
家族が集まって対応を話し合い、可哀想だが、こうなったら、もう、役所で処分してもらうしかないという結論に達したそうである。

 ところが、話が終わってひょいと見ると、いつもやんちゃなこの犬が、窓の方を向いてぼうっとしている。
 どうも肩のあたりが震えているようなので、覗き込んだら涙をぽろっとこぼしたという。

 うちのお隣の奥さんは宇和島の出身だが、女学生のころ、近くに場があり、引かれて行く牛に何度も出会ったそうである。
 牛は涙をいっぱいためて歩いていて、それを見てきたので、奥さんは今も牛肉は食べないという。

 我が家の老猫を獣医さんに連れていき、受付で、年寄りだから、もう長くないと思いますけどと言ったら、受付嬢が、シッと唇に指をあて、聞いてますよ、と猫のほうを見た。
 艶を失った目のふちに、猫はいっぱい涙をためてうなだれていた。

 宮崎県で発生した口蹄疫で、おびただしい数の牛や豚が殺処分されている。
人は罪深い生き物だと思うことしきりである。


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