風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

マナーモード

2010-06-18 11:46:29 | 時事
 最近はさすがに、コンサート会場や講演会で携帯電話が鳴りだすようなことは少なくなった。
たいがいの人は、電源をお切り下さいと言われても、マナーモードにしておく。

 今日、長く患った末に亡くなった知人の通夜の席に座った。
故人および、遺族の人徳だろう、参列者の多い立派な式だった。

 時間ぎりぎりで駆けつけた風子ばあさんは、会場の一番後ろ、廊下側に着席した。
おごそかなお経が続く中、やがて、しんと静まった会場から、地虫でも鳴くように、ブルルル、ブルルとマナーモードの振動音が聞こえてきた。

 どうやら、風子ばあさんの二、三列前方の席のようだ。
受けた本人は、気になるから、あたりに気がねをしながら、そっと携帯をのぞいているらしい。
 携帯は、開くときは音がしないが、それを閉じるときは小さく、カチリと音がする。

 気の小さい風子ばあさんは、はらはらするのである。
遺族の耳に聞こえはしないか、一心にお経をあげている導師様の耳障りにならないだろうか、と。
 
 やがて、お経を終えて導師様、退場。

 ばあさんの席からは廊下が見える。
見るともなく見ていると、前方の扉から出てきた導師様、すぐに腰のあたりを探り、歩きながら、携帯を取り出して確認しているのである。

 ひょっとして、お経の途中で、導師様にも、ブルル、ブルルと振動音があったのかもしれない。


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