丸元淑生といえば、著名な料理研究家として記憶されている方が多いだろう。
2008年に74歳で亡くなっている。
「丸元淑生のシステム料理学」など著書も多数あり、
たびたびテレビ出演もしている。
しかし、彼の小説を読んだ人はそう多くはないだろう。
1978年「秋月へ」と1980年「羽ばたき」で、二度芥川賞候補になっている。
「羽ばたき」のときは、最終候補として村上春樹の名もあるが、
結果は該当作なしの佳作として「羽ばたき」が文芸春秋に掲載された。
選評を見ると、受賞に一番近かったのがこの作品であることを窺わせ、
もし、このとき受賞していたら、彼のその後の人生も違うものになっていたかもしれない。
昨日、その昭和55年の文芸春秋を押し入れに見つけた。
彼が作家として残した数少ない作品を惜しんで、古雑誌を大事にしまっていたのだろう。
二人の息子のいる家庭がありながら、別の女性にも娘を産ませ、
行ったり来たりの果てまでを書いている。
相撲取りになった息子のことはさわやかだが、情人のことは余計という選評が多かったが、
私はこの男のおかしさも哀しみもよく描けていると読んだ。
最近の芥川賞作品なんかより、ずっと面白く、引き込まれたのは
私が古い人間だからかもしれない。
どうも、このごろの小説には切実さがないような気がしてならない。
耄碌ばあさんは、読むハシから忘れるので、
備考録のつもりで
「ばあばの読書録」というブログをべつに設けていたのだが、
ものぐさばあさんは、それも続かなかった。
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