バスに乗ったら、空席があるのに高齢の男性がこちらに背を向けて立っていた。
立ってはいるが、後ろ姿からして、どこか不自由そうな気配が漂っていた。
次の停留所で、彼は降車するのに、あちこちつかまりながら移動した。
片手はどこかにつかまっていないとよろけるらしい。
胸のポケットからバスカードを出そうとするが、片手なのでうまくいかない。
ずいぶんと時間がかかる。
お手伝いしましょうか、と言おうかどうしようかと迷う。
多少の障害があっても自立したい人もいるだろう。
急かされずにゆっくり気長に待ってくれと思うかもしれない。
それにしても時間がかかった。
運転手さんも待ち長かったのだろう。
ようやく、彼がバスカードをタッチして下りると、すぐにドアを閉めた。
閉めたが、またすぐに開いた。
風子のところから降車場所は見えない。
前方に座っていた若い女性が、すっと立ち、慌てた様子で下りていった。
続いて運転手さんも下りて様子を見ている気配だった。
「うるさい! かまうな」
呶鳴り声がして、運転手さんと若い女性が戻ってきた。
バスが動きだした。老人が道路に倒れ横たわっているのが見えた。
先ほどの女性がまた立ちあがった。
もう一人の女学生も立ち上がった。
もう一人ものびあがって振り向いた。
「あなた、一緒に介抱してくれます? わたしも下ります」
バスは次の停留所まで走ったが、三人の若い女性が声を掛け合いながら下りると、
小走りになってあと戻っていった。
いまどきの若いもんは……というが、いまどきもまんざら捨てたものではない、と風子は安堵のため息をついた。
立ってはいるが、後ろ姿からして、どこか不自由そうな気配が漂っていた。
次の停留所で、彼は降車するのに、あちこちつかまりながら移動した。
片手はどこかにつかまっていないとよろけるらしい。
胸のポケットからバスカードを出そうとするが、片手なのでうまくいかない。
ずいぶんと時間がかかる。
お手伝いしましょうか、と言おうかどうしようかと迷う。
多少の障害があっても自立したい人もいるだろう。
急かされずにゆっくり気長に待ってくれと思うかもしれない。
それにしても時間がかかった。
運転手さんも待ち長かったのだろう。
ようやく、彼がバスカードをタッチして下りると、すぐにドアを閉めた。
閉めたが、またすぐに開いた。
風子のところから降車場所は見えない。
前方に座っていた若い女性が、すっと立ち、慌てた様子で下りていった。
続いて運転手さんも下りて様子を見ている気配だった。
「うるさい! かまうな」
呶鳴り声がして、運転手さんと若い女性が戻ってきた。
バスが動きだした。老人が道路に倒れ横たわっているのが見えた。
先ほどの女性がまた立ちあがった。
もう一人の女学生も立ち上がった。
もう一人ものびあがって振り向いた。
「あなた、一緒に介抱してくれます? わたしも下ります」
バスは次の停留所まで走ったが、三人の若い女性が声を掛け合いながら下りると、
小走りになってあと戻っていった。
いまどきの若いもんは……というが、いまどきもまんざら捨てたものではない、と風子は安堵のため息をついた。