肌寒くなってきたので、ちょっと重ねる薄物を買った。
店頭でマネキンが着ていたのは、色がイマイチなので、そう言うと、
「グレーの素敵な色をお取り寄せできます」という。
予算よりちょっとオーバーするので、思案していると、
「パリ製です、パリからのお取り寄せになります」 とのこと。
ならば、少々お高くつくのもやむをえんねえ、
ということで後日受け取りにいった。
家に帰って広げたら、
ミシン目は雑だし、ピンク色のチャコあとは消えていないし、
ひどいもんだった。
これで2万円とは、ぼったくりに近い。
なにが、パリ製ね、と腹立ちまぎれに
タグを見たら、やっぱりメイド・イン・パリとは書いてある。
そうだねえ、パリも広いもんねえ、裏街の小部屋で、
どこかの国の移民か難民かが、安い手間賃で縫いあげたものかもしれない。
縫い目の印のチャコは、洗っても消えないけど、
お針子さん、いまごろ少しは上手になったかしら……。
メイド・イン・パリ。
パリの空の下にもいろいろ事情がある。
あまり不満を言ったらバチがあたる。
海の向こうに思いをはせて、大事に着ることにしよう。