風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

親友宅

2011-09-07 23:45:09 | 友情
   一人暮らしの友だちがいる。
  訪ねればいつでも歓待してくれる。
  しかし、行けば長居になるので、訪問には覚悟がいる。

   ついついご無沙汰をしてしまうが、
  今日は近くまで行ったので、寄り道をしてみた。

   案の定、よく来たよく来たと大歓迎をしてくれた。
  挨拶もそこそこに、
  「どうしてた?」と風子。
  「それがねえ、この家を売ろうかと思ってんのよ」
 
  のっけから、話題には事欠かない。

  「売ってどうすんのよ」
  「娘のとこ、行こうかと思って」
  「やめとき、やめとき」
 
   ところでね……、話はコロコロかわる。
  「足が痛まない靴を買ったのよ」
  「どらどら見せて」
 
   靴の品評のあとは一転、読書の秋。
  「本を整理してたらね、田山花袋や藤村が出てきたの、
  だけど、読み直したら、あのころなんで感動したんだろうって……ちょっと古いね」
 
   二転三転、話はあっちへこっちへ行き、
  気がついたら電気を点けるのも忘れて、辺りは薄暗くなっていた。

   神戸の娘のとこなんか、行くなよ。
   寂しくなるじゃないか。
コメント
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