家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

ローコスト住宅

2005年07月14日 | 我が家のスペシャルな事情
 家を建てるにあたってローコスト住宅のことが頭をよぎったが、案外早い段階であきらめた。ローコスト住宅を目指す時に覚悟することは何か、という観点で考えたとき、私の場合、大きな項目で覚悟できないものが多すぎた。
質と価格の見合いとしてのローコストは実現できなくもなかっただろうが、建築費用総額という絶対値的な観点でロープライスは実現困難と考えた。
以下、思考のポイント。

1. 家の広さをどのくらいにするか
 当然、広い家は狭い家より建築費がかかる。ローコストはともかくロープライスは不可能に近い。
→我が家は6人家族であり、しかも親夫婦と同居というスタイルである。それぞれの距離を調整できる広さは必要だった。

2. 家の寿命をどのくらいと想定するか
 例えば、30年くらいしたら建て替える、と考えるならローコスト住宅でも問題ないように思う(短期間にゴミを大量に出すという別の問題はあるが・・・)。しかし50年以上ガタがこないようにしたいと考えるのならば、構造のグレードは高くしなければなるまい。
→私はできることなら、(リフォームしながら)100年くらいは持たせたいと思っている

3. 家の中での快適さの性質・レベルをどう考えるか
 例えば真冬でもTシャツ1枚で過ごせる全館暖房の高高住宅にしたい、というような要望を持っているならば、断熱・気密にお金をかけるのは必然だ。
→これについては、我が家はそこまでの要望はなかった。今までの低気密・低断熱住宅より暖かければそれでいい、というレベル。

4. 各種設備・素材のグレードをどう考えるか
キッチン、バスなどの設備は上を見ればきりがない。自分が妥協できる水準のものはメーカーの商品ラインナップ上のどのあたりにあるのかを見れば、ローコスト志向をどこまで貫けるか推し量ることができそうだ。また、自然素材といわれるものを多用したいと考えるならばローコストにはなりにくい。建材そのものも総じて高めだし、工賃も高くなる。
→設備は妥協できそうだったが、素材は後々の風格への期待から自然素材にするのは譲れそうになかった。

5. 施主サイドの労働をどう考えるか
 例えば一部資材の仕入れを施主自らがやって価格を抑えることは不可能ではない。ただし、仕入先を探し、交渉するという労力がかかる。プロ同士の商取引を上回る割安なルートを作るのはそれなりの労力が必要になるだろう。さらに工程に合わせた納期の管理にも労力はかかる。
 また、工事の一部を施主が受け持つということでコストを低減するのは可能。たくさんやればそれだけコストは落とせる。ただし、その部分が多すぎれば、工務店側は施工の保証(例えば10年保証)はしないだろう。究極はセルフビルドだ。施工の責任をすべて自分が背負う分、安くなる。
→我が家はセルフビルドで、すでにコストをかけずにログハウスを建てていた。道具もそろっていて普通の家族よりは自分達でやれることは多かった。しかし、むしろ山小屋があるがゆえに、住宅はプロの技で作ってほしかった。

6. こだわりや特殊要素をあきらめたり、打破したりできるか
 「ローコストにする」というこだわりを除けば、大抵のこだわりはコストアップにつながる。デザインはあまり凝ってはいけない。そして、できるだけ世の中に大量に出回っていて価格競争の激しい部材を使うことを考えるべきであって、稀少品、特注品が多いほどローコストでなくなる。
→「残す古屋とデザイン的におかしなくっつき方をしない」というのがそもそもの家づくりのコンセプトなので、デザインは軽視できなかった。構造材でも合板や集成材をできるだけ使いたくないというこだわりを捨てられなかった。


 3と、4の一部、5での妥協を除くと、我が家の場合、ローコストとは明らかに相反する方向性を持っていた。この考えのままでローコスト(ロープライス)にしたら、どこかに相当な無理がかかり、とんでもない建物ができるリスクが大きくなると想像できた。

 結果、値段なりの価値のある仕事・素材でやってもらうということを重視し、その確実性を担保するために信頼できる建築家・設計事務所、工務店を探した。

我が家は少なくとも安いものを高く買ったりするようなことにはなっていないはず。いわゆるローコスト住宅ではないものの、もし今後100年持ったならば、ローコスト住宅といえるかもしれない。