家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

ポストイットホルダー付きIDカードホルダー

2008年06月29日 | レザークラフト


                           
    
ここのところの極私的製品開発において「ポストイットもの」が多くなっている(※1)が、またしても「ポストイットもの」を思いついたので、製作した(※2)。

題して
「ポストイットホルダー付きIDカードホルダー」

「開発」に至る経緯はこうだ。
ポストイットをハードに使うある業務向けのホルダーを作ることを想像していたところ、ネックストラップをつけて持ち歩いたら便利そうだ、というアイディアが浮かんだ。
よく考えたらこのアイディアは汎用性があって、自分の職場環境でも応用できる。
職場環境とネックストラップに絡んですぐに思い浮かぶのはIDカードである。
最近は企業のセキュリティ意識が高まっていて、オフィスに入るのにIDカードが必要となっているところが多い。私の職場もそうだ。オフィスに着いて帰宅するまでIDカードをネックストラップ付きのホルダーに入れて首からぶら下げている。
そこで、IDカードホルダーにポストイットホルダーを兼務させてしまえばいい、と思いついた。
メモツールとして、自作の「ポストイットホルダー」とか「DAIGOすぐメモホルダー」などを持ち歩いているのだが、社内に居る時間はいつも持ち歩くIDカードと一体化していればそれだけ持てばいい。


これまで使用してきたのは会社から支給されたチンケなIDカードホルダーだ。
ずいぶん前にfinziさんがブルックリンのかっこいいIDカードホルダーを紹介しているのに刺激され、いずれレザークラフトで自作しようと考えていた。
これまで作らなかったのは単純な構造のものしか思い浮かばず、極私的製品開発の醍醐味であるオリジナリティが出しにくくて、いまいち乗り気にならなかったためである。
しかし、ポストイットホルダーを兼ねるという案を思いついたことで、俄然創作意欲が高まったという次第。

仕様を検討し、以下のような要件とした。
・ IDカードが見える窓があること(あたりまえ)
・ IDカード類は3枚収納する
・ 75mm×25mmのポストイットを格納する
・ ペンを持ってないときにも使えるようWalkie penも格納する
・ 首にかけたままメモしやすいようネックストラップには伸縮するリール式のツールをつける
・ 単純なポストイットホルダーに比べると厚く・重くなるが、それを極力抑える

厚みは10mm以下、できれば8mm程度を想定。
そのために、
・ ポストイットは20-30枚程度の格納にとどめる
・ ポストイットを貼り付ける土台は塩ビシートなどを用いずに、IDカードそのものを土台とする
というような工夫をした↓。
       

そのほかの工夫もある。
定期入れなどでよくあることだが、革の部分はなんともないのに、「窓」に用いた透明なシートが傷ついたり、劣化して割れたりして使えなくなることがある。それを防ぐために、「市販の透明ホルダーに入れて、それごとカードホルダーに格納する」という入れ子構造とした。

    

これで透明ホルダーが劣化しても、それを交換すれば済む。透明ホルダーは数十円で購入できる。
この製品名を正確にあらわすとこうなる↓

 伸縮リール付きネックストラップ型「(IDカード+透明ホルダー)ホルダー+ポストイットホルダー+ペンホルダー」

 「ホルダー馬鹿」万歳!


<使い方>

こんなふうに伸ばして
    
    
メモを取りたいときはひっくり返して
    

スナップをはずして開く
    



※1
例えばコレ↓
http://blog.goo.ne.jp/garaika/e/3f5bd3c09bb2374a7aac325d88d0b9f8

※2<おまけ>
実は他にも多々「ポストイットもの」を思いついている。
それらは、ポストイット以外の要件の検討が煮詰まっていない、必然性に乏しい、などの理由で「開発」に至っていない。
その中の一例↓
「ポストイットホルダー付きフリスクケース」
・ 企画意図
 フリスクフリークはいつもフリスクを持ち歩いている(関連エントリLINK)。フリスクフリークの中にはポストイットを業務で駆使しているひとも多いだろう。その場合、フリスクケースと75mm×25mmのポストイットホルダーを合体してしまえば一石二鳥だ。
・ 停滞理由
(1) 私はそこまでのフリスクフリークではない(笑)
(2) ポストイットとフリスクが、タテ並びがいいか横並びがいいか決めかねている


三角窓と省エネ

2008年06月21日 | 家について思ったことなど
我が家が購入した新車にはサイドウインドウの前部に小さな三角形の窓がある。
これを見ていて、前世代のクルマにかつて標準装備されていた「三角窓」の存在を思い出した。

新車の三角形の窓はフィックスしていて開け閉めできないが、かつての「三角窓」はクルリと回転させて外の風を取り込むことができた。角度によってたっぷりと風を受けることも出来るし、弱めることも出来る。
前世代のクルマではエアコンが装備されていなかったがゆえにこうした工夫がなされていた。
その後エアコンが標準装備され、車内環境をエアコンに依存するようになり、むしろ密閉性を高めるために開閉できる三角窓が排除されていった。工程や部品を少なくしてコストを下げる目的もあっただろう
省エネの観点からいうと、この三角窓は残しておくべきではなかったかと思う。これがあったら、エアコンを稼動させる時間を減らせるからだ。頭の方にしっかり風が受けられればエアコンをつけなくともよいという状況は少なくない。

私はクルマから三角窓が消えたようなことが住宅に関しても起きているように思う。
機械的空調に頼るシーンが増え、断熱性能と気密性能の重要度が増した。断熱・気密性能を高めることばかりに目が向かい、その分、通風性能がないがしろにされている。
気密性能を示すC値でいい数値を出すためにフィックス窓を多くした家なんてこともあるようだ。
クルマにしろ住宅にしろ、性能を高めることは総じていいことだが、その一方でいつのまにか別の性能が低下するのは考え物だ。

断熱・遮熱性能が高く、なおかつ風通しのいい家なら、エアコンを使わなくていい日や時間を増やせる。
エアコンを使うことを前提に、効率的にエアコンを稼動させる工夫もいいが、エアコンに頼らない時間も増やす。
省エネの工夫ってそういうことではないだろうか。

温暖化対策で省エネ性能の高い住宅を優遇するのはいいが、どんな住宅であっても実際に省エネな生活をしている人だって優遇するような策も考えるべきだと思う。
本気で省エネに取り組むのなら、期待より結果に重点を置いた方がきっといい成果につながるだろう。

クルマを買い換える

2008年06月20日 | 家について思ったことなど
 
15年以上使っていた妻のクルマをこの度、買い換えた。新車といってもどこにでも走っている大衆車で、とりたてて自慢するようなものでもないため、新車用に作ったオリジナルのキーホルダーだけ写真で見せておく(笑)。


さすがに今度のクルマは前のクルマより燃費がいい。
原油価格、ガソリン価格が高止まりしている現在、燃費がいいことは非常に助かる。

ただ前のクルマが最新のクルマと比べて燃費が悪かったことが買い替えの主たる理由というわけではない。そんな理由だったらもっと早く乗り換えていただろう。
いろいろなところにガタがきていて、総合的な判断から決めたことである。
前のクルマの歴史は、実は私達夫婦の歴史とほぼ同じ長さでもあった。本当のところを言うと、長年使用した前のクルマには愛着が生まれていて、できることならまだ使い続けたいという気持ちがあった。
新車と引き換えに前のクルマを置いてくるとき、「長いことありがとう」と車体に手を触れて感謝の意を伝えた。旧宅を解体する直前と似たような気持ちになった。

思い出の存在は、残したいという気持ちにつながり、モノの寿命を長くする。そんなことを以前も書いた(LINK1 LINK2)。頑丈であるとか、高性能であるとか、省エネであるとかいうこと以上に長持ちさせる効果があるかもしれない。

m-loiusさんの名刺入れ――「超S、だけどM」なモノ

2008年06月15日 | レザークラフト

      

しばらく前に谷中M類栖のm-loiusさんから名刺入れの作成依頼が来た。
ちょうど名刺を新調したタイミングで、「Eさんの名刺入れ」を見て、名刺入れが欲しくなったという。
以前物欲がないとこぼしていたm-louisさんの物欲を刺激できたことは誇らしいことであり、こころよくお受けした。
それがこのたび出来上がったので紹介する。

<名刺入れの要件>
・ヌメ革を使用
・2つ折で2つのポケット、計15枚ほど収納することを想定
・ステッチが"M"の字になるよう縫製する
・太めの糸を使用する

書いてみれば非常にシンプルな要件だが、これを決めるまで何回もメールでやりとりをしている。

名刺入れは単純な機能のものなのでオリジナリティを出しにくい。
いや、装飾を施せばいくらでもオリジナリティは具現できるが、私は装飾で勝負したいタイプではないので、苦心した。
その結果オリジナリティを出すために「"M"の字ステッチ」というシンプルな装飾をすることで落ち着いた。
装飾といっても、"M"の字のうち、両側の"I"は必要不可欠な縫製部分であって、谷間のような"V"部分だけが装飾目的の部分である。
それに持ち主m-louisさんのイニシャル"M"を表しているので実用的な装飾なのである。そんなところに製作者のヘンなコダワリがある。

名刺入れで複数の選択肢があるのは、ポケットの「マチ」。
今回は革を湿らせて立体化する「ウエットフォーミング」という手法でマチを作った。↓
    

なぜその形にしたかというと、できるだけシンプルな構成にしたかったからだ。
その思惑は装飾の"M"の字の件とちょっとかかわっている。機能的には余分な縫製部分"V"の存在があったがゆえに、逆に「"M"以外にステッチが無い」というところまでステッチを簡素化したいと考えたのだ。
マチを別パーツにするとステッチが増えてしまうので、別パーツがいらない立体化形式にしたというわけ。結果、この名刺入れの型紙パーツはたった1つになった(※)。
"M"以外にステッチが無いことで、"M"が際立つ効果も出る。だから裏側も"M"にしてある。
m-louisさんにはこの製品のコンセプトを「超imple、だけど""」 と告げたのだが、上記のような意図があったわけである。「だけどド"M"」でもよかったが、くどいし下品になるのでやめた(笑)。

m-loiusさんが提示した要件には経年変化、つまりエイジングへの期待があった。だからヌメ革をそのまま使用した。無色のミンクオイルなどを擦り込んだだけである。今後、日焼けやm-louisさんの使用方法によって独特なモノに仕上がっていくはずだ。
家と同じく、使用者が育てるわけである。そういうモノの方が使用者も、製作者も、モノそのものにとっても、幸せなことだと私は思っている。

m-louisさんからは、名刺入れと同時に手帳用のペンホルダーも受注し、製作している。
これは、名刺入れの要件検討過程で、「名刺入れにペンホルダーをつけられないか」という想定外の要望が出てきたことに端を発する。
よく聞けば、m-louisさんが使用している手帳にペンホルダーが付いていないのでペンの収納場所がほしいということだった。
いくら名刺入れをオーダーで作るからといって、それにペンホルダーをつけるのは「渡りに船」とはいえない(「渡りに丸太」くらいのイメージ)。実際に使用するシーンを考えてもオススメできなかった。
で提案したのは、手帳にブックマークのように挟み込むペンホルダー。
市販品でもそのようなものがあることを知っていたので紹介した。↓
http://www.assiston.co.jp/?item=1542

これと同機能を持ったモノをm-louisさんの手帳サイズに合うように作ることになった。
そこでちょっとした思い違いが発生。m-louisさんは市販品のポケット機能が気に入ってしまったのだ。「このポケットがあれば名刺入れがいらないんじゃないか」と。
一方、私の方はペンホルダー機能のアイディアだけをいただき、ポケットを排除しようと考えていた。その理由は製品の厚みにある。
市販品のスペックでは厚さが2.5mm。文庫本サイズの大きめの手帳ならばその程度の厚みは許容範囲だが、m-louisさんの手帳は文庫本サイズよりスリムで薄いのだ。2.5mmもの厚みのあるものを挟み込むと使用時に不恰好になる。しかもポケットに名刺などを5枚も入れたら3.5mm以上になってしまう。
名刺入れ代わりにこれを用いることは製作者の立場から反対した。無理を言う施主とそれを諭す建築家の構図のようになった(笑)。
結局、名刺入れとペンホルダーは別々に作ることで落ち着いた。
しかし、m-louisさんがそこまでポケットを気に入ったことが頭にこびりつき、要望を何とかかなえられないかと熟考することになる。名刺2枚くらいなら何とか入るようなポケットがつけられないか、と。
そもそもは2mm以下の薄さにしたいと考えていたため、当初は0.8-1mm厚程度の革を張り合わせるように構想していた。それなら1.6-2mmほどにおさまる。
ポケットのないホルダーだったらそれでよかったが、ポケットに名刺を入れた上で2mm以下に収めるためにはもっと薄い革にしなければならない。
結局0.5mm厚という極薄の革を使うことにしたのだが、そうすると製品全体がぺらぺらになり、強度が不安だ。そこで、芯を入れることにした。ポストイットホルダーの台紙として使った塩ビシートなら0.3mm厚。0.5mm厚の革の2枚合わせにこれを芯に挟んでも計算上は1.3mmで済む。
残る課題はポケットの出し入れ口の位置である。市販品のように最上部に口をつけたならば、ポケット内の最下部に納まるであろう名刺は取り出しにくくなる。そしてポケットに指をつっこんだりすると、使っているうちに極薄の革が伸びて型崩れしてしまう。
いろいろと考えた末、ポケットの口は裏側の中間部に開口することにした。
結果、このペンホルダーの要件は以下のようになった。
・5mm径のミニシャープペンを格納する
・手帳にぴったりおさまるサイズとする
・色は手帳に合わせて黒
・名刺が2枚ほど入れられるポケットを装備
・こげ茶色のゴムバンドで手帳に固定する
・ゴムは劣化を考慮して取替え可能な構造とする(市販品は取替えできない)
・"M"のステッチを施す
・名刺入れと同じ糸を使用する

"M"のステッチで同じ糸を使用ということで名刺入れと兄弟っぽくしようという思惑である。
ただ、このチョイスは結果的に失敗だった。
極薄の革に太い糸という組み合わせになったことが無理につながり、ステッチが満足できる仕上がりにならなかったのである。結果論で言えば細い糸を使用すべきだった。
とはいえ完成させてしまったので、そうした欠点を指摘したうえで、お渡しした。
設計に問題があったというべきか、設計は良かったが施工者の腕が悪かったというべきか・・・。
住宅建築の現場で聞くような失敗談となってしまった。

    


製作にはさらにおまけ話があるというか、おまけそのものがある。
ペンホルダーの要件が固まり、一部の材料を購入しようと東急ハンズに出かけたとき、まったく別アイディアのペンホルダーが思い浮かんでしまったのだ。
それはついでに寄った文具売り場でプッチンクリップという商品を見かけたのがきっかけだ。
このクリップで手帳に固定するペンホルダーが作れそうだ、と。
実はクリップでノートに外付けするペンホルダー商品はいくつかある。
 スプリングペンクリップ↓
http://www.uniquestandards.com/item/2506-377.html
 トラベラーズノートのペンホルダー↓(ページの中ほどに掲示)
http://www.midori-japan.co.jp/tr/product/index.html

ただ、いずれも手帳から大きくはみ出す構造のため、m-louisさんの手帳用としては向かないとしてこの方式を採用しようとは思っていなかったのだ。
ところが、このクリップならば手帳に密着する形でセッティングが可能。
要件が固まった前述のペンホルダーを作ることはすでに決めていたが、このアイディアでも一つ作ってしまおう、うまくできない可能性もあるけれど、構造は簡単で革の使用量もちょっとで済む、クライアントの了承は特に必要あるまい、という判断をして製作したのだった。
    
でこれは注文外のおまけとして謹呈した。

今回のエントリは、実験的な試みとしてm-louisさんとほぼ同時に開示している。何を書くかは相談していない。
モノに対する依頼者と製作者の見方の違いや、イメージと現物の違い、依頼者と製作者の「化合」状況などがわかったら面白いと思う。
オーダーメイドのものづくりの過程は、オーダーメイドの家づくりとやはり似ている。
そういう意味で今回「建築家と施主ごっこ」を楽しんだと言えなくもないだろう。

    
         表題:「M類」なモノたち


※ Eさんの名刺入れはパーツが6ある。さらにパーツの多いものの例としては妻のバッグに関連したこのエントリ(LINK)を見てほしい。