家づくり、行ったり来たり

ヘンなコダワリを持った家づくりの記録。詳しくは「はじめに」を参照のほど。ログハウスのことやレザークラフトのことも。

歓迎できないパターナリズム

2007年12月22日 | 家について思ったことなど
「パターナリズム」 wikipediaより↓。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0
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パターナリズム(英:paternalism)とは、強い立場にあるものが、弱い立場にあるものに対して、後者の利益になるとして、その後者の意志に反してでも、その行動に介入・干渉することをいう。日本語では「父権主義」「温情主義」などと訳される。
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↑簡単に言えば、父親が子供に「テレビばっかり見てないで勉強しろ」って言う行為。一見正しいが、物事はそんなに単純ではない。例えば30過ぎた子供に「早く結婚しろ」って言うような介入になってくると状況は変わってくる。さらに…
別の部分の引用↓。
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国家と個人の関係については、国家が国民の生命や財産を保護する義務を負っているのは当然であるにせよ、少なくとも心身の成熟した成人に対する過剰な介入が、いわば「余計なお節介」であるとして批判が加えられている。
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耐震強度偽装問題も、食品の賞味期限偽装も、産地偽装も、しでかした人間と組織に最大の問題と責任がある。マスコミは政府を批判するのが大好きで、すぐに国の姿勢を話題にするが、いい加減にしてほしい。一部の不心得者による被害を防ぐために、国が過剰に介入しようという方向にもっていくのは賛成しかねる。結果的につまらないパターナリズムから役人を増強し税金が増えるだけだ。
だいたいマスコミの大騒ぎを受けて出てくる政策にはろくなものが無い。
耐震強度偽装問題を受けた対策で建築着工が急減するなんて、誰かが言っていたが「羹(あつもの)にこりて膾(なます)をふく」ということわざを適用する典型的な場面のようだ。ふく必要のない「なます」をふいて時間ばかりがかかっているわけだから。

不心得をしない人間が大多数なのに、すべての人間を対象に(不心得しないように)事前に国が手取り足取り指導するのはムダが多すぎる。せいぜい不心得者に対し、不心得をすると割に合わないことをわからせるように罰則を強化するだけでいい。

そもそものパターナリズムには、強者の弱者に対する「愛」という背景がある。それがたとえ「勘違いした愛」であろうとも。
マスコミには国に対する愛が感じられない。国民の不満を一面的に取り上げて政府叩きばかりに精を出す。だから別の視点からみた国民への「副作用」に言及できない。
マスコミが大騒ぎした結果、政府から出てくる政策にも国民への愛は感じられない。まるで老親が息子の嫁に、浮気した息子の「更正」を約束する発言のようで、愛というよりは哀。

そんな愛すらない勘違いから出来上がった規制強化に賛成したり、期待したりするのはよしませんか。

新幹線のダイヤ改正は損か得か

2007年12月21日 | 新幹線通勤
JR東海が来年3月15日に計画しているダイヤ改正を明らかにした。
http://jr-central.co.jp/co.nsf/news/nws20071220-111633

上記発表文から新幹線部分を見てみる。
《新幹線関係》
1.毎時2本の博多「のぞみ」のうち1本をN700系で運転するなど、N700系運転の列車を増やします。
2.朝夕の東海道・山陽直通列車をさらに8本増強します。
3.東京~広島間で「のぞみ」を毎時3本に増やし、東京駅を20分間隔での発着とします。
4.全ての列車を品川・新横浜停車とします。
5.「ひかり」の運行体系変更及び増発、増停車を行います。
6.「こだま」の増発及び区間延長を行います。

増発方向で、一見よさげなことばかりに見える。ただし、電車の運行において増発は遅延につながりやすい。それを念頭におきながら考えてみる。

新幹線通勤者にとって気になるのは4、5、6。
4で全ての列車を品川・新横浜停車とするとしているのは、5の「ひかり」の増停車のくだりを含んでいるとも考えられる。
懸念は、品川・新横浜で停車することのみをもってして「ひかり」の増停車と言っている場合だ。東京駅に近い駅で停車回数が増えるということは、小田原以遠の利用者にとって到着時間が遅延する可能性が高い。さらに品川・新横浜だけ停車回数が増え、利用駅での停車回数が増えないとしたら、うれしいことはまったくない。
6の「こだま」の増発はいいことだが、「のぞみ」「ひかり」の増発にともなって、各駅で「追い越され」回数が増えてやはり到着時間が遅延する可能性がある。

実際どうなるかは具体的なダイヤを見てみなければわからないが、もし上記のような懸念が現実化するのであれば、そういうこともちゃんと開示すべきだと思う。そして到着時間が遅延するデグレードが増発によるアップグレードを上回るのならば、小田原以遠の非「のぞみ」停車駅利用者に対する運賃値下げだって考慮してほしい。

懸念のまま終わることを祈る。


200年住宅を普及させる実効的な案

2007年12月11日 | 家について思ったことなど
これまで「200年住宅」に関連して何回かエントリを書いているが、本当に200年もつ住宅がこれから出てくるのか、実は疑問を持っている。
それだけの長期間にわたって品質や強度を保証する建材とか、工法とか聞いたことはない。
補修やリフォームがあってはじめて200年もつのではないか。
また、仮に優れた建材と補修を前提に長寿が保証されていたとしても、「新しいもの好き」という住人の意識が「建て替え願望」を呼び起こし、長寿命の障害になりそうなことは以前のエントリで指摘している。(関連エントリ LINK1 LINK2

したがって「200年住宅」と銘打った住宅が出てきても、実際に200年もつのかどうかあやしい。それなのに、普及を促進するために現時点で政府が打ち出そうとしているのは取得後数年の固定資産税の軽減策(関連エントリ LINK)。
これでは、「200年もたせることが可能な住宅」の普及には役立つかもしれないが、実際に長寿命住宅を増やすのには大きな効果はないように私は思う。

では効果的な普及策とはなにか。
私は、(本当にもつかどうかわからない)「200年(もたせることが可能な)住宅」の取得時の優遇策より、現実に「築100年を超えた住宅」に優遇策を導入した方が長寿命化への効果は大きいと考える。
例えば、築100年超の住宅が建つ土地の相続・譲渡・売買に関する税を軽減する、なんていうのはどうか。受け渡す側も受け渡される側も優遇する。
そうすれば、長くもたせることのメリットがはっきり伝わる。
現状の日本では、土地の価値を算定する場面で、そこに築年数の古い建物が経つのはマイナス要因に他ならない。築年数が古い上屋は資産価値も算定されないし、解体費用が余計にかかるという理屈が付加される。
ところが、古い建物が建つ土地は税制面で優遇されるとなれば、話が変わってくるはずだ。住宅の所有者が「残していた方がいい」と判断できるケースが増えれば、実際に残すようになる。
100年という区切りが長すぎるのなら、築60年くらいから、長ければ長いほど優遇率を高くするような傾斜をつけた税制にすればいい。

このような政策を導入した場合に問題となるのは、築年数を偽る輩があらわれかねないことだ。そこで、築年数を公的に保証する「家暦書」の整備が重要になってくるだろう。



アーリーアダプターになれない人、ラガードにもならない人

2007年12月02日 | 家について思ったことなど
その後、社会全般に普及するものも、出発点から爆発的に普及するわけではない。
いくつかの段階を経て普及する。それを分析したものに「イノベーター理論」がある。

<イノベーター理論>
米スタンフォード大学の社会学者、エベレット・M・ロジャース教授が1962年に提唱したイノベーション(革新的技術)普及に関する理論。商品購入の態度を新商品購入の早い順に五つに分類したもの。
その5分類は以下の通り。http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/earlyadapter.htmlより引用。
■イノベーター(革新的採用者)
冒険的で、最初にイノベーションを採用する
■アーリーアダプター(初期採用者)
自ら情報を集め、判断を行う。多数採用者から尊敬を受ける
■アーリーマジョリティ(初期多数採用者)
比較的慎重で、初期採用者に相談するなどして追随的な採用行動を行う
■レイトマジョリティ(後期多数採用者)
うたぐり深く、世の中の普及状況を見て模倣的に採用する
■ラガード(採用遅滞者)
最も保守的・伝統的で、最後に採用する

このうち、イノベーターとアーリーアダプターを合わせた層(全体の16%といわれている)を超えて広がるとその商品は普及し始めるという。
ただし、アーリーアダプターとアーリーマジョリティの間には「キャズム」という大きな溝があると言われていて、これを乗り越えるのは簡単なことではないとされている。これを越えられないとマイナーどまりで、そのまま消滅するものもある。

イノベーター理論で、現在の日本の戸建て住宅における様々な要素がそれぞれどのあたりの層に普及しているのか、勝手なイメージで分類してみる。

[外断熱]
 アーリーマジョリティ層への普及がはじまったのではないか。大手ハウスメーカーの大和ハウスが本格的に採用して売り出し始めている↓のがその理由。
http://www.daiwahouse.co.jp/jutaku/shohin/xevo/
[オール電化]
 アーリーマジョリティ層での普及と推定。言葉の認知度は高いがレイトマジョリティまでシェアをとっている感じはない。新築マンションの場合はレイトマジョリティ段階にさしかかっているかも。
[太陽光発電]
 アーリーアダプター段階か。省エネ意識の高まりで普及はしているが、初期投資の高さ、太陽電池寿命への懸念などで新築住宅の一部の採用にとどまっている。大きな屋根にしにくい都会などではそもそも普及に限界がありそう。
[集成材]
 木造系ハウスメーカーでは集成材の使用がほぼデフォルトといっていい。レイトマジョリティ段階と推定。
[プレカット]
 ラガード段階か。今や大半の新築住宅がプレカットなので、もはや「これにしました」ととりたてて表明する人は少ないだろう。

上記は、あえて我が家で採用していない要素を挙げてみた。
このように、最後まで(かどうかは断定できないが)購入しない/採用しない層というものもある。
上記項目は我が家が採用しなかったものの、客観的に考えればこれからまだ世の中に普及するだろうし、定着もしていくだろうと読んでいる。

100%といわずとも結果的に9割方の人が採用しているものを採用しなかったということになったら、採用しなかった人は、変わり者か、へそ曲がりか、もの好きか、先見の明がなかったか、特殊事情があったか、ということになるだろうか。
逆に、半数以下の普及にとどまるようなものだったら、別に採用しなかったことは特に問題はなく、好みの問題ということでかたがつくだろう。
さらに、ほとんどの人が採用しなかったものはいわゆる「コケた」商品というわけで、採用した人の方が気恥ずかしい思いをする可能性もある。

ちなみに、我が家がイノベーターであるかもしれないものだってある。
[IH調理器]
IH調理器は現在、アーリーマジョリティ層に普及していると思うが、我が家はなんと「IH」という前、「電磁調理器」といっていた時代に、テーブルタイプの「ジョイクック」(ナショナル)を購入した(さすがに初代ではないが)。IHは失敗の歴史でもあり、本格的普及期に入ったのは最近のことである。以下サイトで「IHクッキングヒーターの歩み」を年号に注意して読んでみてほしい。
http://panasonic.co.jp/corp/news/official.data/data.dir/jn031113-2/jn031113-2.html
[ビルトイン食器洗浄機]
 旧宅でキッチンをリフォームしたときにビルトイン食器洗浄機を導入した。10数年前のことである。関連エントリ→「食洗機それぞれ

上記2点は広く普及期に入っているが、我が家はこれらの普及のスピードアップに一役買った実感はないのでアーリーアダプターではなく、イノベーターではないかと思っている次第。

イノベーターよりアーリーアダプターの方が尊敬を集めやすい。
冒頭に紹介したサイトでは以下のように買いてある。
「革新性という点ではイノベーターが一番高いが、極めて少数であるうえに価値観や感性が社会の平均から離れすぎており、全体に対する影響力はあまり大きくない。それに対してアーリーアダプターは社会全体の価値観からの乖離が小さく、そのイノベーションが価値適合的であるかどうかを判断し、新しい価値観や利用法を提示する役割を果たす存在となる。」
実際イノベーターが購入したものの、先鋭的過ぎて普及しなかったなんて例は少なくない。その点アーリーアダプター層まで広がってくるとヒット商品になる確率が高まる。
ヒットしたあかつきには、普及初期に目立っていたアーリーアダプターが時代の先駆者のようにもてはやされるわけだ。アーリーアダプターはオピニオンリーダーといわれることもある。

ただ、イノベーターやアーリーアダプターの中には、自分が採用したモノが本格的に普及したとたんにつまらなくなってしまい、それを放り出して別のものに目を向ける人というのが少なからずいる。
プロダクトライフサイクルがそもそも短いものならアーリーアダプターにノせられても面白いが、住宅のようなプロダクトライフサイクルが長い(長くしたい)ものの場合はアーリーアダプターの発言・意図をよくよく噛み砕いて考えなければならないと思う。
アーリーマジョリティとレイトマジョリティあたりは、いわゆる普通の人。総じてこういう人たちが建てる家がその時代における無難な「普通の家」ということになるのだろうか。
ラガードは、なんやかんやと後ろ向きだったのに結局採用しているあたり、先見の明がなかったといわれてもしょうがないように思う。ただ視点を変えれば、そういう層にもまで広がったものは時代のメインストリームになったということができるかもしれない。
広く普及しているのにラガードにすらならなかった人は、良く言えば独特の信念を貫いている人、悪く言えば分からず屋の頑固者ということになろうか。

住宅にはいろいろな側面があるので、個々の住宅を見ても一律には語れない。部分部分で時代より早かったり遅かったりしているところがきっとある。
また、設計者、施工者の影響を受けつつも、施主それぞれに、時代に先行している部分や、時代の流れに乗っている部分、時代から遅れている部分があるだろう。そして、革新性を理解しながらもあえて時代の流れに乗ろうとしない部分、だってあると思う。
その点やっぱり「住人十色」ということなのだろう。




イノベーター理論については以下のページが分かりやすいかもしれない。
http://www.mitsue.co.jp/case/concept/02.html
http://www.jmrlsi.co.jp/menu/yougo/my02/my0219.html