ひまわり博士のウンチク

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アジア記者クラブ12月定例会 篠田博之氏

2013年12月14日 | アート・文化
 アジア記者クラブの12月定例会は「雑誌ジャーナリズムか生き残れるか」というテーマで12月12日、月刊『創』編集長の篠田博之氏を招いて行われた。
 『創』(つくる)は事象を逆の立場から見ることを試みたユニークな雑誌で、一般のジャーナリズムのように、出来事の外側からの視点ではなく、出来事の内側から社会を見る。
 たとえば、オーム真理教事件を例にとると、我々が目にする報道は警察側の視点に限られる。しかし、オウムの内側からの視点で観たとき、警察や一般大衆はまったく違って見えてくる。「警察が迫ってくる感覚」だという。
 宮崎勤死刑囚や林眞須美死刑囚からも直接インタビューをとり、彼らの側からの情報を伝える。
 
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 そういう雑誌が、「特定秘密保護法」の公布でどのような影響が出るのか、そういう話を期待していたのだが、そうならなかった。多くは、最近話題になっている「黒子のバスケ」問題と近年の雑誌の衰退についてだった。
 『黒子のバスケ』脅迫犯から創編集部に届いた手紙は、過去報道機関に送付したすべてが同封されており、マスコミが取り上げなかったら『創』で公表してほしいとあったという。
 『黒子のバスケ』脅迫事件とは、作者の藤巻忠俊や作品の関係先各所を標的とする一連の脅迫事件で、雑誌の連載やイベントの中止、関連グッズ販売の停止を求めて、マスコミ各社やグッズを販売するコンビニなどに脅迫状が届いた。脅迫目的に政治的な意図はほとんど見られず、藤巻に対する個人的な恨みか愉快犯のたぐいと見られている。
 ただ脅迫犯は雑誌『創』を結構愛読していると見えて「和歌山カレー事件の冤罪支援とか田代まさし擁護に比べたら風当たりも大したことないやろ」などと篠田編集長あての手紙にあった。
 『黒子のバスケ』事件の顛末は、『創』2013年12月号と2014年1月号に詳しい。動機がなんであれ、表現の自由に対する侵害であることに違いはない。
 
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 もう一つの大きなテーマは、雑誌の衰退である。出版界は全体的に不況続きであるが、中でも雑誌の発行部数減少は顕著である。週刊誌や月刊総合雑誌はかつて、新聞と書籍の中間に位置していて、緊急性と詳細を併せ持っていた。ところが、インターネットが普及するにつれ、それらの要素がともに意味をなさなくなってきている。すなわち、紙媒体としての雑誌の立ち位置が曖昧になっているということだ。(これはブログ筆者の意見)
 人々が新聞を読まなくなり、若年層を中心に活字離れが進んでいるとはいえ、書籍の販売部数は減って入るものの雑誌ほど顕著ではない。実は、書籍はその存在価値において、いまだ市民権を失っていないということだろう。
 総合誌では『文藝春秋』のみがやや黒字で、その他は軒並み赤字。岩波の『世界』も赤字だが、『世界』は岩波の看板雑誌であり、岩波書店が存続する限り廃刊にすることはないという。しかし、最近の『世界』には、岡本厚編集長の頃にくらべると鋭さがない。ちなみに、岩波書店の社長は『世界』の編集長から昇進する例が多い。
 それはともかく、将来的に雑誌が生き残るためには、既存の概念を覆すような発想が不可欠であろう。しかし、あくまで個人的な意見だが、『創』の逆転の発想はユニークではあるが、どれだけ読者に支持され続けるか、いささか首を傾げる部分がなくもない。
 
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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
この国は実のところあまり変わっていないのかも。... (みどり)
2014-01-01 01:00:21
この国は実のところあまり変わっていないのかも。最近よくぼんやり思うこと。博士さんのブログにハッとなりました。

英霊を称えることと平和を願うことは矛盾しない。素直にそう信じる人々が多いか少ないかはわかりませんが。「世界から孤立する日本」は戦後で終わった訳じゃなく。民主主義が根付くにはまだまだこれからなんですね。

新年おめでとうございます。どうぞお体を大切に。ブログ楽しみにしております。
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みどりさん (ひまわり博士)
2014-01-01 01:48:46
みどりさん
日本が一歩踏み出すことの一つに「英霊と言われている戦没者が、犬死にであったことを認めることである」と思っています。犬死にであることによって、二度とこのような事態を引き起こさないということに通じるのです。「英霊」にしてしまうと、過去の戦争が正しかったことになってしまいます。
もう一つ、日本の民主主義は決して民主主義ではありません。作られた多数派によって支配される国が、どうして民主国家なのでしょう。そう思いませんか?

本年もよろしく。みどりさんにとって、いっそう輝かしい年でありますように。
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