ひまわり博士のウンチク

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煙草をやめる唯一の方法

2010年10月01日 | 日記・エッセイ・コラム
Tabaco
 
 10月1日からタバコが一斉に大幅値上げされた。今は(基本的に)煙草を吸わないが、かつては相当なヘビースモーカーだった。やめる直前は、一日三箱吸っていた。
 
 当時愛用していたのは「セブンスター」で、一箱150円だった。一日450円の出費が痛かったがなかなかやめられなかった。
 今回の値上げで「セブンスター」は410円になったから、一日1230円、毎月タバコ代だけで36900円以上が煙になって消える計算だ。
 
 一日三箱吸う人はそうはいないと思うが、一箱としても月12000円以上だ。一年だと14万円以上になる。
 
 喫煙者なら誰でも一度は考えることだが、「煙草をやめたらずいぶん金が残るだろうなあ」と思うだろう。
 ところが、それがまったくそうはならない。
 なぜなら、煙草をやめるとメシが実にうまい。そのために、時をおかずしてヘビースモーカーは食道楽に転じるのだ。
 
 また、飲みにいけば手持ち無沙汰になって、煙草を吸う代わりにグラスに手が伸びる。
 結果ピッチが早くなり飲み過ぎる。当然つまみも余分にとるから食べ過ぎる。
 煙草をやめると太るというのは、あながち根拠のないことではないのである。
 
 つまり、タバコ代が食費に化けるというわけである。
 
 煙草を吸ったつもりになって貯金しようと考えている人の腰を折って申し訳ないが、おそらくその考えはうまくいかないだろう。
 
       ◇
 
 僕がヘビースモーカーだったのは、今から30年以上も前のことで、その頃は吸わない人の方が珍しかった。
 今のテレビドラマや映画を見ればわかると思うが、登場人物が煙草を吸うのは稀である。煙草を吸うときは何かしら意味があるときに限る。
 しかし、かつての映画やドラマは、自分が話し終わったり、くつろいだり、何事か一段落するたびに煙草をくわえていた。
 
 自分を例にとれば、車を運転していて信号で止まるたびに、手が自動反応で胸のポケットにいく。外出するときには、必ずタバコを持っていることを確認する。財布を忘れることがあってもタバコは忘れない。
 
 二十代でタバコをはじめて次第に本数が増え、一日二箱になったとき、スティーブ・マックイーンのファンであったガールフレンドに煙草をやめてほしいと真剣に頼まれた。
 スティーブ・マックイーンの死は、タバコが原因の肺がんだといわれていたからだ。
 自分でも一日二箱は多いと思っていて、なんとか減らせないと思っていたし、ガールフレンドを喜ばせたいとも思った。
 減らすということは、やめるよりも難しい。我慢して一日三本までと決めていても、麻雀をやったり飲みに行ったりすれば、必ず本数が増える。
 
 「よしやめる」と宣言した。
 あまりの簡単さにガールフレンドは半信半疑だった。目の前で吸わなくても、隠れて吸うだろうと思っていたようだ。
 しかし、本当にやめるつもりだったので、その証拠にと、数本残っていたタバコの箱をその場で捨てた。
 「これだけ吸ったら」などという未練がましいことを言っているようでは絶対にやめられない。
 
 その後、そのガールフレンドとは別れてしまったが、禁煙は続いていた。
 二年が経ち、ある居酒屋で友人が吸っているのを見て、いたずらに一本ぐらいいいだろうと吸ってみた。
 二年も経っているし、一本ぐらい吸っても元に戻ることはないと思ってのことである。
 ところが、その場で三本ほど吸ってしまった。
 居酒屋の帰り、駅でセブンスターを買うことに躊躇のない自分がいた。
 
 一度煙草をやめた人間は、ダイエットのリバウンドと同じで、以前よりひどくなる。
 本数は極端に増え、一日三箱まで増えてしまった。
 ある日、当時の勤め先の同僚と飲んでいるとき、午後八時頃だと思ったが、三箱目が空になってしまった。
 ここで新しいのを買うことになると、四箱になる。
 その四箱目もその日のうちになくなった。
 明くる朝、二日酔いとも違うクラクラ感がおきて、それが一日中続き、煙草を吸っているときだけそれがなくなる。
 ニコチン中毒である。
 
 「これはまずい」
 
 そうして再びやめる。
 もちろん、やめることを周囲にも宣言した。
 禁煙は最初の二週間がものすごくつらい。部屋にも自分の持ち物にも、それどころか自分の手にタバコのにおいが残っているから、大好きな料理を前にしてお預けを食っているようなものだ。
 
 同僚にイヤなやつがいて、禁煙中なのを知っていながら目の前でタバコを吸い、ごく自然に箱を差し出す。
 箱を差し出されるとつい反射的にそれに手が伸びそうになる。
 
 数々の邪魔や障害を乗り越え、十年以上まったく煙草は吸わずにいた。
 喫煙者の体に残存するニコチンは、完全に消え去るまで数年かかるという。それが残っているうちに再び吸うともとに戻るという。
 逆に十年以上経っていたずらに何本か吸っても、習慣にはならないようだ。
 ニコチンに対する耐性ができているのかもしれない。
 
 写真のラッキーストライクは、数ヶ月前のもので、気分転換にたまに吸っている。
 ライブハウスや居酒屋で友人が吸っていると付き合うことはある。
 しかし、習慣にはならない。
 
 
 友人の中にヘビースモーカーがいると、禁煙を勧めることがあった。
 「はじめから吸ってないやつよりも、やめたやつの方が人の煙草をやめさせたがるよね。自慢なんだろ」
 あながち否定できない。
 
 ちなみに、今は誰にも禁煙を勧めたりしない。
 煙草を吸う人は必要があって吸っているのだろうし、マナーさえ守っていれば、文句を言う筋合いではない。
 
 最後に、僕が煙草をやめた方法を紹介しておく。
 薬も禁煙外来にも行っていない。
 特別な方法も持ち合わせていない。
 それは、
 「やめる!」と決めて、それを実践しただけである。
 それ以外の方法は知らない。
 つまり、自分でやめると決めればいいのだ。
 他人にやめさせてもらおうと思っていては、永久にやめられないだろう。
 
 こういうことを言うから、うざったがられるんだなあ。
 
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