ひまわり博士のウンチク

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「カンブリア宮殿」村上龍VS志位和夫

2009年01月19日 | テレビ番組
 19日放送の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)を見ました。
 村上龍の司会で小池栄子がアシスタントを務める番組で、この日のゲストはに本共産党委員長、志位和夫氏。
 格差社会と派遣切りから注目されて、急速に党員の数を伸ばしている共産党について取材したものです。
 (以下は、あくまで記憶に頼っての記述ですので、性格ではありません。心で把握してください)

●共産主義への抵抗がなくなりつつある若年層
 街頭インタビューでは、若者から年配者まで取材されています。
 党員になった青年は、「今まで政治とか興味なかったし、共産党もよくわかりませんでした。でも、最近の状況を見ると、共産党しかないかな、って思って」。
 街を行く学生らしい若者は、「共産党に対しては肯定的に思ってます。でも絶対かというとそれはちょっと」


 若年層の特徴は、共産党、あるいは共産主義に対して、高年齢層のように偏見を持たず、抵抗がないようです。
 しかしその反面、年配の人の中には、いまだに根強く反発を感じる人が多いようです。
 「自由にものが言えなくなったらいやよねえ。何でも言いたいもん」
 「能力がある人が多くの報酬を得るのは当然だと思うから、それはなくしたくない」

 スタジオで志位和夫氏は、現在の派遣切りについて、派遣の自由化が原因であることを説いていました。
 「派遣は本来専門職が対象でした。それが規制緩和で製造業にまで広がって、正社員との置き換えが行なわれた。つまり派遣は企業のバルブ調整になっているわけなんです」

 仕事を求めに職安を訪れた男性はこう言います。
 「求人と言っても派遣ばかりです。正社員はありません。派遣なら結局元の木阿弥ですから」
 派遣社員であれば、解雇と同時に職も住まいも失います。
 「このままだと、ホームレスになるか、派遣村のようなところのお世話になるしかありませんよ」
 4月になれば、解雇は正社員にもおよぶ可能性があると言われています。

●労働者は搾取されているか
 このような社会状勢の中、今までにない大きな変化が現れています。プロレタリア文学の代表作、小林多喜二の『蟹工船』は昨年だけで60万部を売り上げました。
 この作品は労働者が団結して、資本家の搾取に立ち向かう物語です。

 村上龍さんの質問に、「社内投資を行なうなど、労働者の中にも資本家的な立場の人がいるし、搾取されているとは言えないのではないか」というのがありました。
 それに対し志位委員長は、「搾取されています。給料に対し、会社には莫大な内部留保があります、それが証拠です」
 そして、「トヨタグループだけで内部留保は17・4兆円、0.2%を取り崩せば雇用を守れるのです」
 つまり、志位委員長は内部留保こそが搾取の証拠だと言います。これはマルクス経済学で言う「余剰価値」によって蓄積されたものだからです。

●すべての会社が派遣切りをはじめたら、自分の首を絞めることになる
 派遣労働を全面的に禁止して、企業が国際競争力を失って倒産したら、元も子もないのではないか、と質問されました。
 「一社が首を切るのであれば、その企業は財務状況がよくなるかもしれません。しかし、それがドミノ倒しのように社会に広がって、全部の会社が首切りを始めたら、もう景気の底が抜けてしまって、結局自分の首を絞めることになります」

●そして、ぼくから……もっとも共産主義に近い国はアメリカ
 急速に党員数を伸ばしたからと言って、多数の人が共産党に理解を示しているのかと言えば、そうではありません。ほとんどの人は、痛い目にあっても資本主義の甘い蜜が忘れられず、競争社会が正しいと信じています。
 それは番組中でシール投票を行なった結果に現れています。
 共産主義か資本主義かという質問に、9割以上の人が資本主義に投票しています。

 これには理由があります。研究者でもない限り、共産主義がどういうものかを知るには、かつてのソ連邦や中国や北朝鮮を見るしかないのです。
 しかし、これらの国々が、真の意味で共産主義であったのかというと、そうとう大きな疑問符がつきます。
 マルクスは、資本主義が最高位に達したあと、崩壊して共産主義に移行する、と言っています。
 だとすると、過去にこうした経過を踏んで共産主義になった国は、一国もありません。
 そこで世界を見渡すと、資本主義が崩壊して共産主義に移行するのにもっとも近いところにいる国は、アメリカということになります。
 しかもそのアメリカ経済は今、崩壊寸前の状態です。

 自由が失われるというのは、共産主義だからではなく、その国の特質です。
 共産主義というのは究極の民主主義ですから、自由も平等も最優先されます。

 で、先にアメリカの資本主義が崩壊し、共産主義に移行したら、日本の政治家や資本家たちはどうするでしょう。もっともこの変化には、あと何十年もかかるでしょうけれど。

●日本共産党の名前を変える?
 アシスタントの小池栄子は、もちろん政治のことなど分かろうはずはありませんが、精一杯背伸びをしてこんな質問をしました。
 「日本共産党じゃなくて、もっと若者受けする名前に変えたらどうですか?」
 これには志位委員長も苦笑い。
 「共産党は共産主義を理想とする政党ですから名前を変えることはしません」
 以前にもこのような話が共産党内部からも出たと言われていますが、ぼくも変えてはいけないと、どこかで意見を言った覚えがあります。


 「カンブリア宮殿」という番組は初めて見ましたが、村上龍という人はその時々の出来事を作品する作家です。子捨てをテーマにしたデビュー作『コインロッカー・ベイビーズ』にはじまって、北朝鮮問題をテーマした『半島を出よ』などが、特徴的です。
 ぼくは人間的には村上龍という人を評価していませんが、時代の変化には敏感に反応する、身の軽い人だと思います。
 番組を通じて、体よく取材代行をしてもらっているのかもしれません。
 派遣をテーマにした作品を発表したら、笑ってしまうかも。

【リンク】『しんぶん赤旗』記事

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