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monologue
夜明けに向けて
 





わたしがハリウッドのクラブでエレキギターの相棒シゲさんと仕事が終わった時、店の外に出てギター、ベース、アンプ類を車のトランクに運び込んで一旦店に戻って店主と三人でしばらく談笑してから外に出ると車のトランクを数人の黒人がバールでこじ開けていた。幸い、まだ楽器を盗らずに逃げていった。それで翌日、修理工場へトランクの修理に行ってみてもらうとトランクの奥に穴があいて後部座席が外れていたので穴の補修と座席の嵌めこみを頼んだ。多かれ少なかれエンターテイナーはそういう目に遭っている。一時、店のドアを開けて飛び込んできたガンマンがエンターテイナーのピアノに向けて発砲する事件が流行ったことがあった。その頃はみんな戦々恐々としていた。西部劇の一場面のようだった。
fumio

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真夜中のパトロール
このところ、米国では警官の容疑者殺傷事件が人種問題などに絡めてニュースによく採り上げられているが日本より市民と現場の警官の関係が近いと感じる。毎夜同じ時間にパトロールに出て目をつけている犯罪容疑者たちの家を順に廻り窓にパトカーのヘッドライトを当てていつも見張っていることを知らせてそれ以上の犯罪を抑止する。そのルートにあるドーナツショップで一休みする。夜12時過ぎにドーナッツショップに行くとよく休憩中の警官に会った。
ある時、日系人の女性の家に歌がうまい白人女性がいるというので招ばれてギターをもってゆくと数人のパトロール警官がやってきた。毎夜その時間に警邏巡回するコースになっていていつも寄ってゆくらしい。しばらく防犯について話したあと、わたしのギターを見て演奏してほしいという。白人女性が、バーバラ・ストレイサンドが流行っている頃だったので「追憶」を歌いたいというのでギターで伴奏した。その歌はすごくうまかった。みんながわたしにも歌えというのでスリードッグナイトの「シャンバラ」を弾き語りした。真夜中のパトロールには息抜きも必要なのだろう。パトロール中、麻薬の取引現場に遭遇したりすると相手が強力な銃を持っているので警官の方が危ない。テイザーガンで銃を持っている容疑者に近づいてゆくのは勇気がいる。はたしてバイデン大統領が今回、銃規制法を通せば米国は安全になるのだろうか。残念ながら人々のマインドが西部劇時代のままではむづかしい。

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それでもそれを愛と呼べるのだろうか…。
 古い表現だがまるで万力で締め付けられるような気がした。
 背中から突然羽交い締めにあったのだ。頭の中ではジャック・ポットのようにつぎつぎにそんな冗談をしそうな友の顔が回転した。そのジャック。・ポットはついに止まって特定の像を結ぶことがなかった。わたしはふりほどこうともがいたがどうにもならない。相手の顔を覗こうとしたが見えない。時刻はそろそろ午前三時過ぎである。クラブのエンターテイナーの仕事が午前二時に終わって楽器類を片づけて店を出たのが二時半頃。ハーバー・フリーウェイからサンタモニカ・フリーウェイに乗り換える頃、おかしいなと感じた。後ろについていた車が離れない。不気味なものを感じた。スピードをあげていつものランプ(降り口)に達した。フリーウェイを降りるとさっきの車は随いてこなかった。安心して家の前に停車した。後ろの座席に置いたギターを取りだそうとした、そのときだった。だれかが突然わたしを後ろから羽交い締めしたのである。フリーウエイを降りてからも随けられていたのだ。こうなれば必死で戦うしかない。友だちの可能性を捨ててむちゃくちゃに暴れた。やっと相手の腕がゆるんだ。そのすきに回転して向き直る。対峙すると相手は見知らぬ白人であることがわかった。その頃、世間では連続強姦魔事件が取りざたされていて後ろからわたしの長髪を見て女性と勘違いして襲ってきたのかと思った。白人はおまえはキムじゃないのか、とわけのわからないことを口走りながら逃げて行った。キムという韓国人の友とまちがえて冗談をしてみたらしかった。翌日、隣のアパートの黒人女性に、二階から見ていたけれどよく助かったわね、うちの子供にもカンフーを教えてくれ、と頼まれた。わたしはカンフーは知らない、と断ったものだった。残念ながらその頃の天使の町、ロサンジェルスでは毎日、強姦や殺人事件が当たり前のように起こっていたのだ。
fumio

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