山本藤光の文庫で読む500+α

著書「仕事と日常を磨く人間力マネジメント」の読書ナビ

096cut:存続会社は

2019-05-28 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
096cut:存続会社は
――Scene15:R製薬の危機
影野小枝 SSTアカデミーは、第2サイクルに入っています。やはりSSTほどの、成果は上がっていません。P評価の営業リーダーたちに対して、MRからは露骨な批判が届いています。いちばん多い指摘は、学術知識がないために話を補完してくれない、という点でした。そんなとき、臨時の衛星放送があるので全社員は午後3時に、テレビの前に集まるようにとの通達がありました。衛星テレビに映った社長の顔は、少し青ざめているようです。
社長 このたびR製薬は、C社と合併することになりました。存続会社名はC社となります。
漆原 そんな。
新谷 まさか。
磯貝 うそだろう。
岸本 頭のなか真っ白。
河野 R製薬の名前が消える。
影野小枝 C社はR製薬グループの傘下に入り、日本の存続会社名はC社となるようです。日本ではC社の売上の方がはるかに大きいのですから、仕方がないのかもしれません。

『芥川賞ぜんぶ読む』(宝島社)がいい

2019-05-28 | 妙に知(明日)の日記
『芥川賞ぜんぶ読む』(宝島社)がいい
■『芥川賞ぜんぶ読む』(宝島社)を購入。私が書評を書いている何人かを読んでみた。純文学のナビ本としては、立派な内容だった。おそらく記憶を再現するために、時々引っ張り出す本になるだろう。読書好きはぜひ備えておきたい。■北海道が日本でいちばん暑い日が続く。長年済んでいたが、30度越えの日の記憶はあまりない。ほとんどの家はエアコンの設備がないので、どうしているかと心配になる。これも地球温暖化の影響なのだろうか。トランプは地球温暖化説に科学的な根拠がないと、早々と対策組織を離脱している。大国がそんな認識だから、対策は遅々として進んでいない。
山本藤光2019.05.28

034:生徒会長選挙

2019-05-27 | 小説「町おこしの賦」
034:生徒会長選挙
六月になった。高校生活に慣れてきたとき、生徒会長選挙の候補者募集が行われた。例年なら学校側が推薦する誰かが、生徒会長に就任する。しかし今年ばかりは違った。
何と一年生の菅谷幸史郎(こうしろう)が、名乗りを上げたのである。対立候補は学校側推薦の二年生・越川翔だった。彼は標茶町町長・越川常太郎の孫である。

学校側は菅谷幸史郎に、立候補の撤回を求めた。一年生では校内のことが、わからない。だから立候補を、取り下げるように。表向きは、そのように説得された。しかし菅谷には、学校側の底意が見えていた。彼は頑として、説得を聞き入れなかった。

昼休みの恭二のクラスにも、生徒会長候補の菅谷は、たすきをかけてやってきた。
「生徒会長に立候補しました、菅谷幸史郎です。四年ばかり、土木作業員をやっていました。理由は高校へ進学する、お金がなかったからです。やっと資金が貯まったので、標茶高校を受験しました。無試験でしたが、合格しました。私は標茶中学の卒業生ですが、日本一雄大な標茶高校に憧れていました。
今回生徒会長に立候補させていただいたのは、標茶高校を名実ともに日本一の高校にしたいからです。そのためには、勉強もクラブ活動も、そして何より標茶高校のみなさんが、町の活性化に貢献できるような学園を目指さなければなりません。どうか、みなさんの清き一票を、おっさん、菅谷幸史郎へとお願いします。私なら、できます」

 大きな拍手が、巻き起こった。恭二は彩乃さんのことを、思い出していた。働きながら、定時制高校に通っている。彼女も、兄も、何と強い自分を持っているのだろう。
菅谷は標茶町の活性化のために、といった。恭二の心のなかで、また新たなうねりが起こった。標茶町のために、自分ができる何か。まだ磨りガラス越しにしか見えないが、おぼろげながらやるべきことが、見えてきたような気がする。

095cut:第1期SSTアカデミー終了

2019-05-27 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
095cut:第1期SSTアカデミー終了
――Scene15:R製薬の危機
影野小枝 漆原さんと新谷さんは、いつもの居酒屋にいます。遅れて桑田さんと岸本裕美さんも合流しました。
新谷 まずは第1期SSTアカデミー終了おめでとう。第2期の人選は漆原部長の案通りでいいよ。それにしてもご苦労だったね。桑田くんは、高知まで駆けつけたようだね。
桑田 富樫さんがMRと口論をして、あげくに山の中に置いてきぼりになりました。ネチネチやったので、MRはキレてしまったようです。それに鈴木さんが、県立病院でドクターを怒らせてしまって、支店長が謝罪に行ったり……とにかく、高坂所長も怒って、アカデミーは引き揚げろという話になりました。
新谷 山の中で降ろされた富樫は、どうしたんだい?
桑田 やってられないって、休暇願を出して帰ってしまったんです。河野支店長が自宅まで行って、説得しました。結局、高知に戻ったのですが、ケンカしたMRとは同行できないままでした。
漆原 富樫もそうだけど、鈴木もダメだね。
岸本 第1期終了後のデータが出ています。やっぱり富樫さんと鈴木さんのところは、MRの意識・行動レベルが下がっています。大方はSST終了時のように、MRの意識・行動レベルは上がっています。
新谷 SSTアカデミーのメンバーには、メンタルのトレーニングが必要かもしれない。MRやドクターを怒らせるなんて、最悪だよな。
漆原 MRを育てる、ということ自体が理解できないんだろう。この2人には部下を任せられない。
新谷 大宮は4人の営業リーダーが勉強会を開催したりと、相乗効果が上がった。岐阜もお互いに刺激し合って、大いにプラス効果が出ている。高知は佐藤が引っ張ってくれたが、富樫と鈴木を一緒にしたのがまずかった。

『芥川賞ぜんぶ読む』出た

2019-05-27 | 妙に知(明日)の日記
『芥川賞ぜんぶ読む』出た
■トランプ米大統領が国賓として来日。相撲を桟敷席で観戦し、米大統領杯を優勝力士に授与した。SPの警備はものものしく、なんだか別次元の相撲になっていた。相撲取りはえらい迷惑を受けたようだ。やはり桟敷席ではなく、貴賓席での観戦がふさわしかったと感じた。■『芥川賞ぜんぶ読む』(宝島社)の広告が新聞に掲載されていた。これは大学生の時の私の夢。ずいぶん読んだはずだが、途中で頓挫した。本書はそんな挫折人の慰めになるかもしれない。本日買い求める予定。
山本藤光2019.05.27

033:予定稿

2019-05-26 | 小説「町おこしの賦」
033:予定稿
放課後の新聞部部室では、南川愛華がホワイトボードに向かって何かを書いていた。その傍らには同学年の田村睦美と野口猛の姿があった。三人とも、藤野詩織が入室したのに振り向こうともしない。詩織は窓際の椅子に腰を下ろし、三人のやりとりに耳を傾けた。

「越川翔か、彼にだけはやらせたくない」
貼ってある紙片に目を向けて、野口猛はため息とともに強い言葉を吐き捨てた。田村睦美が続けた。
「またも運動部だよ。これで部活費のほとんどは、彼らに持って行かれる」
ホワイトボードに貼ってあるのは、生徒会長選挙の予定稿である。新聞部では、生徒会長選挙の号外速報を準備中なのだ。今年も運動部が名乗りをあげて、無投票で生徒会長が決まる。そんなことを見通して、新聞部では着々と準備を進めている。

――生徒会長に越川翔さん
――十一年連続で運動部から

こんな見出しにそえて、越川翔の写真がはめられている。

「越川って、町長の孫なの?」
愛華が尋ねた。
「そう、町長の孫で、越川ミートの次男坊。こいつは悪だぞ」
「どうしてそんな人が生徒会長になるの?」
「部活費の配分を決めるのが生徒会なんだ。それが終わったら、生徒会は何もやることがない」
「町の活性化のためにボランティアをやるとか、校則を話し合うとか、やるべきことはたくさんあるわ」
 愛華の話にうなずきながら、野口猛はまた大きなため息をついた。
「標高を空気の淀んだ死んだような学舎にしてはダメ。もっと町の発展のために、若い力を発揮すべきなんだから。このままではダメ。誰も立候補しないなら、私がやろうかな」
 愛華は「ダメ」を連発して、天を仰いだ。

「愛華部長、ちょっといいですか?」
 窓際から、詩織が言葉を発した。三人の顔が一斉に詩織の方を向く。
「ひょっとしたら、うちのクラスの菅谷さんが立候補するかもしれません」
 詩織の一言で、室内がざわついた。
「本当? もしそうならビッグニュースだね。この予定稿はボツになるわ」
 愛華がいった。

095cut:第1期SSTアカデミー終了

2019-05-26 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
095cut:第1期SSTアカデミー終了
――Scene15:R製薬の危機
影野小枝 漆原さんと新谷さんは、いつもの居酒屋にいます。遅れて桑田さんと岸本裕美さんも合流しました。
新谷 まずは第1期SSTアカデミー終了おめでとう。第2期の人選は漆原部長の案通りでいいよ。それにしてもご苦労だったね。桑田くんは、高知まで駆けつけたようだね。
桑田 富樫さんがMRと口論をして、あげくに山の中に置いてきぼりになりました。ネチネチやったので、MRはキレてしまったようです。それに鈴木さんが、県立病院でドクターを怒らせてしまって、支店長が謝罪に行ったり……とにかく、高坂所長も怒って、アカデミーは引き揚げろという話になりました。
新谷 山の中で降ろされた富樫は、どうしたんだい?
桑田 やってられないって、休暇願を出して帰ってしまったんです。河野支店長が自宅まで行って、説得しました。結局、高知に戻ったのですが、ケンカしたMRとは同行できないままでした。
漆原 富樫もそうだけど、鈴木もダメだね。
岸本 第1期終了後のデータが出ています。やっぱり富樫さんと鈴木さんのところは、MRの意識・行動レベルが下がっています。大方はSST終了時のように、MRの意識・行動レベルは上がっています。
新谷 SSTアカデミーのメンバーには、メンタルのトレーニングが必要かもしれない。MRやドクターを怒らせるなんて、最悪だよな。
漆原 MRを育てる、ということ自体が理解できないんだろう。この2人には部下を任せられない。
新谷 大宮は4人の営業リーダーが勉強会を開催したりと、相乗効果が上がった。岐阜もお互いに刺激し合って、大いにプラス効果が出ている。高知は佐藤が引っ張ってくれたが、富樫と鈴木を一緒にしたのがまずかった。

多和田葉子『ボルドーの義兄/雲をつかむ話』読み始める

2019-05-26 | 妙に知(明日)の日記
多和田葉子『ボルドーの義兄/雲をつかむ話』読み始める
■昨日、相撲を観ていたら、ドーンという音がして激しい揺れが追いかけてきた。震源地はすぐ近くだった。震度4。書棚の上にのせてあった本が10冊ほど飛び出していた。そのほかの被害はない。■本日午前4時。熱気がこもっているので、書斎の窓を全開にする。待ち構えていたように、ひんやりとした風が入り込む。遠くでウグイスが鳴いている。ほかの鳥たちの鳴き交わしがけたたましい。救急車がサイレンを鳴らして走り過ぎた。昨日は近所の小学校の運動会だった。花火が上がらなくなって久しい。運動会は午前中だけの時短になったようだ。人の世は少しずつ変わってゆく。変わらないのは、鳥たちの世界だけだ。■多和田葉子『ボルドーの義兄/雲をつかむ話』(講談社文芸文庫)を読み始める。ドイツ在住のこの人は、硬質な文章で読みやすい。海外でも評価が高まっており、カズオ・イシグロのような立ち位置になるかもしれない。
山本藤光2019.05.26

032:柳田教諭の信念

2019-05-25 | 小説「町おこしの賦」
032:柳田教諭の信念
ゴールデンウイークを間近に控えた放課後、体育館の片隅では十人ほどの男子生徒が車座になっていた。
「今年もきみたちが、番を張らなければならない。誰かやってくれるか」
 輪を仕切っているのは、柳田教諭である。生徒会長は運動部から排出する。それが学校の規律を守るための最善策である。柳田はそうした信念で、毎年この時期になると、運動部の主将を集めている。柳田は元新聞部の顧問だったが、この信念だけは一貫していた。
 文化部の一人が生徒会長をしていたときに、学校が荒れたことがあった。それ以来運動部が学校の治安を守るべきだ、と主張し続けているのが柳田だった。

「先生、今年はおれがやります」
 手をあげたのは、卓球部の主将・越川翔だった。町長の孫で、越川ミート株式会社社長の次男である。
「いいだろう。越川ならアカも駆逐できる」
 柳田は大きく頷き、「新聞部が跳ね上がっているから、それを抑えなければならない」と続けた。

 標茶高校の生徒会長は、ここ十年ほど無投票で選ばれている。それもずっと運動部での回り持ちである。柳田は長島太郎が率いる、新聞部に疑念を抱いている。生徒会のいちばん大きな使命は、部活の予算配分である。運動部を手なずけることで、これまでは新聞部に厚く予算を回してもらっていた。今年は越川をいいくるめて、極端な予算カットをしてやる。
 柳田は越川翔の肩を叩き、「頼んだぞ、越川」と告げた。

094cut:埼玉大宮営業所のSSTアカデミー

2019-05-25 | 完全版シナリオ「ビリーの挑戦」
094cut:埼玉大宮営業所のSSTアカデミー
――Scene14:SSTアカデミー
影野小枝 もうひとつSSTアカデミーメンバーが派遣された、埼玉県大宮営業所(塚越所長)をのぞいてみましょう。こちらには旭川営業所の山之内さんが行っています。漆原新任リーダー時代は帯広のMRでした。それから奈良営業所の大沼リーダーも一緒です。4人の営業リーダーが、面談のやり方について意見交換しています。
塚越 山之内さんの提案ではじめた、水曜夜の勉強会は5回目になります。今日は大沼さんの番でテーマは「面談のやり方」となっています。
山之内 ぼくが先週やらせてもらった会議よりも、面談の方がずっと難しいですね。自己申告、年頭の個別計画立案、評価のフィードバックなど、定例のものは別にして、講義を受けるまではいい加減なものでした。
大沼 講義ってどんなのを受けたの?
山之内 札幌支店のマネジャー会議で、コラボプランの山本先生の講義を聞いたんです。まず会議と面談の違いの説明がなされ、ぼくたちはそれをごちゃごちゃにしてしまっている、と指摘されました。
大沼 山之内さんに少しレクチャーしてもらった方がいいね。
影野小枝 高知営業所に行ったメンバーとは、全然雰囲気が違いますね。あそこだけは例外で、だいだいこうした前向きな勉強の場が、生まれていたようです。念のため。