空蝉の世にぞ生きてななとせの 羽をもらひてななひ翔ぶらん
風竿
三連休は禅僧のごとく家に閉じこもった。
蝉に例えるならば、長い地中生活の間、溜まりに貯まった過去の遺物ともいえる要らないものを整理していたのである。
そして三日目の朝、洗濯物を干していて・・・
我が家のささやかなウッドデッキに蝉の抜け殻を見つけたのであった。
諸説あるものの、蝉はだいたい7年と7日生きるといわれている。
幼虫を地中の中で過ごし
羽化して成虫になり、やっと自由を得て飛び回るのだが、
それは僅かな時間しか残されていないという、何とも過酷な一生なんである。
まさに、この残された少ない時間を有効活用すべく
オスの蝉は真夏の炎天下の下で、メス蝉にアピールしようと、必死になって鳴き続けるのだ。
遠い昔、子供の頃、夏休みの課題研究で、よく昆虫採集をやったものであった。
怪しい液体を注射して、昆虫の標本をつくるのである。
鹿島市の桜の名所で知られる旭ケ丘公園に行くと、色んな昆虫が私を迎えてくれて・・・、
さしずめファーブル博士にでもなったような気分で、捕獲用の網を振り回したものだった。
蝉は釣りざおの先にハエ取り紙の、あのネバネバを擦りつけて捕まえるのだ。
1時間も歩きまわると、私の虫カゴは哀れにも捉えられた蝉たちで一杯になったものだった。
ニイニイ蝉は「チッチ」といい
アブラ蝉は「アカッチョ」
ミンミン蝉は「ワジ」と呼んでいた
オス蝉のお腹は殆ど空洞で、殆ど発声器の役割しかないのだそうだ。
これは私も標本作りでよく分かっていたのであるが、
反面メスのお腹は殆ど卵巣が占めているそうで、
この身体の構造を考えると、種の保存のための成虫だということが興味深い。
つまりは死を迎える7日間は、蝉にとって実に大切な一週間なのである。
そんな羽化の神聖な儀式が我が家の庭で行われていたんである。
今は旅だったあとの空蝉の抜け殻が
私に語りかけてくるものを
しずかに想いながら、しばし眺めた休日の朝であった。
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脱皮の瞬間の神聖な儀式とは・・・