風竿の「人生の達人」烈伝

愛すべき友、仕事・趣味の磯釣り・ゴルフ・音楽、少しの読書などにまつわるあくまで「ヒト」に重点をおいたブログです

秘剣、鷹の爪

2013年07月02日 00時25分19秒 | 風竿日記

父は毎年夏になると、決まったようにソーメンを食べていた。

クマゼミが短い夏を惜しむかのように、そこかしこに鳴きじゃくる昼下がり

何か、はがゆいことでもあったのか、というような、眉間に皺をよせたブスッとした無表情で

目をつむって、ズルズルとソーメンを啜っていた。

その折に、おもむろに刀剣のような青胡椒を抜くと、あたかも厳粛な儀式のような素振りで、麺ツユの中に箸でこさいで入れるのだ。

  

私も幼い好奇心から、それを「ガリッ・・・」とかじってみたんである。

「ひやぁぁぁぁぁぁぁっ!」

たちまち、口の中はまるで火事になった。

2時間くらいは唇が、いかりや長介状態のような気がしたものである。

それがこの鷹の爪という胡椒との強烈極まりない出会いであった。

何で世の大人達は、こんな、とんでもないものを食べるのだろうかと

魔可不思議でならなかった。

  

こんなものを食べなきゃならないんなら、絶対に大人なんかにならなくていいと真剣に思ったものだ。

 

 

父は54歳の若さで、昭和57年9月にあっけなく他界した。

すでに父の歳を追い越した私である。

そして、DNAなのだろうか・・・・・。

私もまた、夏が来るとソーメンばっかし食べている。

父のように目を瞑って、ズルズルとかきこむのだ。

実は、猫の額のような畑に鷹の爪の苗を三本植えた。

  

あろうことか、辛ければ辛いほど大好きなんである。

ピリッ!くらいでは、

「まだまだじゃのう・・・・・。」と、うそぶくんである。

拙者とて武士のはしくれ

稲妻が走るくらいにならないと・・・・。

まさに、刀剣のような青胡椒を抜く「秘剣、鷹の爪」

まあ、私もいつのまにか大人の仲間入りをしたということであろうか。

  

やがて胡椒の白い花が咲く頃、ソーメンが益々旨くなっていく。

8月の初めには、くだんの秘剣鷹の爪を収穫できる皮算用なのだが、

果たして、今年の刀剣は周りを震わせるほどに辛いのだろうか。