北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「現代音楽史~闘争しつづける芸術のゆくえ(沼野雄司著・中公新書2021刊)」を読んだ。沼野雄司(ぬまのゆうじ1965生まれ)氏は、武蔵野音楽大学(音楽学部)卒、東京藝大大学院(音楽研究科)博士課程修了、博士(音楽学)。東京音大助教授/桐朋学園大学准教授/ハーバード大学研究員を経て、桐朋学園大学教授。専攻は20世紀音楽。---------
この本「現代音楽史」の目次は次の通り。“現代音楽の誕生”、“ハイブリッドという新しさ”、“ファシズムの中の音楽”、“抵抗の手段としての数”、“電子テクノロジーと音響の発見”、“1968年という切断”、“新ロマン主義とあらたなアカデミズム”、“21世紀の音楽状況”--------
この本「現代音楽史」の内容紹介文は次の通り。長い歴史を持つ西洋音楽は/21世紀に至って大きく転換した。シェーンベルクとスラヴィンスキー“春の祭典”に始まり/多くの作曲家が無調音楽/12音階法/トーンクラスター/偶然性の音楽/といった様々な技法/実験を繰り広げた。それ以前と異なる現代音楽の特徴として/政治や社会/思想/そして絵画など他の芸術分野との結びつきが強いことが挙げられる。音楽から20世紀という時代を描き出す。ジョンケージ/武満徹/バーンスタイン/多くの作曲家が既存の音楽の解体を目指して/音の実験を繰り広げた。激動する政治社会/思想を反映しながら時代との闘争を続ける新しい音楽の行方とは。--------
沼野雄司氏は、史家/批評家/評論家として音楽の世界で身を立てて居られる。一般に芸術の世界では、芸術家として生きる人とその芸術の素晴らしさを説く人とに二分される。沼野雄司氏は後者に属する。芸術家はその作品が素晴らしければ時代を超え国を超えて残るが、史家は必要ではあるのだが、史家でしかない。多分、沼野雄司氏自身、芸術家を目指したに違いないが、どこかの時点で諦められたのだろう。でもそのクラスの理解度が無いと音楽史は語れない。