21世紀航海図;歴史は何も教えてくれない。ただ学ばない者を罰するだけ。

個人の時代だからこそ、個人を活かす「組織」が栄え、個人を伸ばす「組織」が潤う。人を活かす「組織」の時代。

6900万台回復は無いでしょう。

2009年01月25日 21時46分17秒 | Weblog
 日本経済新聞によると{日産自動車のカルロス・ゴーン社長は25日、サウジアラビアの首都リヤドで開かれた経済関係の会合で、2009年の世界の新車販売台数は、08年比 14%減の5500万台に落ち込むとの見通しを示した。また、ピーク水準である07年レベル(6900万台)に回復するには7年以上かかるとの認識も示した。・・・・・・・}らしいが。

 世界の新車販売台数が6900万台を回復することは未来永劫起きないでしょう。理由はいくつか考えられますが、まず第一に、自動車の耐久年数が伸びていること。次に、世界人口の伸びに限界があること。そして、世界の道路網の容量に限界があること、また公共交通機関の発達が進んでいることがあげられます。

 自動車産業の持つ素晴らしい技術力のおかげで、自動車の耐久年数は25年程度まで伸びている。短期間で買い替える習慣のある日本国内での自動車の寿命は15年程度が最長でしょうが、その後に中古車として海外に輸出されるとすれば、海外自動車市場で新車と中古車が競合することになります。当然、競合が無い場合に比べ「新車」販売台数は落ち込むでしょう。
 また、世界人口の増加率の減少も自動車需要減退を引き起こします。ここ半世紀で日本の人口は約4倍になり、それに伴って新車販売台数も増えてきました。しかし、ここ2年、人口増加が止まっただけで著しい新車販売台数の減少が起きています。世界市場でも全く同じことが起きると考えられます。過去50年間で世界の人口は5倍になりましたが、今後50年間では最大でも1.5倍にしか増えないでしょう。最大で90億人です。また、それ以上に人口が増えてしまうと食糧不足に陥り、多くの人が新車を買うほどの富を得られなくなるでしょう。
 そして、道路網の不備と公共交通網の整備です。人口100万人程度までの都市内では道路網を整備することで、自動車は通勤機関として機能するでしょう。しかし、人口が500万人を超えるような大都市では、どれだけ計画的にデザインされた道路網であろうと、渋滞を緩和できず、機能不全に陥ります。需要の増加が見込めない先進国だけでなく、今後の経済発展が見込める発展途上国でさえ、人口の一極集中が進んでいます。通勤の足として、乗用車が機能しない大都市に住む人口の割合が増えていくでしょう。大都市の市民は、途切れることのない渋滞から逃れるために、公共交通機関を利用するようになるでしょう。

2050年の世界人口が仮に100億人だとしても、自動車(20万kmは知っている中古車を含む)を保有できるだけの富を持つ人口は80億人程度でしょう。しかし、その内の60億人は自動車を活用できない大都市部に住んでいるでしょう。つまり、残りの20億人が潜在的市場になります。しかし、これから高齢化が進めば、その4分の1は自動車の運転をしないと考えられます。つまり需要家は残りの15億人なのです。そして、一台当たりの耐久年数が25年ですから、期待できる1年あたりの期待新車販売台数は約6000万台と言うことになります。

 つまり、ゴ―ンさんが期待している世界新車年間総販売台数が6900万台に回復する可能性はないのです。バブル経済で過剰需要が生まれた2007年が異常だったのです。今後数年間は5500万台前後の販売台数で推移した後、長期的には6000万台をはさんで上下していくことになるでしょう。そしてもし、また万が一、年間新車販売台数が6000万台水準を大きく超えることがあれば、それはバブル需要です。その後数年以内に巨大な揺り戻しが起こるでしょう。

 自動車産業全体が持つ潜在新車生産能力は年間9000万台と言われています。つまり、生産余力は3000万台分余分なのです。M&Aだけでなく、企業の倒産・清算も通して、業界再編成が起こるのは間違いないでしょう。

 世界市場は年間生産台数1000万台以上の企業2社、600万台前後の企業5社、そして年間生産台数100万台以下のブランド・メーカー多数が生き残りをかけた競争を繰り広げながら安定化が進んでいくでしょう。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。