劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

新国立劇場の「セビリアの理髪師」

2020-02-07 09:51:12 | オペラ
2月6日(木)の夜に、新国立劇場で「セビリアの理髪師」を観る。5回公演の初日。18時30分開演で終演は21時45分頃。客席は9割程度の入り。夜の公演は5回のうち1回だけだが、やはり夜は人気がないのかなあと思う。それでも、勤め帰りの人なのか、きちんとした服装の人が結構多かった。

今回の公演は、歌手陣が充実していて、歌が楽しめる。ロッシーニを歌うという点で、結構一流どころを集めたという感じ。一番印象的だったのはフィガロ役のフローリアン・センペイで、声の質、声量、演技の点でどれも良かった。アルマヴィーラ伯爵はテノールのルネ・バルベラで、経歴を見るとアメリカ出身らしいが、声の質はとても良く美しい声に聞き惚れた。しかし、1幕では本人がセーブしていたのか、若干声量に問題があると感じた。しかし2幕最後の歌では、温存していた力を出して見事な歌唱を聴かせた。この声を聴くだけでも価値があると思った。

ロジーナ役の脇坂彩は、イタリアで活躍してロッシーニを得意としているらしく、堅実な歌唱を見せた。日本人も結構海外で活躍していて、国内では聴く機会が少ないがうまい人がいるなあと改めて思った。やはり、日本ではオペラの公演数が少ないので日本にいても活躍の場が得られないのだろうという気がする。たまにこうして里帰りして歌ってくれるとありがたい。

そのほかの歌手陣も充実しており、東京交響楽団を指揮したアントネッロ・アッレマンディも手堅くまとめていた。合唱指揮者はいつも見慣れた三澤氏ではなく、冨平という若い人だったのでちょっと驚いた。三澤氏はもう年なので引退したのだろうか。

演出はヨーゼフ・E・ケップリンガーという、ウィーンの人のようで、何回か見た演出だが、ちょっとうるさい演出だ。歌舞伎などでも誰かが演技をしている間は、他の人はじっとしているか、あるいは極端な話、後ろを向いて静かにしている。オペラでも「トスカ」の2幕で、トスカが「歌に生き、愛に生き」を歌う場面では、カヴァラドッシは隅の方で静かにして、観客を歌に集中させる演出が一般的だ。しかし、今回の演出では、歌の間、特に重唱の場面などは、関係のない人が動き回る。それはそれで面白いのだが、歌に集中できずに不満が残る。こうした関係のない人物が動き回るだけでなく、やたらとセットが回り舞台で回転する。これも良く言えば、スピーディな展開というか退屈させない工夫なのかも知れないが、観ていると、なんとも落ち着かない印象だ。

演出には不満が残るが、歌手陣が充実した良い公演だった。冷え込んで寒かったので、家に戻って食事。サラダと豚肉の煮込みで軽く食事。ワインはボルドーの白。