劇場と映画、ときどき音楽と本

オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

映画「スターリンの葬送狂騒曲」

2020-02-09 10:39:49 | 映画
衛星放送の録画で、2017年の映画「スターリンの葬送狂騒曲」を観る。イギリス映画で、ソ連時代の独裁者スターリンが亡くなった後の共産党幹部間の権力闘争を描いている。権力闘争を描くというと、何か暗いイメージがあるが、あまりにも教条主義的な様子が喜劇的に描かれていて面白い。

出演者は、写真で見る本物の人たちと結構似た人物が演じている。スターリンは今でも赤の広場のところで永遠安置されていて、誰でも見ることができるので、僕も見てきたが蝋人形のように今でも生前の様子が窺える形で横たわっている。亡くなった後に、そうした措置をする場面も描かれていて、葬儀での幹部の立ち位置の場所なども気にする様子が分かって面白い。

スターリンは生前はジョン・フォードの西部劇が好きで、クレムリンの中で毎晩のように見ていたらしいが、この映画でも側近たちを並べて一緒に映画を見る場面が出てくる。映画には出てこなかったが、ソ連国内で上演する映画は全部スターリンは自分で検閲していたらしく、気に入らない映画を作ると、すぐに収容所送りとなってしまうので、映画監督は作品製作に慎重になり、スターリンは大の映画好きだったにもかかわらず、スターリン時代の製作本数はどんどんと減っていった。たしか、クレムリンの映写技師が書いた本が日本語にも訳されて出ていたと思う。

この映画の冒頭は、ラジオでピアノ協奏曲を放送する場面が描かれているが、演奏が終わった時にスターリンから放送局に「録音が欲しい」と電話がかかってくるので、録音していなかったディレクターが、必死になって人を集め直して、もう一度同じ曲を演奏させて録音させるというのが笑える。本人たちは、「録音がない」と言ったら殺されるかも知れないと必死なのだ。

秘密警察の幹部が、他の連中たちの弱みを握って権力を掌握しようとするが、フルシショフが工作をして失脚をさせて、自分が権力を握るという話になっている。歴史的に本当にそうだったのかは調べていないが、こうした国家にありがちな展開で面白い。

久々に観た面白い作品で、誰にでも推薦できる一本だった。