深々と雪の降る夜、
その恐ろしい出来事は起こった。
先週の土曜日、
会社の仲間と飲みがあった。
駅前の居酒屋チェーン店だ。
店内は若者のグループでいっぱいだ。
まあ、
土曜日だし。
仕事が終わってからの集まりだったので、
スタートも遅かった。
隣の部屋からは奇声が。
宴もたけなわ、かなり酔っ払っているんだろう。
我々はオヂさんばっかりなので、
静かにスタート。
隣、うるせぇな~、なんて言いながら乾杯。
仕事の話、TV番組の話、クルマの話、そして髪の毛の話・・・・・・
とりとめない話題で時間は過ぎて行った。
私はトイレにと立ち上がった。
便器に腰掛けて、ふぅ、と息を吐く。
ああ、軽く、酔ったな・・・・・
用を足し、
何気なく、ウォシュレットのスイッチを押した。
酔っている所為か、感覚が鈍い。
もうよかろうと、止めのスイッチを押した。
止まらん。
もう一度、押す。
・・・・・・・・・・・・・・・。(汗)
押す・・・・・
様々なボタンを連打するも、
水は出続ける。
動けん・・・・
言い表せぬ恐怖が、
私に忍び寄っている事だけは判った。
下半身を打ち続ける鼓動が、
いつしか感じられなくなってきている。
絶対絶命。
こういう場合は、誰に助けを呼ぶんだ?
携帯で仲間を呼ぼうか?
(なんか、間抜けだが)
居酒屋を予約した時の履歴がある筈だ。
電話で呼ぼうか?
しかし・・・・・・・・・・・・、
なんとも、間抜けなシチュエーションだ。
極限状態の中、
私は冷静に様々な選択肢をシュミレーションした。
ふと、気が付いた。
圧力センサー!
恐る恐る、腰を浮かしてみる。
ゆっくりとだ。
と、
噴水の勢いが止まる・・・・・・・!
遂に私は脱出する事が出来た。
恐ろしく長い時間だった。
夜が明けてるんじゃないかと思った。
何事も無かった様に、私は席に戻る。
で、この件は、
店のスタッフに伝える切っ掛けが、なかった。
まあ、いいか、
とも思った。
何故って?
私以外の誰かにも、
この恐怖を味わって貰いたいじゃないか。
その居酒屋は、存在する・・・・・・・・