三多摩の鐘

The Bells of San Tama -関東のキリスト教会巡り-

台所のマリアさま

2011年08月13日 | 本を読む
カトリック渋谷教会の聖母子像
(住所:東京都渋谷区南平台町18-13)

夏休みも中盤を迎えた。私が団地っ子であった頃、早朝は近所の公園でラジオ体操、午前は学校プール、午後は友だちと遊んでばかりいた。実に「規則正しい生活」を送っていたと言えよう(笑)。そして、団地の自治会が主催した「盆踊り大会」「きもだめし」などの行事も懐かしく思い出す。高学年の夏休みになると、私は海外の児童文学を読み耽るようになった。ロルンゼン「のどか森の動物会議」、ロダーリ「チポリーノの冒険」、ジェザーチ「かじ屋横丁事件」等々。

きょう、ご紹介するゴッデン女史(注)の「台所のマリアさま」は、最近になってイエズス会の聖三木図書館で見つけた。残念ながら、本書は私の小学校の図書室には無かったらしい。読了後、直ちに古書店で旧版を入手したほど感銘を受けた。物語のあらすじを記すのは難しい。内気な少年グレゴリーは、家政婦のマルタに漂う寂しさが気になる。マルタは戦災難民のウクライナ人だ。彼女の故郷では、台所に聖母子の「着物を着せた絵」を飾る習慣があるという。

どうやらマルタの悲しみは、台所に懐かしの聖母子がいないこと、そしてウクライナへの望郷を募らせていることにあるようだ。それを誰よりも痛感したグレゴリーは、マルタを慰めるために密かな計画を実行する・・・。 「隣人を我が身の如く愛せん」の思いとともに、作者が最も伝えたかったことは、次の聖書の言葉に要約されよう。「自分を低くして、この子供のようになる人が、天の国でいちばん偉いのだ」(マタイ18・4)。本書を飾るC・バーカーの挿絵も素晴らしい。


ルーマー・ゴッデン著・猪熊葉子訳 「台所のマリアさま」
(評論社・1976年・小学上級向: Illustrated by Carol Barker)

(注):Rumer Godden(1907-1998年)は英国の作家。映画「河」「黒水仙」の原作者としても有名。児童文学の作品も多く、「人形の家」「ねずみ女房」など。「台所のマリアさま」(The Kitchen Madonna, 1967年)を発表した頃、ゴッデンはカトリックに改宗。
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4 コメント

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探してみます (バジル)
2014-09-09 13:28:37
全てのものには時があるのでしょうね。ねずみ女房は英語版日本語版両方手元にありますが、台所の神様はしりませんでした。これを機会に読んでみます。先のコメントのコメントありがとうございました。現在田舎に暮らしていますが、駒場の寮の桜を近くのイエズス会の修道院にすむ友人と見たことあります。かれこれ30年前ですが。
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「神の国を写す鏡」 (エウティコ)
2014-09-10 21:37:55
バジルさん、こんばんは。

『台所のマリアさま』に登場する家政婦のマルタは、おそらくウクライナ正教会の信者かもしれませんね。正教徒の人々にとって、イコンとは「絵画」ではなく、「地上と天国との間の窓であり、神の国を写す鏡のようなもの」だそうです。そのことを踏まえると、本書のクライマックスにおけるマルタの喜びが理解できます。

そういえば、東京大学駒場キャンパスには“古色蒼然たる”駒場寮がありましたね。現在は取り壊されてしまいましたが、私の父はそこの寮生でした。「むさ苦しい梁山泊のような雰囲気だった」と聞いています。
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駒場寮 (バジル)
2014-09-11 08:57:01
駒場寮近くの桜でお花見しました。寮はもうないのですね。そうですよね。羽根木公園近くの住まいから駒場近くのイエズス会の修道院に住む神父の友人と渋谷まで歩きながらお喋りした思い出があります。
イコンは窓、この素晴らしい言葉を今日一日かみしめて過ごしてみたいと思います。神様でなく、マリアさまでしたね。
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ドミニコ会のノレ神父様 (エウティコ)
2014-09-13 09:40:56
バジルさん、こんにちは。

私の母も東京大学駒場キャンパス付近に住んでいました。よく愛犬を連れて構内を散歩していたそうです。また、若き日の母はカトリック渋谷教会に通い、ドミニコ会のノレ・ルイ神父様から公教要理を学んでいました。母によれば、ノレ神父様は「今の教皇フランシスコ様のお顔に似ていた」そうです。

私の両親にとって、駒場界隈は青春の日々を過ごした思い出の地ですね。
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