三多摩の鐘

The Bells of San Tama -関東のキリスト教会巡り-

東方正教会の聖体礼儀

2013年05月22日 | 東方正教会
日本正教会 東京復活大聖堂教会
(住所:東京都千代田区神田駿河台4-1-3)

5月19日(日)、東京復活大聖堂(通称ニコライ堂)で携香女の主日聖体礼儀に参祷した。私にとって東方正教会の奉神礼(典礼)は初めてである。ユリウス暦に重きを置く正教会は復活大祭(パスハ)を終えたばかり。その2週間後の日曜を「携香女の主日」として祝う。携香女とはイエスの遺体に塗る香油を携えたマグダラのマリアたちのこと。なお、正教会ではイエス・キリストを「イイスス・ハリストス」、聖霊を「聖神」、聖母マリアを「生神女(しょうしんじょ)マリヤ」と呼んでいる。

午前10時、聖体礼儀(ミサに相当)の開始を告げる鐘と共に、ダニイル府主教と司祭が厳かに入堂。ア・カペラの聖歌がドーム内に響き渡る。この世のものとは思えないほど美しい。イコノスタス(注)の向こう側で司祭がパンとぶどう酒の準備をする間(奉献礼儀)、聖所では祈りが捧げられ、祭服を召す府主教の着衣式も行われた。やがて王門が開くと、啓蒙者の聖体礼儀(言葉の典礼)。連祷とアンティフォン(倡和詞という歌)を繰り返し、福音経の誦読。歌は絶えることがない。

「ヘルヴィム(ケルビム)の歌」が流れると、信者の聖体礼儀(感謝の典礼)。領聖(聖体拝領)の前に説教という位置づけが意外。首司祭の山口義人神父は、「今日、私たちは携香女に敬意を表し、彼女たちの固い信仰、ハリストスへの愛を記憶します。身近な者に幸いを与える女性の愛は、ハリストスの教えの賜物、そして教会全体の宝です」と話された。荘厳な聖体礼儀は約2時間半に及んだ。しかし、それは天の国のようであり、本当にキリストの息吹きを感じるほどであった。<続く>


大聖堂入口
“ 父と子と聖神の国は崇め讃めらる、今も何時も世々に。アミン ”

(注):イコノスタスは聖堂内正面に見える壁。その向こう側が至聖所であり、聖体機密(秘跡)が執行される。壁の中央に王門、左右に南門・北門と呼ばれる扉があり、聖体礼儀中に司祭や輔祭(助祭)が出入りする。例えば、小聖入では司祭が福音経を掲げて進み(キリストの宣教を表す)、大聖入ではパンとぶどう酒の捧物を運ぶ(キリストの葬儀を表す)。ともに門を経て「行進」する。聖変化は至聖所内となるが、その瞬間は鐘塔の打鐘(喜音)によって知ることができる。

<付記>
上述のように、聖体礼儀は奉献礼儀、啓蒙者の聖体礼儀、信者の聖体礼儀の三部から成る。この日の聖体礼儀は聖金口(せいきんこう)イオアンが編纂したもの。聖体礼儀中、司祭と聖歌隊はひたすら歌い続ける。会衆が歌う場面は少なく、「真福九端」「ニケヤ信経」「天主経(主の祈り)」など。2時間半、会衆は殆ど起立して臨む。これは「神により死の床から起こされた人間の姿勢」であり、それによって「生じる苦痛を幾度となく感ずるたびに、この意味を思い起こす」という。

◆主な参考文献・CDなど:
・「ギリシャ正教」 高橋保行著(講談社学術文庫・1980年)
・「聖体礼儀のお話し」 東京大主教教区教務部編(日本ハリストス正教会教団東京大主教教区・1990年)
・「神さまの国へ ~聖体礼儀について」(日本ハリストス正教会教団 全国宣教委員会・2009年)
・CD「正教会聖歌集」 大阪・豊橋正教会聖歌隊ほか(日本ハリストス正教会教団府主務庁:CD-001)
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