Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

関根正二展

2019年10月16日 | 美術
 関根正二展が福島県立美術館で開かれている(会期は11月10日まで)。今後、三重県立美術館(11月23日~2020年1月19日)、神奈川県立近代美術館鎌倉別館(2020年2月1日~3月22日)へ巡回する。

 関根正二(1899‐1919)は20歳と2か月で亡くなった。典型的な夭逝の画家だ。現在の福島県白河市で生まれ、1907年、家族は東京の深川に転居するが、正二だけは白河に残る(理由は不明)。翌年、正二も深川に移る。小学校卒業後、印刷会社で働いたり、信州へ放浪の旅に出たりする。その旅の途中で画家・河野通勢に出会う。1915年、通勢の影響のもとで描いた「死を思う日」が二科展に入選。翌年以降も入選を続ける。1918年には「信仰の悲しみ」、「姉弟」、「自画像」の3点が入選し、樗牛賞を受ける。同年、スペイン風邪にかかり、翌年亡くなった。

 略歴が少々長くなってしまったが、要するに、関根正二はほとんど独学で絵を習得し、10歳代後半にみずみずしく個性的な感性を開花させ、その直後に世を去った画家だ。

 今年は関根正二の生誕120年・没後100年に当たるので、大規模な回顧展として本展が企画された。かりに関根正二の代表作を3点選ぶとしたら、「信仰の悲しみ」(大原美術館所蔵)、「三星」(東京国立近代美術館所蔵)、「子供」(石橋財団アーティゾン美術館所蔵)になると思うが、それらの3点をはじめ、国内各地の美術館から主要作品を集め、また関連資料、さらには上記の河野通勢などの作品も集めている。

 心に触れる作品がいくつかあったが、その内「信仰の悲しみ」(※)について感じたことを記すと――。5人の女性が、果実を持って、画面の左方向へ歩いている。中央の赤い服の女性が目立つのはいうまでもないが、その後ろの、一人だけ正面を向いている女性が、妙に気になる。なぜその女性は正面を向いているのか。顔立ちも他の4人とは違う。

 その女性を見ているうちに、「三星」(チラシ↑)の画面右の女性を思い出した。中央の男性は正二自身、左の女性は姉とされ、右の女性は、正二が恋心を寄せたが、東郷青児に奪われた田口真咲ではないかという説がある(確定はしていないが)。その女性と「信仰の悲しみ」のその女性は、ともに正面を向き、下膨れの顔立ちをしている点が、共通するように感じられる。

 もし二人が同一人物をモデルとするなら、「信仰の悲しみ」のその女性は田口真咲である可能性が出てくる。青木繁が「海の幸」に恋人・福田たねを描き込んだことを連想するが‥。
(2019.10.14.福島県立美術館)

(※)「信仰の悲しみ」の画像

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