Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

川瀬賢太郎/東京シティ・フィル

2023年02月18日 | 音楽
 川瀬賢太郎が東京シティ・フィルの定期演奏会を振った。曲目はジェームズ・マクミラン(1959‐)の「ヴァイオリン協奏曲」(2009)とベルリオーズの「幻想交響曲」。2曲とも目の覚めるような刺激的な演奏だった。

 マクミランの「ヴァイオリン協奏曲」は2012年6月に諏訪内晶子のヴァイオリン独奏、マクミラン自身の指揮、オーケストラはN響で聴いたことがある。そのときの記憶をたどってみると、今回の演奏のほうが鮮烈だったと思う。

 今回のヴァイオリン独奏は郷古廉(ごうこ・すなお)。超絶技巧が連続するこの曲を、有無をいわせぬ説得力をもって弾いた。いうまでもなく郷古廉は、現在はN響のゲスト・アシスタントコンサートマスターを務め、本年4月からはゲスト・コンサートマスターに就任する。これほどの奏者がコンサートマスターにいるN響もすごいと思う。

 この曲は独奏ヴァイオリンもそうだが、オーケストラも難易度が高そうだ。川瀬賢太郎のスリリングな指揮もさることながら、それにピタッと合わせる東京シティ・フィルもたいしたものだ。東京シティ・フィルの基礎的なアンサンブルが向上していることを感じる。個別の奏者では第2楽章で抒情的なソロを聴かせたピッコロ奏者が印象的だ。

 この曲は仕掛けが満載だ。その最たるものは第3楽章(終楽章)の声の導入だろう。冒頭にオーケストラの団員が音楽に合わせて小声でつぶやく。「1、2、3、4、母が私と踊る」というドイツ語だそうだ(柴田克彦氏のプログラムノートによる)。その声にハッとする。また後半にはマイクを通して語りが入る。ドイツ語のように聞こえたが、なにを語ったのだろう。

 郷古廉はアンコールにイザイの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第2番から第2楽章「憂鬱」を弾いた。最後にグレゴリオ聖歌の「怒りの日」が出てくる曲だ。「怒りの日」はマクミランの「ヴァイオリン協奏曲」の第3楽章にも出てくるし、ベルリオーズの「幻想交響曲」の第5楽章にも出てくる。

 「幻想交響曲」もじつにおもしろい演奏だった。多彩な音色、意外性のあるアクセント、テンポの急激な変化などで絶えず細かいドラマが生まれる。アイディア豊富で芝居気のある演奏だ。基本的にはどっしりしたテンポ感がある(わたしはそのことに感心した)。加えて、オーケストラを不必要に煽らない。川瀬賢太郎は過去に何度か聴いたことがあるが、ずいぶん成長したものだ。1984年生まれなので、今年39歳。まだ若いが、いくつかのオーケストラでポストを得るだけのことはある。
(2023.2.17.東京オペラシティ)

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