Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

レーガー生誕150年

2023年12月24日 | 音楽
 大野和士が指揮する都響の12月定期Aシリーズのプログラムに、今年生誕150年のレーガー(1873‐1916)の珍しい曲が組まれた。「ベックリンによる4つの音詩」だ。実演を聴いてみたくて出かけた。

 ベックリンはスイス生まれの象徴主義の画家だ。レーガーはベックリンの4枚の絵画にインスピレーションを得て作曲した。第1曲は至福にみちた瞑想的な音楽。一貫してコンサートマスターのヴァイオリン独奏が続く(当夜のコンサートマスターは矢部達哉)。第2曲はスケルツォ風の音楽。第3曲はエレジー。悲しみが爆発する。第4曲はフィナーレ。バッカスの祭りだが、開放感に欠ける。

 レーガーには晦渋なイメージがある。だが、少なくともこの曲は平明だ。もっと演奏されていいと思う。実演を聴くと、音に独特の色がある。派手な色ではなく、くすんだ色だ。聴くものを沈んだ気分にさせる。その音を好む人もいるだろう。断言することは憚られるが、プフィッツナー(1869‐1949)の音に似ているかもしれない。

 プフィッツナーと同様にレーガーは保守的な作風だった。そのレーガーがシェーンベルク(1874‐1951)とわずか1歳違いだったことは意外に思う。その事実はレーガー云々よりも、シェーンベルクが時代を超越した人だったことを物語るだろう。レーガーもシェーンベルクもブラームスから出発した。だが、二人の道は大きく離れた。

 演奏会の終了後、レーガーのCDをあれこれ聴いた。楽しいひと時だった。一番惹かれた曲はクラリネット五重奏曲だ。クラリネット五重奏曲というとモーツァルトやブラームスを思い出す。レーガーの曲はブラームスに通じる。一貫して穏やかな曲想だ。わたしはザビーネ・マイヤーのCDで聴いた。息のコントロールが完璧だ。曲に感心したのか、演奏に感心したのか‥。

 もう一曲あげると、オルガン曲「30の小コラール前奏曲」が良かった。いうまでもないが、レーガーはオルガン奏者でもあった。オルガン作品が多数ある。その中で「30の小コラール前奏曲」は異色の作品だ。1曲1曲が1分前後と短い。全曲を通して聴くと40分余りかかる。それらをじっと聴いていると、ヨーロッパのどこかの教会に入り、オルガン奏者がオルガンを弾いているのをたった一人で聴く気分になる。心が澄んでくる。わたしが聴いたCDはビュトマンの演奏だ。ビュトマンはレーガーのオルガン作品全集を出している。

 今秋はペトレンコ指揮ベルリン・フィルとルイージ指揮N響がレーガーの「モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ」を演奏した。有名な主題なので演奏される機会が多いのだろうが、わたしはモーツァルトのイメージから離れるのが難しい。苦手な曲だ。
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