Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

カポディモンテ美術館展

2010年07月24日 | 美術
 連日の猛暑。場所によっては38.9度を記録したところもあるそうだ。お気の毒というしかない。我が家にはクーラーがないので、網戸で暮らしている。もし我が家だったらと思うとゾッとする。

 昨日は金曜日。国立西洋美術館で開催中の「カポディモンテ美術館展」の夜間開館日なので、仕事の帰りに寄ってきた。上野駅を降りると東京文化会館の前には「チケット求む」の紙をもった人が3~4人いた。なんだろうと思ったら、トリノ王立歌劇場の「椿姫」だった。全席完売なのだろうか。

 カポディモンテ美術館はイタリアのナポリにある美術館だそうだ。今回の出展作はルネサンスからマニエリスムを経てバロックまでのイタリア美術の数々。

 会場に入ると、まずマンテーニャの「ルドヴィコ(?)・ゴンザーガの肖像」が出迎えてくれる。小品ながら、初期ルネサンス特有の優雅さがある。真横を向いている肖像画。こういう肖像画は当時よくあったらしい。そういえばピエロ・デラ・フランチェスカの「フェデリコ・ダ・モンテフェルトロの肖像」もそうだった。

 しばらく歩くとパルミジャニーノの「貴婦人の肖像(アンテア)」が待っている。高貴な婦人とも高級娼婦ともいわれているそうだ。大半のブロガーは高級娼婦説。私もそういう目で見ていたせいか、清純な顔立ちの大きな目の奥には、深い闇――背徳のにおい――が漂っているようだった。奇妙にいびつな構図が私たちを不安にさせるからか。

 次の部屋のグイド・レーニの「アタランテとヒッポメネス」は、今回の白眉だった。奔放に躍動する線、線、線。神話に題材をとった絵だが、躍動する何本もの線は抽象的に見えた。2007年のパルマ展で出会ったスケドーニの「キリストの墓の前のマリアたち」は大胆な色彩の面で、本作の場合は奔放な線の面で、時代の壁を突き抜けている。

 素描コーナーを過ぎた部屋では、《羊飼いへのお告げ》の画家による「放蕩息子の帰宅」に注目した。名前が特定されていない画家だが、どういう画家なのだろう。自然主義的な描写と高い精神性が、ジョルジュ・ド・ラ・トゥールの貧しい人々を描いた絵を連想させた。そういえばこの画家とラ・トゥールとは同時代人だ。

 同じ部屋にあったアルテミジア・ジェンティレスキの「ユディットとホロフェルネス」はもう一つの白眉だった。シーツにしたたる血の筋が生々しい。首に刺した短刀が下に突き出している。冷静に復讐を遂げるユディットの表情が、冷静であるがゆえに、深い憎悪を感じさせた。

 常設展を見る時間はなかった。外に出ると、冷えきった身体に外気が気持ちよかった。だがそれもつかの間、すぐに汗が噴き出した。クーラーのない我が家に帰って、冷たいビールに一目散。
(2010.7.23.国立西洋美術館)

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