Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

有元利夫展――天空の音楽

2010年07月28日 | 美術
 先週土曜日の昼下がりに東京都庭園美術館で開催中の「有元利夫展――天空の音楽」に行ってみた。東京都の広報誌で知って、その透明な色彩にひかれたから。念のためにブログを検索したら、私の愛読しているブログをはじめ、多くのかたが書いておられた。

 会場に入ると、チラシ↑にも使われている「厳格なカノン」が出迎えてくれた。予想どおりの透明感だ。空の色がシュールレアリスムのマグリットを連想させる。そういう目でみると、この絵はシュールレアリスムのようでもある。ただちがうのは、シュールレアリスムの場合はその意味を問いたくなるが、この絵の場合はそういう気が起きないことだ。ゆったりとくつろいだ気分にさせてくれる絵。

 この絵と向き合って「花降る日」が展示されていた(図像は同展のHP↓で)。
 http://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/arimoto/index.html
 近寄ってみて驚いたが、絵具がわざと剥落され、地のキャンバスがのぞいている。意図された風化。それがあざとい感じではなく、画家のこだわりと愛着のように感じられる。この絵も不思議な絵ではあるが、やはりその意味を問う気にはならず、なにか祝祭的な気分にさせてくれた。

 以下この調子で個々の作品を取り上げていっても煩瑣になるだけだから、控えることにしたい。私は60点あまりの絵(タブロー)と20点あまりの版画、その他の展示物をどれも楽しんだ。そこにはなにか共通する因子が感じられた。それを考えながら、翌日曜日からずっと「有元利夫 女神たち」(美術出版社)と「有元利夫 絵を描く楽しさ」(新潮社)をみて楽しんでいる。

 私が考えた共通の因子をここで開陳しても、はたしてどれほどの意味があるのかよくわからない。上記のHPに載っている図像をご覧いただき、なにかを感じていただければ、それに如くはないという気がする。もしできることなら、会場に足を運んで、実際にご覧になれば、たぶん楽しい時間をすごせるはずだ。

 参考までに有元利夫の生涯を紹介しておきたい。1946年(昭和21年)生まれ。生地は両親の疎開先の岡山だが、東京の谷中(やなか)で育った。高校卒業後4浪。1969年(昭和44年)東京芸術大学美術学部デザイン科に入学。この年代が示すように、激動の68年世代だ。当時は前衛的なコンセプチュアル・アートにのめりこんだそうだが、大学2年のときのヨーロッパ旅行でイタリアのフレスコ画に共感。それが後年の「厳格なカノン」↑や「花降る日」↑にいたる道の出発点となる。1985年(昭和60年)に癌により逝去。享年38歳。今回の展覧会は没後25年記念だ。
(2010.7.24.東京都庭園美術館)

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2 コメント

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お久しぶり (のぶりん)
2010-07-29 09:28:36
ずっと書き続けているのが素晴らしい!
私も見に行きたいと思っている展覧会をこまめに鑑賞しているのが羨ましい!
私にとってはかなり専門的に感じる感想が、感心・感動!
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お久しぶりです (Eno)
2010-07-29 19:28:50
のぶりん様
お久しぶりのコメント、ありがとうございます。仕事が変わって、そのショックで始めたブログ。今では老化防止が目的になってきました(笑い)。これからもたびたびコメント、お願いします!

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