後期ゴシック彫刻・市民運動・演劇教育

小学校大学教師体験から演劇教育の実践と理論、憲法九条を活かす市民運動の現在、後期ゴシック彫刻の魅力について語る。

〔681〕今、私の最大の美術的関心事は「石川雲蝶の彫刻と絵画作品巡り」です。

2024年04月16日 | 美術鑑賞

 ドイツ語圏を中心とした後期ゴシック彫刻を、十数回妻と巡ってきたことは、このブログでもたびたび書き連ねてきました。来年の夏には家族や友人も連れだって、新たな旅立ちを考えているところです。今年はパリ・オリンピックもあることだし、ドイツ旅行は自重しようと考えているのです。
  そこで、今年は久しぶりに国内の旅行を準備しています。なんでも鑑定団の中島誠之助さんが「越後のミケランジェロ」と讃えた石川雲蝶の彫刻絵画巡りの旅です。絵画と彫刻の二刀流といえばミケランジェロもしかりですが、中世ドイツではハンス・ムルチャーかミヒャエル・パッハーでしょうか。私にいわせれば雲蝶は「日本のパッハー」ということになりそうです。

 早速参考になる資料をあさり始めました。ネットで文献調査したところ、それほど多くの雲蝶関連図書は見つかりませんでした。『越後の名匠 石川雲蝶』と『私の恋した雲蝶さま』が気になる本として現れてきました。色々検討してこの2冊をアマゾンで購入しました。

■『越後の名匠 石川雲蝶』木原尚、新潟日報事業社、増補改訂版、2019年

■『私の恋した雲蝶さま』中島すい子、現代書館、2014年

 この2冊を読み進めるとおもしろいことがわかってきました。
  雲蝶は江戸雑司ヶ谷鬼子母神(現在の東京豊島区)に1814年生まれ、1883年に70歳で越後の三条(現在の新潟県三条市)で亡くなっているのです。雑司ヶ谷鬼子母神は実家からも近く、親戚が住んでいたところです。池袋からもすぐのところです(鬼子母神の鬼は、正しくは漢字の角がないのですが)。
  雲蝶は江戸で彫刻の修行をしたようですが、作品はほぼ残されてないようです。当時、天保の改革で綱紀粛正、華美が取り締まられため、江戸での活躍の場がなく、越後の人(本成寺の檀徒総代)に求められて、越後に赴いたようです。越後には膨大な作品群が残されています。

 雲蝶の代表作は、どうやら西福寺の天井彫刻「道元禅師猛虎調伏之図」といわれているようですが、私はむしろ永林寺の欄干の三天女を勧めたいと思います。『私の恋した雲蝶さま』の表紙の写真が素敵ですが、まさにこれが天女像です。
  雲蝶巡りをするなら西福寺と永林寺(魚沼市)、そして本成寺(三条市)は外せません。本成寺は雲蝶が最初に手がけたお寺で、お墓もここにあります。
 その他にも見どころは山積していますが、『越後の名匠 石川雲蝶』が最高のガイドブックになることは間違いないでしょう。これを手引きに、旅程を決めたいと思いますが、30以上の社寺を全部巡ることは不可能なので、二,三泊で回れる限りというのが現実的なところでしょうか。夏場の楽しみが増えました。

   ところで、私の大好きな世界的浮世絵師、葛飾北斎は後年、江戸から長野の小布施に呼ばれ、竜の天井画など多くの作品をここに残していますが、雲蝶も似たような経歴を辿ったのが興味深いところです。


〔674〕蒔絵を学ぶ仲間たちの習作と個性豊かな作品展「漆LABO Vol.1」(あきる野市・龍珠院)開催です!

2024年03月30日 | 美術鑑賞

 

  春ですね。こんなお知らせが届きました。

■蒔絵を学ぶ仲間たちの習作と個性豊かな作品展「漆LABO Vol.1」のお知らせ

古より日本に根付く漆の文化 
そんな漆に魅せられて
蒔絵を学ぶ仲間たちが
春の花に誘われて 龍朱院へやってまいりました

私たちの習作を 少し覗いていきませんか?

日常の彩りとなるような成果物も少々ご用意しております

どうぞお気軽にお立ちよりください


●「漆LABO Vol.1」
蒔絵を学ぶ仲間たちの習作と個性豊かな作品展

会期:2024年4月6日(土)~8日(月) 10:00~16:00
開場:龍珠院 本堂横の書院にて
東京都あきる野市乙津1422

アクセス: 武蔵五日市駅からバス
養沢方面行「乙津花の里」バス停下車徒歩13分
檜原村方面行「荷田子」 バス停下車徒歩約10分

☆臨時駐車場あり

各種イベント同時開催
・4月7日(日)トワイライトヨガ
・4月8日(日)花まつり

龍珠院は桃源郷ともいうべき、桜の名所としても有名な人気のスポットです。
4月8日はお釈迦様の誕生日を祝う花まつりが開催される最高の季節です。
どうぞこの機会にお誘い合わせの上ご来院ください。
メンバー一同楽しみにお待ちしております。

#龍珠院
#漆工房皎月 
#蒔絵


〔668〕押絵って知っていますか?  「伯峰流 押絵二人展」(有楽町)に行ってきました。

2024年03月21日 | 美術鑑賞

 昨秋のことでした。仲良しドイツ人夫婦2組が我が家に一週間ほど滞在しました。その間に色々楽しんでもらおうという企画の1つに書道体験がありました。友人の紹介で先生にお願いしたのが柏原嘉子さんでした。ドイツ名を漢字に当てはめ、それを4人に筆で書いてもらったのです。真剣に取り組んだドイツの人たちには大好評でした。
 その柏原さんから今年になって 「伯峰流 押絵二人展」の案内をいただきました。

 

 ところで、押絵って知っていますか? 
 「押し絵」を辞書で引いてみました。
*「押(し)絵」花鳥・人物などの形を厚紙で作って色色な布で包み、中に綿を入れて高低をつけ、物にはりつけたもの。」「押(し)絵羽子板」『岩波国語辞典』第五版

 ドイツ4人組が到着してすぐに、我が家の中2階に案内しました。そこにたくさんの押絵を並べおきました。遠藤春翠さんの遺作でした。廃棄するには忍びないということでいただいたものでした。彼らに好みの押し絵をプレゼントしました。

 今回の「伯峰流 押絵二人展」は柏原嘉子さん(作者名、柏原春光)と遠藤春翠さんの二人展だったのです。お二人の先生の佐伯春峰さんの作品も2点鑑賞できました。
 会場は有楽町のシルバーサロンです。
  アットホームな会場で、ゆったりと丁寧に柏原さんから解説をいただきました。1つの作品作りに数ヶ月かけるということです。ただただ感心するだけでした。

 


〔662〕動画「ウクライナの芸術家たちは今…」が送られてきました。拡散を希望しています。

2024年03月03日 | 美術鑑賞

 連れ合いの友人の野村和子さんから以下のメールが送られてきました。
 動画「ウクライナの芸術家たちは今…」

The Now of Ukrainian Artists 7人の芸術家 57作品 7artists 57works+国際墨友会展覧会「美は国境を越えて」

が素敵です。ウクライナに心を寄せながら拝見しました。 

 ●この冬も乗り切ることができ、
 はや3月になりましたね。
 私の友人・大阪の片山ふえさん(ロシア語通訳者)が、ウクライナの画家さんと長いお付き合いをなさっておられて、このたび下記のメッセージと動画をお送りくださいました。どうぞご覧くださり、ご自由に拡散してくだされば幸いです。
 よろしくお願いいたします。まずはお知らせまで。野村和子
 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
       記
 キーウの画家オリガ・ペトローワさんの依頼で、戦時下で創作を続ける画家たちの頑張りを観ていただくビデオを作りました。
 お時間が許せば、ご覧いただけないでしょうか(13分くらいです)。
https://youtu.be/jtLJdGYgLg4
 
 そして、もし彼らに声援を送ろうと思ってくださったら、「いいね」をクリックしてください。
 ウクライナでも、このyou tubeを見ることができるのです。よろしくお願いいたします。片山ふえ


〔661〕届いたばかりの「夢のイストワール展」と「松元ヒロ・ソロライブ」のお知らせです。

2024年02月26日 | 美術鑑賞

 画家の髙橋素子さんから「夢のイストワール展」の案内が本日届きました。JR大崎駅から徒歩2分のところにあるO美術館で開催される絵画展です。確か2年前に初めてこちらにお邪魔しました。多くの作家さんの意欲的な絵が所狭しと展示されていました。その時の様子をブログに書いたことがあります。
 今回も髙橋素子さんは出展されています。我が家には彼女の作品が額にかかっています。一度我が家にいらしてお話もうかがいました。連れ合いの友人です。彼女の今回の作品が何処にあるかみつけてください。出品されている作家さんはこのプログラムに掲載されているだけではありません。約2倍はいらっしゃるでしょうか。お一人の作品はそれぞれ数点になります。見応えありますよ。
 お近くの方はどうぞお出かけください。入場無料です。

 やはり本日届いたばかりの「松元ヒロ・ソロライブ」のお知らせです。彼の清瀬のけやきホールでの公演を以前に観たことがあります。今回は東久留米の生涯学習センターです。
 現在の政治を鋭く切ります。共感するところ多々です。


〔650〕東京国立博物館・国立西洋美術館・国立科学博物館のシニア割引活用していますか?

2024年01月15日 | 美術鑑賞
 昨年秋、国立西洋美術館の常設展のシニア割引(65歳以上)を大いに活用しました。私たち数人の日本人グループだけではなく、丁度来日していたドイツの4人の友人も無料で入館できたので、とても有り難い制度だと思いました。おそらく日本では最も多く所蔵されている西洋絵画の常設だけではなく、チラシにある「もうひとつの19世紀 ブーグロー、ミレイとアカデミーの画家たち」も観覧することができました。





 先日、「定年時代」という小さな新聞を読んでいたら、東京国立博物館でもシニア料金で利用できるとありました。1月2日から開かれている「博物館に初もうで」のことです。ただしこちらは70歳以上ですが。
 久しぶりで池袋のジュンク堂に行く用事ができたので、ならば上野にも足を伸ばそうと思い立ちました。今回は東京国立博物館だけにして、余力を残して池袋のジュンク堂とブックオフ巡りをしました。

*新しく改装された上野駅から東京スカイツリーを臨む

*上野公園の野口英雄像

*東京国立博物館の本館

*東京国立博物館正門の正月飾り

*長谷川等伯の「松林図屏風」(国宝)

*中央階段の踊り場の正月飾り


 ちなみに、今クラウドファンディングなどで何かと話題の国立自然博物館は国立西洋美術館の隣にありますが、立て看板を覗いたら、やはり常設展に関しては65歳以上は無料ということでした。年をとったら少しはいいことがなければ生きていけませんよね。
 ところで、大英博物館などロンドンの公立美術館・博物館はほぼ無料です。ワシントンの公立美術館・博物館もそうでしたね。フランスのディジョンも同様でした。

*こちらは国立西洋美術館

〔646〕木村まきさんを偲ぶ「治安維持法の時代を考える」(横浜事件・生活図画事件・植民地弾圧)展は大盛況でした。

2023年12月21日 | 美術鑑賞
 12月19日(火)、ブログ〔643〕でお知らせした木村まきさんを偲ぶ「治安維持法の時代を考える」(横浜事件・生活図画事件・植民地弾圧)展に、清瀬の仲間数人と行ってきました。展覧会の初日です。









 会場は多くの人で賑わっていました。まきさん追悼の、素敵で清らかな花が飾られた近くに、木村亨さんとまきさんの写真がコンパクトにまとめられていました。その下には亨さんの貴重な日記が展示されています。実はこの日記は私の連れ合いがまきさん宅で発見したものでした。
 展示物としてはまきさんの訃報を知らせる新聞記事、亨さんの拷問の再現写真など、手間暇かけしっかり準備されたんだなあと感心しました。




 18時半からのトークイベントには60人以上の参加者があったようです。立錐の余地がありませんでした。
 永田浩三さん(実行委員長、武蔵大学)の密度濃いポイントを押さえたお話と、スクリーンに映された的確な映像に感嘆させられました。
 さらに、永田さんが指導された武蔵大学の学生製作のドキュメント「国は嘘をつく」が上映されました。共謀罪に反対するまきさんを記録したものです。
 最後に国賠ネットワークの磯部忠さんの話と続きました。
 そして、永田さんの司会で、参加者によるまきさん追悼のことばが語られました。
 約2時間があっという間に過ぎてしまいました。
 
 イベント参加者にまきさんが残された書籍が希望者に配布されました。
 私はまきさんからいただいた詩集『空にまんまるの月』、まきさんがまとめた労作3冊『横浜事件 木村亨全発言』『横浜事件と再審裁判』『資料集成 横浜事件と再審裁判』、亨さんの『横浜事件の真相』、木村亨追悼文集などはすでに手にしていました。
 それではと永田さんが差し出されたのが茨木のり子『歳月』でした。私が欲しくてネットで探していた本でした。何というタイミングでしょう。有り難くいただきました。他にも2冊いただきました。
 あと茨木のり子の詩集で狙っているのは『茨木のり子全詩集』だけです。







 ギャラリー古籐の大崎さんの許可を得て写真を掲載させていただきました。

〔634〕村田栄一さんの『石も夢みるスペインロマネスク』(社会評論社)のDVD判が見つかりました。

2023年11月27日 | 美術鑑賞
 蔵書の整理をしていたら様々なCDやDVDが出てきました。その中に村田栄一さんの『石も夢みるスペインロマネスク』(社会評論社)のDVDがありました。この本が出版されたのは2007年ですが、このDVDは出版記念会が開かれたときに参加者に配られたものです。この本や出版記念会の詳細についてはブログ〔586〕に触れていますので興味がありましたらご覧になってください。



 久しぶりにこのDVDを見て、村田さんの業績の凄さを実感しました。スペインロマネスクを巡るために40過ぎて自動車免許を取得したそうです。遠藤豊吉さんも同乗しながらスペインだけでなく、ピレネー山脈をこえてフランス、アンゴラまで足を伸ばしています。誰にも真似できないスペインロマネスク踏破の記録でした。



 このDVDは252枚の写真で構成されています。村田さんが20年間撮りためたものでした。村治佳織さんのギター「スペイン」が流れる3,40分のDVDでした。

〔630〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く⑲〈最終回〉 初めてのバーデン・バーデンは期待で胸いっぱいでした。

2023年10月28日 | 美術鑑賞
 いよいよ2023年夏、「ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く」は終焉を迎えました。バーデン・バーデン2泊、ルースとトーマスが待ってくれているフランクフルト(カルベン)は2泊です。
 初めてのバーデン・バーデン訪問の目的は、ゲルハールトの磔刑像を拝観することです。バクサンドールのカタログにも掲載されています。道順として少し行きにくいところなので、今回は無理かなと弱気になったのですが、緑がしっかり予定に入れてくれました。

 9月13日(水)、バーデン・バーデンの駅から市の中心部まで数㎞なので、バスに乗ることにしました。まず目差したのはクロスター教会。バーデン・バーデンに美しい聖母子像があるよ、と教えてくれたのはヴェニガーさんでした。ならば行くしかありません。
 この教会はAbtei Lichtenthal Baden-Baden の中にありました。軽食ができるところで、多くの家族連れで賑わっていました。その一角にクロスター教会がありました。厳粛な雰囲気の堂内に気品高く聖母子像が鎮座していました。磔刑像も素晴らしいので来てよかったです。





 9月14日(木)、いよいよゲルハールトの磔刑像探しです。丘の上のシュティフト教会が目差す場所です。苦労して探し当てたのですが、残念ながら施錠されていました。通りがかりの女性が親身になっていつ開場するのか、電話して調べてくれました。午後2時に入場できそうだということで食事をしながら待機です。
 せっかくバーデン・バーデンに来たので、先に、州立美術館とブルダ美術館も覗いて見ました。





 満を持してシュティフト教会へ。やはりゲルハールトは素晴らしい! キリストの身体的なバランスも良いし、ステンドグラスを通した七色の光がキリストにあたって、実に美しかったです。


 
 バーデン・バーデンは「ローマ時代からの由緒ある温泉町」だというのですが、ついに温泉につかることもありませんでした。

 9月15日(金)、フランクフルトに移動です。カルベンではルースとトーマスがいつものように最高の「ホテル」を用意してくれていました。8月中旬にトーマスは私たちの子どもと孫に会いに来てくれましたが、その後、散歩中に転んで杖をつく生活になっていました。そのため予定していたマリア・ラーハには行けなくなってしまいましたが、他日を期したいと思います。その時はエルツ城・マルクスブルク城・エーベルバッハ修道院にも足を伸ばしたいと考えています。

 次の旅は、新しく発見されたリーメンシュナイダーのキリスト像がニュルンベルクのゲルマン国立博物館で公開される2025年かな、ともう2人で話しています。都合が合えば友人2人も同行されるかも知れません。それまでに、シルヴィアから届くであろう2冊(ミヒェル・エーアハルトとハンス・ムルチャー)の大部なカタログをしっかり読み込まなければ、と思っています。まだまだ、私たちのドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクの旅は続きそうです。

〔629〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く⑱  猛暑のランツフート、それでも教会・博物館・城と歩き回りました。

2023年10月28日 | 美術鑑賞

*3泊したイビスホテル、駅から徒歩数分。ハートマーク内の表示が気に入りました。

 9月11日(月)、12日(火)の2日間、ランツフート(ミュンヘンから北東に約100㎞)の市内をくまなく歩き回りました。ドイツでもこの時期こんなに暑くなるんだと思いながら、普段かぶらないチャラい帽子を離せませんでした。注意深く日陰を選びながら歩きました。



 最初に向かったのはなんといっても聖マルティン教会、ラインベルガーの巨大で逞しい聖母子像にご挨拶です。と思ったのですが、ミサの最中で入場はできません。翌日入場が叶いこの時にじっくり拝観しました。ラインベルガー関連の作品だけでもここに3、4点あります。彫刻の顔が壊されていたりして状態はあまり良くないのですが、見る価値は充分にあります。キリスト像はラインベルガー系の人でしょう。そうそう、大事な彫刻を発見しました。ミヒェル・エーアハルトの巨大な磔刑像です。大きくても手抜きなしの仕事です。



 彫刻作品が陳列されているランツフート美術館は閉館中でした。がっかりして、イーザル川の河畔に佇んだのでした。川縁の木陰のベンチは何処も満席。人がベンチから立つとすかさず場所取りもしました。







 12日(火)早朝、気を取り直して向かった先は小高い丘の上にあるトラウスニッツ城でした。あまり期待はしていなかったのですが、どうしてどうして、大当たりでした。我々含めて4人だけの見学ツアーに参加しました。案内の女性が1部屋ずつ鍵を開閉して厳重管理していました。調度品、絵画などの美術品の他、実に質の高い彫刻が並んだ礼拝堂があったのです。京都の東寺の立体曼荼羅を想起させるようなお堂でした。
 ニコライ教会のラインベルガーのキリスト像にも「挨拶」してきました。前回は雨の中の訪問だったことを思い出していました。前回同様、我々の他にはどなたもいらっしゃいませんでした。

 翌日は5時間かけてバーデン・バーデンに向かいました。

〔627〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く⑯ マリア・ガイル祭壇を追いかけてついにフィラッハまで来てしまいました。

2023年10月26日 | 美術鑑賞
 9月8日(金)、インスブルックからは4時間22分、オーストリアの南端、フィラッハまで来てしまいました。イタリアやスロヴェニアに近い交通の要衝です。
 モワサックの写真集と同様に、植田重雄さんが遺されたドイツ語文献・後期ゴシック彫刻の本の表紙はフィラッハのマリア・ガイル祭壇で飾られていました。綺麗で整ったマリアの戴冠祭壇でした。遠いということもあって、あまり無理しなくても良いかなと思っていたのですが、緑がさっさと予定に入れてしまいました。
 フィラッハには2泊の予定です。1日目は市の中央に繰り出して、フィラッハ博物館や道行きの教会を訪ねました。





 フィラッハ博物館は小さな市立博物館でした。展示物もそれほど多くはないのですが、なぜかマリア・ガイル祭壇のプレデラが展示されていました。どんな事情があったのでしょうか。
 9月9日(土)、バスでマリア・ガイルを訪ねました。バス停と発車時間の確認に手間取りました。初めての土地なので、いつものことですがね。
 バス停からさらに十数分のところにマリア・ガイルの教会がありました。





 素晴らしい祭壇でした。手入れの行き届いた綺麗な教会で、写真で見るより遙かに美しい祭壇がそこにありました。まあ、それにしても植田さんに導かれてオーストリアの果てまで来てしまったなあと、思うのでした。


*ホテルの前に大きなバイクが何台も止まっていました。フィラッハはバイク愛好家の街でした。

 明日はドイツのランツフートです。

〔626〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く⑮  シュテアツィング(伊)は昨年のリベンジ、おそらくハンス・ムルチャー全踏破。

2023年10月26日 | 美術鑑賞
 ようやくその時が来ました。シュテアツィングでハンス・ムルチャー祭壇を拝観できれば一応ムルチャー全踏破と言えるでしょう。ただし、ムルチャー作品の佳いカタログは手元にありません。しかしカタログは目星がついています。ヴェニガーさんに実物を見せてもらって、シルヴィアの協力で入手のめどがついているからです。日本に届くのを首を長くして待っているところです。ミヒェル・エーアハルトのカタログもしかりです。2冊のカタログを見て、おそらく2025年になるであろう渡独の内容が変わってきそうです。想像するだけでわくわく心楽しくなってきます。

 シュテアツィングはイタリアといってもインスブルックからは電車で1時間ほどです。オーストリアの国境を越えてすぐのところに位置しています。ここはイタリアのチロル地方になります。ムルチャーが活躍した地域です。



 駅で聖母教会の道順を訪ねてゆったりと歩き出しました。2,30分ほどでしょうか、それらしき教会が見えてきました。聖母教会は清掃係の女性が1人だけでした。主祭壇は目差すムルチャー祭壇に間違いありません。内陣近くまで行けないのが残念ですが、遠目から写真を撮りました。色彩も鮮やかでやはり素敵な彫刻です。祭壇はすべてムルチャーの手になるとヴェニガーさんは教えてくれました。





 ムルチャー博物館は教会の隣にありました。ムルチャー作品は2階の1部屋でした。彫刻が塔なども含めて数点、絵が10点ほどあったでしょうか。我々の他は受付の人だけでした。2年分、穴の空くほど作品を眺めました。



 インスブルックに戻って、チロル郷土博物館フェルディナンデウムを再訪しましたが、昨年と同様にやはりクローズでした。ここにも気になる後期ゴシックの作品があるのですが残念です。ならば初のドームと宮廷教会再訪を目差しました。宮廷教会の28体のブロンズ像はいつ見ても凄まじい迫力で屹立していました。


〔625〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く⑭  明日のシュテアツィング(伊)の「前座」はアンブラス城。

2023年10月26日 | 美術鑑賞
 9月6日(水)、バーゼル(スイス)からインスブルック(オーストリア)まで約4時間半かかりました。昨年に引き続きインスブルックに舞い戻ってきたのには訳があります。昨年の50日弱のヨーロッパ旅行で体調を崩したのはただの1回、1日だけでした。不思議なことに連れ合いもこの時熱を出してダウンしたのです。昨年は今年より遙かにコロナ危機の渦中にありました。信じてもらえないかも知れませんが、旅行プランが崩壊したのがこの日だけでした。
 このインスブルックの1日に予定していたことは、日帰りでシュテアツィング(伊)に行くことでした。ここの聖母教会にハンス・ムルチャーの代表作ハンス・ムルチャー祭壇があり、お隣にはハンス・ムルチャー博物館があるのです。ハンス・ムルチャー祭壇はバクサンドールのカタログに登場している気になる美しい彫刻です。どうしても行ってみたいところだったのです。まさに再挑戦、リベンジの訪問です。





 移動日の9月6日(水)、まずは初訪問のアンブラス城巡りです。ここにはラインベルガーの「死に神」?、骸骨が優雅に肢体をくねらせている彫刻があるらしいのです。ネットでラインベルガーを検索するとこの像が頻繁に出てきます。
 実際に訪ねてみると、順路の最後の最後に「登場」しました。豪華絢爛にライトアップされ、厳重に管理されていました。もちろん撮影禁止。大きさは30センチほどでしょうか。さすがラインベルガーらしく、骸骨の肢体が優雅に踊っているようです。
 収穫といえばダニエル・マオホの工房作品が鑑賞できたことでした。

 9月7日(木)、ついにシュテアツィング行きが実現しました。

〔624〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く⑬  バーゼル歴史博物館でリーメンシュナイダー作品を発見、あのヴィジッツの「アダムとエヴァ」も。

2023年10月25日 | 美術鑑賞
 9月4日(月)はトゥールーズからスイスのバーゼルに9時間かけての移動日でした。バーゼルで2泊します。バーゼル滞在は2回目になるのでしょうか。
 9月5日(火)は大聖堂、バーゼル美術館、バーゼル歴史博物館を一気見です。
 まずはライン川を見下ろす大聖堂に着きました。後期ゴシック彫刻だけでなくロマネスクにも関心が向いてきているので、内部の柱頭彫刻や外部のタンパンや彫刻も興味深く見られるようになってきました。





 ゆったりと大聖堂を巡った後は、バーゼル美術館に直行です。入場券売り場の柱がロマネスク柱頭彫刻を思わせて素敵です。



 バーゼル美術館はまさに見どころ満載です。今回びっくりしたのは、ハンス・バンドゥンク・グリーンの作品が多数鑑賞できたことです。グリーンはデューラーの一番弟子で、独特の作風で知られています。こうしたクセのある作家を私は好みます。同じく私好みのグリューネヴァルト磔刑像がここにあり「挨拶」しました。アンリ・ルソーなど他にもたくさんの作品を撮影し、家のパソコンで楽しんでいます。



 一番建物を見つけにくかったのがバーゼル歴史博物館でしたが、一番興奮したのもバーゼル歴史博物館でした。私たちが追跡している後期ゴシック彫刻作品が多数展示されていたのです。周りには人はほとんどいませんでしたが。



 そしてなんと、いままで緑もマークしていなかったリーメンシュナイダーの作品があったのです。聖人像のレリーフの秀作でした。表示によるとリーメンシュナイダー本人の作品です。他にもミヒェル・エーアハルト、ハンス・ヴィジッツ、ショーンガウアーの作品もあるではないですか。
ヴィジッツの「アダムとエヴァ」はバクサンドールの本のカタログに紹介されていたものです。10㎝足らずの秀作です。これを発見して興奮はマックスです。
 大好きなドイツビールで乾杯! でした。

〔622〕2023夏・ドイツ後期ゴシックとフランスロマネスクを歩く⑫ フランスロマネスクの最高峰の1つ、トゥールーズのサン・セルナン・バジリカ聖堂。

2023年10月24日 | 美術鑑賞
  9月3日(日)、前日の疲れも何のその、この日はフランスロマネスクの最高峰の1つ、サン・セルナン・バジリカ聖堂へ向かいます。ロマネスクと言えばまずはフランス、フランスロマネスクと言えばまずはサン・セルナン・バジリカ聖堂と私の頭にすり込まれています。フランスに行くならばどうしても訪れてみたいところでした。
 徒歩で比較的簡単にサン・セルナン・バジリカ聖堂に到着しました。







 現存するロマネスク教会としてはフランスで最も大きいそうです。円柱をうまく組み合わせた建築様式は見るものに優しさを感じさせます。後陣からミエジェヴィル門に回り「キリストの昇天」を描いたタンパン彫刻を丁寧に撮影しました。
 しかし、残念ながら撮影はここまで。ミサなのでしょう、観光客は内陣には入れません。モワサックと同様、ついていません。

 その後、ジャコバン修道院に回りました。1本の柱から椰子の木のように22本の格縁が放射状に伸びている天井が有名だそうです。サン・セルナン・バジリカ聖堂のカリヨンを緑が聞きに行っているあいだ、しばし堂内で佇んでいました。





 オーギュスタン美術館は1部が開館されていました。荷物を持ち込めないということで、交代で入館しました。
 日差しの強い中、ガロンヌ川ではボートレース、陸上では自転車レースが賑やかに行われていました。帰国してから、トゥールーズでラグビーのワールドカップが行われました。
 そういえばサッカーのワールドカップもここで開催されました。日本もここで闘いましたよね。
 ここで2年間、愛さんは鬱々とした学生生活を送ったそうです。駅の近くに下宿していたそうです。

 翌日は9時間かけてスイスのバーゼルに移動です。


*こうした無数の金銀テープで頭上が飾られて賑やかでした。